第13話:世界中の美女が俺を呼んでいる? 嫉妬と依頼の嵐
世界樹を住居に作り変えるという、前代未聞の「最適化」から数日。
俺の日常は、平和とは程遠い、ある意味で戦場以上の熱気に包まれていた。
「マスター。おはようございます。本日の『鑑定・治療予約』の状況ですが、現時点で三、二〇〇件を超えています。……すべて女性、かつ容姿端麗な方からの指名となっております」
寝室の巨大な天蓋付きベッドで目覚めた俺に、ジェミニが無機質な声を浴びせる。
視界には、世界中の王族、貴族、あるいは高ランク探索者たちから届いた「個人的な悩み(魔力暴走)」のリストが、滝のように流れ落ちていた。
「三千件……? 鑑定士の時より忙しくなってないか、これ」
「……ダメ、ですよ。カイト様。今日は、私と、訓練をする日……のはずです」
右側から、シャツ一枚のリンが俺の腰にしがみつき、寝ぼけ眼で抗議してくる。
彼女の指先が、俺の腹筋をなぞるように動き、そこから微弱な魔力が流れ込んでくる。朝から「最適化」をねだる、可愛い女騎士の甘えだ。
「いいえ! 今日こそは、私と新拠点の『内見』を進める予定でしたわ! カイト様、その不埒な依頼リストなど、すべてジェミニに削除させてしまいなさい!」
左側からは、セシリアが俺の肩を抱き寄せ、その豊かな双丘をこれでもかと押し付けてくる。
王女としての威厳はどこへやら、今の彼女は俺という名の魔力供給源を、他の誰にも触れさせたくない一人の恋する乙女だった。
『マスター。推奨事項です。依頼の中には、隣国の「女将軍」や、極東の「巫女姫」など、非常に希少なステータスを持つ個体が含まれています。……彼女たちを治療し、ネットワークに組み込むことは、世界樹の防衛力を最大化する最適解です』
「ジェミニ、お前……これ以上ヒロインが増えたら、俺の腰が物理的に砕けるぞ」
「……ふふ、カイト様。腰のケアなら、聖女である私にお任せください。……ただし、治療の後には、相応の『お返し』をいただきますけれど?」
足元から這い上がってきたのは、クラリスだ。彼女は俺の足を自分の胸元に引き寄せ、恍惚とした表情で俺を見上げている。
聖女の仮面を脱ぎ捨てた彼女の愛欲は、この四人の中でも最も深く、そして底知れない。
「あの……ますたぁ。私も、ますたぁの『鑑定』、受けたい……です」
そして俺の胸の上には、エマ。世界樹の精霊姫である彼女は、俺の魔力を直接受け取ることが「世界樹の栄養」になるとジェミニに吹き込まれたらしく、隙あらば俺の心臓付近に耳を当てて、ドクドクと流れる魔力の音を聞こうとする。
四人の美女の吐息、柔らかな肌の感触、そして三千件を超える美女からの依頼。
まさに「ハーレムの臨界点」だ。
『緊急警報。……マスター、冗談を言っている場合ではなくなりました。……依頼主の一人、北方の氷結大国を統べる「氷の女王」が、待ちきれずに自ら軍勢を率いて、世界樹の結界付近まで到達しました。……彼女の魔力は、今まさに限界。……放出場所を探して暴走寸前です』
「……自ら来ちゃったのかよ!」
窓の外を見ると、世界樹の黄金の結界に、氷の槍が降り注いでいた。
凄まじい魔力の衝突音が響き渡り、神殿全体がガタガタと震える。
「……私のカイト様に、なんて失礼な真似を……っ。リン、行きますわよ!」
「ええ、セシリア様。カイト様の『治療枠』を強引に奪おうとする輩は、私が切り伏せます!」
嫉妬に燃えるリンとセシリアが、俺のシャツを脱ぎ捨て(!)自らの装備を瞬時に展開する。
彼女たちは「カイト様の治療」という至福を奪われることに対して、かつてないほどの好戦的な魔力を放っていた。
『鑑定詳細を表示。対象:氷の女王。……彼女の魔力溜まりは、その氷のドレスの下――【背中から臀部】にかけての広範囲に及んでいます。……マスター、彼女を大人しくさせるには、その広大な範囲を、あなたの両手で直接マッサージするようにして浄化する必要がありますね』
「……またそのパターンか」
「……ますたぁ、私も、お供します。……その女王様も、私の家族に、なるの……?」
エマの純粋すぎる問いかけに、俺は答えられなかった。
「よし、ジェミニ! 全員転送だ! 氷の女王だろうが何だろうが、俺の『鑑定』で、その冷え切った体も心も、熱々に最適化してやる!」
俺は四人の美女を引き連れ、光の中に飛び込んだ。
王都を追放されたあの日、俺を待っていたのは孤独な死だと思っていた。
だが今、俺の前には、俺の魔力を渇望する世界中の美女たちが列をなしている。
嫉妬の炎を燃やすヒロインたちと、暴走する氷の女王。
世界樹を舞台にした俺の逆転ハーレム無双は、いまや「一国の問題」から「世界規模の愛憎劇」へと、さらなる最適化を遂げていく。
「カイト様! 治療の際は、私も必ず『密着』して監視しますからね!」
「わ、私もですわ! 王女として、不埒な接触がないか見極める義務がありますもの!」
背後で騒ぐヒロインたちの声を聞きながら、俺は新たな「治療(お色気イベント)」の予感に、少しだけ腰の心配を深めるのだった。




