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第7話:王女と女騎士、深夜の「魔力共有」は誰のもの?

大浴場での狂乱じみた「治療」から数時間。

 亡霊公爵の館は、夜の静寂に包まれていた。かつての不気味な気配は微塵もなく、ジェミニが管理する魔導動力炉から供給される柔らかな光が、贅を尽くした廊下を優しく照らしている。

 俺は、館のマスターのみが使用を許される、広大すぎる寝室で一人、枕に頭を沈めていた。

 だが、意識は冴え渡っている。……理由は明白だ。

『マスター。報告します。廊下の右側から心拍数一二〇の生体反応が接近中。同時に、左側のテラスからも、極めて静かな足音を確認しました。……どうやら、あなたの「夜の最適化」を巡って、早くも第二ラウンドが始まるようです』

「ジェミニ……お前、分かってて言ってるだろ。ここは個室だぞ? 鍵もかかってるはずだ」

『残念ながら、この館のすべての鍵は私の管理下にあります。そして私は、マスターの健康維持のために「ヒロインたちとの深い魔力結合」が不可欠であると判断しました。……というわけで、解錠します』

「おい、待て!」

 カチリ、という無慈悲な音が響くと同時に、巨大な天蓋付きベッドの両側から、二つの人影が滑り込んできた。

「カイト様……。一人で寝るのは、まだ魔力が不安定で、怖くて……」

「嘘をおっしゃい! あなた、単に先手を打とうとしただけでしょう? カイト様、私こそが、その……特別な冷却が必要なのですわ!」

 右からは、薄いネグリジェ一枚を纏ったリン。

 左からは、シルクのシュミーズ姿で、金髪を乱したセシリア。

 昼間のお風呂でも散々目のやり場に困ったが、月の光に照らされた今の彼女たちは、さらに破壊力が増していた。

 リンのネグリジェは、湿った夜風に煽られ、彼女の鍛え上げられたしなやかな肢体を露骨に浮き彫りにしている。対するセシリアは、王族らしい最高級の薄衣のせいで、その豊かな胸の輪郭が今にも溢れ出しそうなほど強調されていた。

「二人とも、落ち着け。寝室は他にもたくさんあるだろ?」

「嫌です。カイト様の隣じゃないと、あの地獄のような熱が戻ってくる気がして……」

 リンが俺の右腕を抱きかかえる。濡れたような瞳で見つめられ、その柔らかな感触が二の腕に伝わってくる。

「私もですわ。カイト様の魔力が、私の体の中でまだ『寂しい』と鳴いているのです。……ですから、今夜は、私を抱いて眠ってください」

 セシリアが左側から俺の首筋に顔を埋め、熱い吐息を吹きかけてくる。

『鑑定詳細を更新します』

【対象:氷室リン。状態:独占欲(極大)。カイト様のシャツの匂いを嗅ぐだけでは満足できなくなっています】

【対象:セシリア。状態:魔力飢餓(臨界)。王族としての理性を、あなたの指先の感触が焼き切ろうとしています】

「ジェミニ、解決策を教えろ。このままだと俺が物理的に引き裂かれる」

『最適解を提示します。……左右の手で、同時に彼女たちの【魔力中枢】に触れてください。リン様はうなじから背中にかけて。セシリア様は、昼間と同じく心臓の直上です。……同時に魔力を流し込むことで、強制的な「リラックス状態」へ誘導します』

「同時に、か……」

 俺は覚悟を決めた。

 右手を伸ばし、リンの項に触れる。彼女の銀髪をかき上げると、そこには昨夜の戦闘の傷跡がうっすらと残っていた。指先から魔力を流すと、彼女は「あ……っ」と短く声を漏らし、俺の胸にぐったりと体重を預けてきた。

 間髪入れず、左手をセシリアの胸元へ。

 シュミーズの薄い布地越しに、ドクドクと波打つ彼女の王族としての心音を感じる。

「ひゃ……っ!? そこ、は……っ、あああぁぁ……!」

 二人の美女が、俺の両腕の中で同時に震える。

 ジェミニを通じて送り込まれる俺の魔力は、彼女たちの奥深くまで浸透し、絡まり合った魔力の結び目を一つずつ解いていく。

 その快感は強烈なようで、リンは俺の肩に歯を立てるようにして耐え、セシリアは意識が遠のくような恍惚とした表情で俺を見つめていた。

「はぁ……はぁ……。カイト様……やっぱり、あなたの魔力、すごいです。……私、もう、あなた無しじゃ、戦えません……」

「わ、私も……。お父様に怒られても、もう、離れられませんわ……。ずっと、ここにいても、よろしいですか……?」

 一国の王女と、人類最強クラスの騎士。

 そんな二人が、俺の腕の中で溶けるようにして寄り添っている。

 Fランクの荷物持ちとして、泥水を啜っていた日々が嘘のようだ。

『マスター。お楽しみのところ失礼しますが、不穏な動きを検知しました。……ザックスの所属していた元ギルドが、あなたの「不正な成り上がり」を告発するために、各国の要人を招いた大夜会を開催するようです。……そこには、セシリア様の父君である国王陛下も出席されます』

「……なるほど。社会的な地位を奪って、俺から彼女たちを引き離すつもりか」

『ええ。しかし、彼らは大きなミスをしています。……この館の動力炉には、全世界の通信網を掌握できる【超魔導アンテナ】が備わっています。……マスター、次の最適化は「夜会のジャック」でよろしいですね?』

 俺の唇に、自然と不敵な笑みが浮かんだ。

 腕の中の美女たちは、俺の魔力に当てられて、今は安らかな寝息を立てている。

「ああ、ジェミニ。徹底的にやってやろう。……俺の宝物に手を出そうとしたことを、骨の髄から後悔させてやる」

 亡霊公爵の館に、新たな野望が灯る。

 俺の二刀流による「最適化」は、もはや一個人の救済を超え、この国の秩序そのものを書き換えようとしていた。

 翌朝、目覚めた二人の美女と、どんな「事後のような」修羅場が待っているかを想像しながら、俺はジェミニが展開する膨大な敵のデータを眺め続けた。

(第8話:元ギルドの末路と、全世界への「ラッキースケベ」配信!?へ続く)

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