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俺と君は結ばれなかった【2000文字】

作者: 有梨束
掲載日:2026/02/08

彼女が自殺した。

それはどうやら俺のせいらしい。

彼女の実家に行ったら、彼女の父親にそう言われた。


『玲央くんごめんなさい』というメモだけが、彼女の家に残ってあったそうだ。


俺は頭ごなしに怒鳴られて、二度と来るなと言われた。

線香もあげさせてもらえなかった。

家の前でずっと靴の先を見ていたから、柚那が「玲央くんはちょっとパパに似てる」って言っていたその人の顔も、ちゃんと見なかったな…。


何日も考えたけれど、柚那が自殺に至った理由が思いつかなかった。

そこまで何か柚那を傷つけるようなことをしてしまったんだろうか。

むしろ上手くいっていたと思っていた。

もうすぐ付き合って1年半、大きな喧嘩も特にした事がない。

来年も、その先もずっと一緒にいると思っていた。

…そりