第1話 アリスとチェシャ
人は、どれほど闇を知っているのだろう。
この世界の闇を-。
(闇…それはこの世界だろう。)
少年はある空間の少女達を見た。
(…あいつらは、闇を全く知らないようだな…)
少年はニタリと嗤う。
(しかし…あの女は……何も感じられないな。)
少年の目にある少女が目に留まる。
「…これは、」
少年は一度驚き、
そしてまた嗤った。
「いいだろう、その願い…叶えよう。」
少年は盛大に両手を広げたのだった-。
*
「歩美ーっ!おっはょ!!」
「おはょ!あ、きょうの化粧なんかちがうね!」
…うっさいんだけど。
私はそう思いながらも進む足を止めない。
あんな奴らに構ってたら時間の無駄だからね。
因みにあのギャル共はわざとらしくスカート短くしてるしノーブラだし…男共を誘ってるような奴ら。同じ高校の制服を着てる私からすれば、迷惑でしかない。もしかしたらノーパンかもしんないから、趣味悪いヤロー共は襲ってみれば?
「アリスーっ!おーはーよーおーっ!」
…げ、来た。
「…化け猫」
「ちょ、酷くないっすか!?」
「私、面倒な奴と関わりたくないの、分かる?」
「じゃあ俺大丈夫っすね!面倒じゃないから!」
…うざい。
「うるさい、猫」
「だからっ!俺猫じゃないっすよ!」
私は冷めた目で猫-…もとい春雨凪零(ハルサメ ナガレ)を見た。
こいつはまぁあのギャル共よりかはマシだ。
なぜ猫かと言うと猫目だし、私が猫が好きだから。それに何より、
「俺は!アリスのチェシャ猫!」
…とか、言うからだ。
こいつとは中学からつるんでいる。
つるんでいると言うか、勝手にこいつがついてくるんだけど。
入学式の初日、「アリスって言うの?じゃあ俺はアリスのチェシャ猫になる!」とか、意味も分からない事を言ってきたのだ。
なのに「猫じゃないっすよ!」とか言うのはおかしいと思う。
「ねぇアリス」
「アリスじゃない、有栖川!」
そう、私の名前はアリスではない。
有栖川りんね(アリスガワ リンネ)。
そこを間違えないでいただきたい。