第2話 選択
がんばりまーす
翌朝。目が覚める、そこは自分の部屋ではなかった。夢ということはなかったようだ。
俺はベランダに行き、外を眺める。そこには中世ヨーロッパのような町が広がっていた。昨日は、いろいろあって外を見ることができなかった。そこは日本と同じように活気に溢れていた。
「こんな世界でも、殺伐としているわけじゃないんだな」
危険があふれているこの世界は、楽しみがないのかと思っていたので、そうつぶやく。
「ふぁ~。おはよう、悠」
「おはよう」
修次が起きてベランダにやってくる。
「なにしてたんだ?」
「少し考え事をね」
「修次こそ、どうしたんだ?いつもは起きるのおそいだろ」
修次は学校に、ギリギリか遅刻で来る。なので、朝早くに修次が起きるのは珍しい。
「いや、こんなことになってるのにぐっすり寝れるほど図太くねーよ」
そりゃあそうか。俺だって早く起きたぐらいだもんな。でも、修次も悩んだりするんだな。
「お前、今失礼なこと考えたろ?」
「そんなことないよ。……なあ修次、レストさんに許可をとって町に行かないか?」
「どうしたんだ急に?」
「少し町の様子を見たくてね。どんな生活をしているか気になるんだ」
「まあいいぜ」
その直後、ドアがノックされた。
「すみません、レストです。昨日お渡しするのを忘れていた、この世界の人間の平均ステータスのデータをお持ちしました」
ドアを開けてレストさんを招き入れる。
「ありがとうございます。こちらも、貰いに行こうと思っていたので」
「では、私はこれで」
退出しようとするレストさんを引き留める。
「あ、待ってくださいレストさん。町に行きたいんですが」
「別に構いませんが、どうして町に?」
「この世界の人達が、どんな生活をしているのかきになって」
「そういうことでしたか。ですが勇者様方だけで行かせる訳にはいかないので、私が同行しますがよろしいですか?」
「ええ、構いません」
「では10時ごろにこちらの部屋に迎えに伺いますので」
「わかりました」
「では、私はこれで」
出ていくレストさんを見送る。
しばらくすると愛姫達も起きてきた。そして、ついさっきのことを話す。愛姫達も町に行く、と言うので全員で行くことにした。レストさんから貰ったステータスのデータをみんなにも見せる。データはこんな感じだった。
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レスト・マーヴィン 28歳 人間 男 魔術師
LV:56
称号:アジルス王国魔術師団団長
HP:610/610
MP:940/940
魔力:100
筋力:38
耐久:19
敏捷:25
魔法
火魔法(LV.4){火炎球}{炎拳}{火炎槍}{爆炎}
風魔法(LV.2){風刃}{飛翔}
雷魔法(LV.2){雷撃}{雷動}
光魔法(LV.3){閃光}{光槍}{聖光}
複合魔法{炎雷球}{雷光}
スキル
{魔力譲渡}{魔法威力1.5倍}{魔法複合}{二重魔法}
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レスト・マーヴィン 12歳 人間 男 魔術師
LV:1
称号:なし
HP:50/50
MP:100/100
魔力:80
筋力:10
耐久:5
敏捷:7
魔法
火魔法(LV.1){火炎球}
風魔法(LV.1){風刃}
雷魔法(LV.1){雷撃}
光魔法(LV.1){閃光}
スキル
{魔力譲渡}{魔法威力1.5倍}
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HP=生命力 MP=精神力 魔力=魔力濃度
LVが1上がるごとにHPは10上がる。
LVが1上がるごとにMPは15上がる。
魔力は基本的に変化はしない。
LVが2上がるごとに筋力は1上がる。
LVが4上がるごとに耐久は1上がる。
LVが3上がるごとに敏捷は1上がる。
魔法の種類は基本的に増えない。スキルはLVが20上がるごとに増える。
魔法はLV.1でMP消費10
魔法はLV.2でMP消費30
魔法はLV.3でMP消費60
魔法はLV.4でMP消費80
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「この世界の人間よりは強いみたいだな」
にしても、まさかレストさんのステータスをデータとしてくれるとは思っていなかった。せめてもの誠意なのだろうか。まあ、歓迎していない人もいるみたいだが。
愛姫達はレストさんのステータスと俺のステータスを見比べながら険しい顔をしていた。
「ねえ悠、昨日は言わなかったけど、この悠のMPが表示されないのってやっぱり……」
「あの事が原因だろうな」
俺のMPは表示できていない。そして、レストさんによればMPとは精神力というらしい。ということは、表示されないのは100%あの事件が関係している。
「まあ、別にバレてもいいだろ。秘密でもないしな」
そう言った後も、愛姫達は険しい顔のままだ。俺はこの雰囲気を変えようと別の話題を振る。
「とりあえず出かける準備してきなよ。そろそろ、レストさんが来るだろうから」
出ていく愛姫達の顔は未だ険しいままだった。
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愛姫達は着替えて再び俺達の部屋に集合していた。そこにはレストさんもいた。着替えたのは異世界の衣服だ。
「どう悠、似合ってる?」
「どうですか?悠さん」
「どうだい?二人とも」
