1/8
序章
ぽかぽかと日差しの暖かい春が、ルアムハルク城にも訪れた。2階のテラスにこのあたりではとても珍しい、真っ黒な髪の少女と、赤く輝く鱗をもつドラゴンがいた。
いつもと同じ、昼下がり。
のはずだったが、突然真っ黒な闇が空を覆い、ドラゴンと少女が叫ぶ声が響いた。
城の中から慌てて女中がでてきたが、真っ暗で何も見えない。
「姫さまーっ!?」
数分後、空は晴れわたり、姫を見つけた女中は彼女に駆け寄った。
大声で泣いているが、怪我はないようだ。
しかし、ドラゴンの姿はどこにもなかった。
泣きわめく少女の手の中には、一枚の真っ赤な鱗が握られていた。