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虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~  作者: メラニー
第三章 双子と死神
25/56

24話 旅の続きは竜巻に乗って 5/6

オラたちは、チャルカに一晩の別れを告げてラロの案内で、町までやって来た。


町に入る手前で、小さくなったメリーは人目を避けるためにオラのチュニックの中に隠れてもらった。

もぞもぞしてこそばゆい。


「ここがペンタクルです。」

遠くから、町の賑わいは聞こえていたが、近くまで来てみると、本当ににぎやかな街だった。

商店が並んでいて、どのお店もお客らしい人が行きかって、繁盛しているようだった。

人々の衣服を見ると、ポンチョやウィルピルを着ている人が多かったが、ディアンドルやサリーやら名前も知らない、見たこともない衣服も珍しくなかった。それを見るだけでも色んな所からこのペンタクルという町に人々がやってきているのが分かった。


「大きな町なんだな。」

「見て!あの方、虹伝師こうでんしさまよ!」

「わ! ウチ、初めて見た!」


「みなさん、そんなにキョロキョロしないでください。皆さんが神殿からやって来たという事は悟られてはいけません。貿易でやって来た商売人の顔をしてください。今は実績のある貿易商でないと入れないので、ベテランの顔をしてくださいよ。」

「オラたちが神殿からやって来たとばれたらどうなるんだ? 」

「神さまとの強いつながりを持ちたい商売人ばかりですから、放してもらえなくなりますよ。」

「…なるほど。」

「なので、ここでは神殿からやって来たことは秘密ですよ。いいですね」

なんとなく、秘密事が苦手そうな三人が黙ってコクッと頷く。


「わぁ! すっごくおいしそうなに匂いがする! ねぇ、この匂いなに? 」

メイシアがそういうもんだから、今まで空腹である事なんて忘れていたのに、一気に空腹が襲ってきてお腹と背中がくっつきそうになる。

「オラもお腹減ったー。何か食べたいなぁ。」

「ウチも!喉もカラカラなんだった。」

『ぴちゅっ』

オラのチュッニックの中でメリーも空腹を訴えている。


「だったら、食事をしてから宿に向かいましょう! この辺りの料理はピリッと辛いですがみなさん、辛いものは大丈夫ですか? 」

「大好物だ!」「大丈夫!」とオラとメイシアは言ったのだが、ウッジは食べたことがないらしく、ちょっと不安な顔になった。

「おいらのおススメのお店でいいですか? 」

「もちろん! 」



ラロに連れてきてもらったお店は、丸太小屋のカウンター席とテーブル席が数席しかない小さなお店だった。

「この店、町の端っこにあるし、古いからあんまり繁盛してないけど、味は保証するよ! …イテ! 」

席についてペラペラしゃべるラロの頭に拳が落ちた。


「こら、ラロ! 好きなように言ってくれているね! 」

「痛いなぁ! せっかくお客さんを連れてきてやってるのに、なんて仕打ちだよ! 」

「お嬢ちゃんたち、騒がしくしてごめんなさいねぇ。」

肝っ玉かぁちゃんという感じのふくよかな女性だった。この店の店主だろうか。


「で、何を出せばいいんだよ、ラロ! 」

「そんなの、この店の食べ物なんて、大体決まってんだろ! 品数も少ないのに! うまいものを出してやってくれよ! 」

「はんっ! そんな偉そうな口の利き方するんだったら、あんたの分はないからね! 」

オラたちにコップと水の入ったビンをテーブルに置くと、女性はキッチンへ姿を消した。

「ちょっと待ってくれよ、かぁちゃん! 」

とラロもキッチンに引っ込んだ。


「…ラロのお母さんなのかな? 」

なんとなく小声になってしまっているメイシアが、ビンから水をついでくれた。

「ありがとう。たぶん、そうみたいだね」


ラロがキッチンから出てきた。なんだか、腑に落ちないような顔をしている。

「どうしたの? 」

「あー、気にしないで。大丈夫、大丈夫。…大丈夫といえば、ここおいらの家みたいなものだからさ、ほかの客もいないし、グリフォン出してあげても大丈夫だよ。」

その言葉を聞いて、いち早く、オラのチュニックの首元からひょいっとメリーが顔を出した。


『ぐぅ! 』

「メリーちゃんも喉乾いていたんだもんね。どうぞどうぞ。お水飲んで。」

メイシアが腕を出すとメリーが乗った。そこにコップを持っていって目の前で傾けてやると、おいしそうにメリーが水を三口ほど飲んだ。

「よかったねー。おいしかった? 」

『きゃりっ』


「へぇ。メリーっていうのかい? すごく懐いているんだね。」

「ウチらに懐いているいうか…チャ、じゃなかったソーラに懐いているんだよねぇ。」

「そうだね。それに、すごく頭がいいから、言葉もわかるようだし…ペットというよりも仲間って感じなのかな? 」

「ふーん。オイラは、こんな珍しい生き物を近くで見せていただけるだけで、ありがたいけど、商人の中にはこういう珍しい生き物を取引している奴もいるだろうから、気をつけなよ。」


そこに、おかみさんが料理をもって登場した。

何とも言えないいい香り。

「待たせたね! "ハラペーニョ"特製のうずら豆のスープとタコスだよ! あと、鶏肉の煮込みね! 熱いから気を付けて食べるんだよ! 」

どれも見たことのない料理ばかり! そしておいしそう!


「ありがとうございます!どれも、おいしそう!! 」

「そうだろう。おや、その生き物はなんだい? 」

「ご、ごめんなさい! 」

「いや、別に構わないんだよ。その子も何か食べるかい? 何だったら食べられる? 鳥だからやっぱり葉っぱかい? 」

「あ…いや…」

メイシアが鳥という言葉に引っかかったようで、困ってしまっている。葉っぱと果物でいいかな。


「はい。葉っぱでお願いします。あと、もし果物が何かあったらいただけると嬉しいのですが…」

「そうかい。果物を食べるんだね。ここは手に入らない果物がないくらい色んな土地からやってくるんだよ。ちょっと待ってな。」

と、またキッチンに引っ込んだ。


「おかみさん、メリーを鳥だと思っているみたいだな。」

「まぁ、その方が都合がいいかなぁ…」

「頭、鳥だしね。翼もあるし。」


「ほれ、今はこんなのしか無いけど、また来るんだったら色々仕入れておくよ。」

と、葉っぱ系の何かと果物を数種類持ってきてくれた。


『ぴちゅっぴちゅっ!! 』

「何だい、この子、喜んでいるのかい? 」

「かーちゃんも、メリーの言葉わかんの?! 」

「そりゃ、生き物はみんな喜ぶのも悲しむのも、みーんな一緒さね!はははは!さ、冷めないうちにお食べ。」

気持ちのいいおかみさんだなぁ。


「じゃ、いただきましょうか。」

「そうだな!いただきます! 」

「身光の下…」

なんだか、食事の挨拶を一人でするウッジが心なしか寂しそうに見えたのが気になったが、食事を初めて、あまりのおいしさにそんな思いも吹き飛んでしまった。


「このスープおいしい!!! 」

「鶏肉の煮込みもおいしいよ! 」

「このタコスもおいしい! 赤いから辛いのかと思ったら、辛くないんですね」

ウッジは辛い食べ物を食べたことがないから不安がっていたのだけど、どうやら大丈夫だったようだ。


「赤いのは、トマトだよ。でもちょっとだけ辛いのが入っているけどね。特にその緑色の…」

ラロが説明が料理の説明をしてくれているのだが、少し遅かったようだ。

「!!!」

いきなりウッジの動きが止まったかと思うとむせ始めた。


「あー…やっぱりダメだった? その緑色の酢漬けが店の名前でもあるハラペーニョって言って、けっこう辛いんだ…もう知っているよね? 」

「辛ーーーーーーい!!! 」

ウッジが火を噴きそうな勢いで叫んだので、みんなそれを見て笑った。

とても楽しい食事だった。



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