愛姫は、ワンピースとドレスの中間のものを。
結衣は、日本にもあるようなシャツとスカートを。
紗綾先輩は、ふりふりのついたシャツとスカートを。
「ああ、似合ってるよ」
「ありがと」
「ありがとうございます」
「ありがとね」
「でも会長は意外っすね。可愛らしいのが好きなんっすか?」
「ああ、昔からね」
それに対して修次は上下黒のシャツとズボン、俺は軍服モドキだ。
「なんで悠さんは軍服なんですか?」
「これしかなかったから」
俺達のクローゼットには2着しかなかった。仕方なく、これを着たのだ。
話終えたのを見計らってレストさんが話しかけてきた。
「ではそろそろ町に行きましょうか」
「わかりました。今日はお願いします」
「おまかせください」
そうして、町に行くために俺達は部屋を出た。
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町の入り口に来た。城から見ただけでも賑わっていたが、近くに来たらさらに賑やかだった。
愛姫達も楽しみなのか、足取りが軽い。
「ではまず、露店の方に行ってみましょう」
俺達は露店に案内される。そこは、たくさんの露店がならび、100を越える人がいた。
「焼きたてのパン銅貨3枚!」
「クレープ各種類、大銅貨3枚!二個買うなら大銅貨5枚でいいよー!!」
「いらっしゃい、いらっしゃ~い。シャドウウルフの串焼き今なら大銅貨5枚だよ~!」
たくさんの食べ物を、競うように売っている。俺達はクレープ屋に行く。
「いらっしゃい!おや、レストじゃないか。今日はどうしたんだい?」
レストさんは、どうやら店のおばさんと知り合いのようだ。
「このことはまだ秘密にしておいてほしいのですが、この方達は今回召喚した勇者様方です。今日は、勇者様方が町の様子を見たいと仰るので連れてきました」
「おやそうなのかい。私はここでクレープ屋兼情報屋をしているテリアだよ。よろしくね勇者様方」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
どうやら情報屋関係で、レストさんとテリアさんは知り合ったようだ。
「で、クレープは買うかい?」
「お願いします」
「何にする?」
「オススメを。みんなは?」
勝手に決めるのは悪いので、みんなに聞く。
「私も悠と同じやつがいい」
「私も同じものを」
「俺はあまり甘くないやつを」
「私も修次くんと同じもので」
「まいどあり!全部で大銅貨13枚だけど、レストの紹介だからね。12枚でいいよ」
お金を払い、クレープを受けとる。クレープには何の果物かわからないが、たくさんのフルーツが入っていた。
そして、貰ったクレープを頬張りながら町を歩いて行く。数分歩いたところで、大きな酒場のような建物が目に入った。
「レストさん、あの建物はなんですか?」
俺はその建物を指差して、レストさんに聞く。
「あれは冒険者ギルドです。成人した人がなれる職業で、依頼を達成すると報酬がもらえる仕組みです」
「この国ではいくつから成人なの?」と愛姫が問う。
「この国は15からです。他の国では12からのところもあります」
その言葉を聞き、修次達は驚愕する。それもそうだろう、日本では20から成人なのだから。
「本当なんですか?私達より小さな子が、危険なことをしているんですか?」
結衣は気弱なために俺達より、この事実が信じられないはずだ。
「本当ですよ。あの、依頼掲示板にいる人達を見てください。2~3人くらい15歳くらいの人達がいます」
言われた通り見ると、確かに自分達と同年代くらいの人達がいる。そのなかには手に傷があったり、顔に傷があったり、酷いことになっている。
それを見るとやはり戦うことが怖くなってくる。
「では暗くなってきたので、そろそろ城に帰りましょうか」
その後は、あまり会話もないまま城に帰った。
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俺達は帰ってくるとすぐに、部屋で話し合いを始めた。
「みんなは今日のことでどう思った?」
「私はやはり、怖いと思いました。戦いに参加すれば怪我をするし、最悪死んじゃう、と」
まあ当然だと思った。だが、ここで愛姫が意外な反応した。
「私は戦うわ」
「なぜ?」
俺は愛姫の考えに驚き、少し威圧するような声になってしまった。
「ギルドを見て、私達より年が下の子達が戦っているのに指をくわえて見ているだけは嫌なの。それに私達には力もある。だからやろうと思ったの」
「俺もその意見に賛成だ。同じようなことを考えてた」
「え、修次と同じ?やだなー」
「なんでだよ!」
愛姫がそんな態度をとるが、表情は少しうれしそうだ。
「私も戦うことにするよ。後輩だけにまかせっぱなしではみっともないしね」
紗綾先輩も賛成のようだ。
「結衣はどうする?」
いまだに悩んでいる結衣に問いかける。
「私は…………」
「大丈夫。なにがあっても守るから」
俺がそう言うと結衣は顔を赤くした。
-どうしたんだろう?熱かな?
しばらくの沈黙の後、結衣が口を開いた。
「悠さんがそう言うなら私も賛成します」
どうやら話はまとまったようだ。と、そこで愛姫が「むうぅ~。私は守ってくれないの?」と聞いてくる
「もちろん、みんなは必ず死なせないよ」
「えへへへ///ありがと」
「俺は守られる側じゃないぜ」
「ありがとう。そう言ってもらえるだけでうれしいよ」
そのまま話を続け、気がつけば日が上っていた。
どうでしょうか?下手ですが見てくれたら幸いです。