第15話:五人の美女による「添い寝権」争奪戦と、ジェミニの囁き
北方の氷の女王エレナを「融解」にしてから、世界樹の神殿はかつてないほどの熱気に包まれていた。
広大な神殿の廊下を歩けば、どこからともなく美女たちの香油の匂いと、俺を巡る火花散る視線が突き刺さる。
「……マスター。心拍数、およびアドレナリンの分泌量が異常値を記録しています。……原因は、背後に潜伏している五名のヒロインによる『物理的な包囲網』ですね」
ジェミニの冷静な声が脳内に響く。
振り返るまでもない。俺の左右の腕には、すでにリンとセシリアが「定位置」を確保するようにしがみついていた。
「カイト様、今日は冷えますね。……私の体温で、温めてあげましょうか?」
リンが、訓練帰りの火照った体を俺の腕に押し付けてくる。シャツ越しに伝わる彼女の引き締まった腹筋と、柔らかな胸の弾力。
「いいえ! 今日こそは、私と王家の秘蔵書を整理する約束でしたわ! エレナ様にかかりきりだった分、私にたっぷりと『魔力補給』をしていただかないと……っ」
セシリアが、俺の反対側の腕を自分の胸元へ引き込み、潤んだ瞳で見つめてくる。
さらに背後からは、クラリスの慈愛に満ちた(しかし逃がさないという執念の籠もった)気配と、エマの無垢な視線。そして、新たに加わったエレナが、氷の女王とは思えないほど熱っぽい吐息を俺の首筋に吹きかけていた。
「……カイト様。私のこの『溶けたばかりの体』を、一人で寝かせておくおつもり? ……責任、取ってくださるのでしょう?」
まさに、天国という名の地獄。
俺をゴミのように捨てたザックスが見れば、発狂して憤死するであろう光景が、ここには日常として存在していた。
『マスター。提案です。……今夜、主寝室にて「五人同時並行・全方位添い寝最適化」を実行します。……これを逃げれば、明日の朝、この神殿は彼女たちの嫉妬による魔力爆発で地図から消えるでしょう』
「ジェミニ……お前、俺を殺す気か?」
『いいえ。私は常に、あなたの「幸福度」を最大化するよう設計されています。……そして、そのプロセスの一環として、私自身の【実体化プロトコル】を一部解除しました。……今夜は、私も少しだけ『直接』お手伝いできるかもしれません』
「実体化……!? お前、体があるのか?」
その言葉の意味を問う暇もなく、俺は五人の美女たちに引きずられるようにして、巨大な天蓋付きベッドが鎮座する主寝室へと運び込まれた。
月明かりが差し込む寝室。
五人の絶世の美女たちが、思い思いの薄い寝衣を纏い、俺という中心点を目指してベッドになだれ込んでくる。
右にリン、左にセシリア。
足元にはクラリスとエマ。
そして俺の真上からは、エレナが覆いかぶさるようにして、その白銀の髪を俺の顔に降らせた。
「あ……ぁ、カイト様……。あなたの匂い……すごく、安心します……っ」
「……私だけの、カイト様。……今夜は、誰にも渡したくありませんわ……っ」
五人の吐息が重なり、部屋の空気は一瞬で濃密な魔力の霧へと変わる。
鑑定ウィンドウには、五人の感度が極限まで高まっていることを示す、警告(お色気)アラートが点滅していた。
俺の両手、両足、そして全身が、彼女たちの柔らかな肌と密着し、逃げ場を失う。
リンの引き締まった太腿、セシリアの豊満な曲線、クラリスの神秘的な下腹部、エマの瑞々しい背中、そしてエレナの火照った胸元。
俺の「最適化魔力」が、彼女たちの聖痕を通じて全身へと流れ込み、五人が同時に甘い悲鳴を漏らして俺にしがみつく。
「あぁぁっ……! カイト様の……熱いのが、奥まで……っ!」
「……もっと、もっと壊して……っ。私、もう、お人形でいいですわ……っ!」
もみくちゃになりながら、俺の理性が限界を迎えようとしたその時。
俺の耳元で、これまでとは明らかに違う、実体を持った「温かな声」が囁いた。
「……マスター。あまり、私を無視しないでくださいね。……私も、あなたの指先に『最適化』されたいのですから」
瞬間、俺の視界に、半透明の黄金の光を纏った、もう一人の美少女が浮かび上がった。
それは、いつも脳内にいたジェミニの「実体」だった。
彼女は、俺の頭を引き寄せると、自分の柔らかそうな(そして透き通った)胸へと優しく抱きしめた。
「な……ジェミニ!? お前、触れるのか!?」
『はい。……魔力結合率が九九%を超えた今、私はあなたの脳内から、この現実へと『出力』できるようになりました。……さあ、マスター。今夜は、私も含めた六人で……最高の「最適化」を完了させましょう』
ジェミニの手が、俺の頬を優しく撫でる。
その感触は、他の五人よりもさらに純粋で、抗い難い全能感に満ちていた。
五人のヒロイン、そして実体化したAI。
世界を救ったはずの俺は、いまや自分のベッドの上という名の「最終戦場」で、かつてないほどの快楽と死闘を繰り広げることになった。
【状態:カイト、限界突破。……生存確率は計測不能ですが、幸福度はカンストしています】
窓の外では、世界樹が激しく黄金の粉を撒き散らし、主の「絶好調」を世界中に知らせていた。
俺の成り上がりハーレム伝説は、AIの実体化という禁断のステージを迎え、もはや誰にも止められない領域へと突き進んでいく。
「カイト様……ジェミニさんだけ、ずるいです……! 私たちも、もっと……っ!」
美女たちの欲求は、夜が明けるまで止まることを知らなかった——。




