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第9話:隣国の聖女と、聖域(バスルーム)の不純な儀式

王都での夜会をジャックし、ザックスたちを社会的に葬り去ってから数日。

 亡霊公爵の館は、今や「世界の中心」へと変貌を遂げようとしていた。

「カイト様、本日の朝食は、私が森で狩ってきた最高級の白鹿のステーキです!」

「いいえ、カイト様! 朝は消化に良い、王家秘伝の聖乳スープをお召し上がりになるべきですわ!」

 朝のダイニングルームでは、エプロンを(それも裸エプロンに近いきわどい格好で)身につけたリンと、王族の意地を見せるセシリアが、俺の胃袋――あるいは寵愛を奪い合って火花を散らしている。

 

 だが、その平和(?)な光景を切り裂くように、ジェミニの警告音が脳内に響き渡った。

『マスター。館の正門に、高エネルギーの「神聖魔力」を検知しました。……波形から推測するに、隣国のエルフィア聖教国が誇る【第一聖女】、クラリス・フォン・ルミナスです』

「聖女? 宗教国家のトップが、なぜこんな事故物件に……」

『鑑定情報を展開。……なるほど、彼女もまた「システムの不備」に苦しんでいるようですね。彼女の「聖痕」は胸元ではなく、よりデリケートな【下腹部】に刻印されており、その熱量が限界に達しています。……マスター、彼女は助けを求めてきたのではありません。「自分を鎮められる男」を奪いに来たのです』

 玄関を開ける間もなく、重厚な扉が光の粒子となって霧散した。

 そこに立っていたのは、純白の法衣に身を包み、腰まで届く金糸の髪をなびかせた、神々しいまでの美少女だった。

「……あなたが、天野カイト様ですね?」

 クラリスは、慈愛に満ちた笑みを浮かべていた。しかし、その瞳の奥には、抑えきれない渇望の炎が揺らめいている。

 彼女が数歩歩くたびに、法衣の裾から漏れ出す白い霧が、周囲の空気をピリピリと震わせる。

「私の……この『聖なる乾き』を癒やせるのは、あなただけだと、神(演算)が告げました。……さあ、私をあなたの『支配下』へ置いてくださいませ」

 初対面で、この台詞である。

 当然、俺の両脇にいたリンとセシリアが、抜身の剣よりも鋭い視線をクラリスへ突きつけた。

「ちょっと、どこの聖女か知らないけど、カイト様は私の命の恩人よ!」

「そうですわ! 治療が必要なら、列に並びなさいな。今は私が『冷却』していただいている最中ですの!」

 クラリスは二人を一瞥いちべつすると、フッと鼻で笑った。

「騎士に、王女……。どちらも『上辺の魔力』しか触れていないようですね。……カイト様、私の聖痕は、もっと深い場所にあるのです。……さあ、早く『儀式』を」

『マスター。彼女の魔力暴走レベルは6.0。放置すれば、この街が聖なる光で蒸発します。……直ちに、新設した「魔力循環プール」へ彼女を連行してください。……リン様、セシリア様。あなたたちも「補助」として参加を。三人を同時に最適化します』

「三人同時だと!?」

 案内されたのは、館の地下に造られた最新鋭の魔導浴場。

 そこは、ジェミニが構築した「魔力吸入システム」が備わっており、お湯自体が淡いピンク色に発光している。

「さあ、カイト様。……聖女の仮面を剥ぎ取るのは、あなたの仕事ですわ」

 クラリスが自ら法衣を脱ぎ捨て、湯船へと足を踏み入れる。

 露わになったのは、聖女の名にふさわしい、一点の曇りもない白磁の肢体。

 そして、彼女の下腹部――おへその少し下あたりに、禍々しいほど赤く脈打つ【逆十字の聖痕】が刻まれていた。

『鑑定詳細。……その聖痕は、彼女が「快感」を得ることでしか魔力を放出できないという、呪われたシステムです。マスター、指先でその刻印をなぞり、私の演算データを直接『注入』してください。……リン様は彼女の背中を、セシリア様は彼女の手を握り、魔力のバイパスとなってください』

 俺は、お湯の中でクラリスと向き合った。

 彼女の熱く火照った下腹部に、そっと掌を添える。

「あ……っ、ああぁ……! カイト……様の、魔力……っ。なんて、不埒で、暴力的なの……っ!」

 指先が聖痕の輪郭をなぞるたびに、クラリスの体が弓なりに反る。

 彼女は俺の首に腕を回し、聖女とは思えないような熱っぽい吐息を俺の耳元に吹きかけてくる。

「もっと……もっと深く、私を壊して……。神様、ごめんなさい……私、この方の魔力の方が、天国よりも……気持ち、いい……っ!」

 その光景を支えるリンとセシリアも、クラリスを通じて流れ込んでくる俺の魔力に当てられ、次第に瞳がトロンと潤んでいく。

 

「カイト様……私まで、熱くなって……きちゃいました……」

「私も……ですわ。三人の魔力が……一つに、混ざり合って……っ」

 お湯の中で、四人の魔力が渦となり、巨大な光の繭となって浴室を包み込む。

 ジェミニの演算が、彼女たちの不完全な魂を、俺という核を中心にして一つの「完璧な形」へと編み直していく。

【状態:聖女クラリス、最適化(陥落)完了】

【特記事項:トリプル・リンク(三位一体)。これより、マスターの魔力は彼女たち三人を通じて「無限」に供給されます】

 儀式が終わる頃、お湯の中には、俺にしがみついて離れない三人の美女の姿があった。

 聖女は俺の膝の上に乗り、騎士は腕を抱き、王女は背中に顔を埋めている。

「……ジェミニ。これ、俺が最強になるためとはいえ、いろいろアウトじゃないか?」

『いいえ、マスター。これは「世界の再構築」のために必要なプロセスです。……さあ、準備はいいですか? あなたをゴミのように捨てた世界が、今、この『三人の女神』を従えたあなたを、恐怖と羨望の眼差しで見つめています』

 俺の成り上がりは、もはや一国の騒動を超え、神話の領域へと足を踏み入れていた。

 

「……カイト様、今夜は、誰が一番にお世話をするか、決めなきゃいけませんね?」

 三人の美女の視線が、俺の理性を再び「最適化」しようと熱く絡みついてくる。

 俺の夜は、まだまだ終わりそうにない。

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