世界が滅んだ瞬間Ⅱ
午前中の授業が終わり、昼休み。
アレスとリヴィエ、そして普段一緒に食べることは無いアイリスと校庭の近くにあるベンチで昼食を食べていた。
「なぁリヴィエ、そろそろ機嫌戻してくれよ」
今日は朝からこの調子である。
だが、アレスにはまったく機嫌の悪い理由はわからず、今もこうしててこずっている訳だ。
「アレスが悪いの!・・・アレスのバカ・・」
アレスには最後の方が聞き取りずらく、よく聞こえなかったが、結局機嫌が悪い理由はわからなかった。
「・・・アレス」
左で小さめの弁当を太ももにのせた、蒼髪の少女アイリスがアレスの方を向き質問した。
「二人はその・・・付き合っているのか?」
アイリスの問いにリヴィエの顔は真っ赤になり、アレスはコテン、と首を傾げた。
「何で、俺らが付き合ってると思ったんだ?」
「いや、だって登校するときも一緒、昼ごはんも一緒、帰るときも一緒、こんなに一緒にいるとなると、付き合ってるとしか思えない・・」
男同士または女同士だと、ここまで一緒にいても仲いいんだなーぐらいで見れるがアレスとリヴィエは正真正銘異性だ。
アイリスが恋人同士なのか疑うのもわかる。
「俺らはそんな仲じゃねーよ、俺が友達そんなにいないからリヴィエと一緒にいるだけだ」
「そ、そうなのか・・・良かった・・」
さっきまで赤面していたリヴィエの表情が少し、頬を膨らませたむっとした表情になった。
そう、リヴィエはここで完全に確信した。
アイリスはアレスのことが好きだと。
今までは確信ではなく疑惑だった、それが今アイリスの言った、良かった、という言葉を聞いて確信した。
(またライバル増えたな・・・)
はぁ、とため息をこぼし空を見上げた。
「ところでアレス」
「ん?」
アイリスの方を向くと何やらモジモジし始め、箸で卵焼きをつまみ、アレスの口の前まで持っていった。
「そ、その、アレスに食べてほしいのだ・・・」
「え?食って良いのか?」
アレスが言うと、コクりと首を下げアレスはアイリスの卵焼きを食べた。
「ど、どうだ?」
「え、めっちゃうまいじゃん、何これ」
今まで食った卵焼きの中でもかなり上位に入るほどのうまさだった。
「そ、そうか?それは良かった」
ほっとした表情でふふっと小さく笑った。
たが、アレスの横にいるリヴィエはさっきより不機嫌だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
放課後、いつも通りの帰路についたアレスとリヴィエは買い物を済ませ、家に帰っていた。
ネイレスはやることがあるらしいので、今日は二人で帰っている。
「ねぇ、アレス」
「ん?なんだ?」
リヴィエの方を見ると夕焼けのせいか顔が赤くなっていた。
「私ね、ずっとアレスのこと・・・」
刹那、リヴィエの声量がかき消える程の爆音が轟いた。
爆音と共に揺れる大地、そして何かが呻く声も聞こえた。
「きゃっ!」
体勢の崩れたリヴィエを支え、アレスは辺りを見回した。
だが、特に周りに異常は無い。と、かなり遠くの方で再び爆音が轟いた。
「何があったんだ?」
「さ、さぁ?」
瞬間、向こうの方で武装した騎士団が西に向かっているのが見えた。
「さっきの爆音と何か関係しているのか?」
「どうなんだろ」
アレスとリヴィエはそれ以上追求すること無く、家に戻った。
謎の爆音があった西のラ・ホールでは、複数の悪魔が這い上がってきていた。
そして、その悪魔がアレスの住む国バルクレアだけでなく、惑星ユドラ・グシルごと蹂躙しようとしていた。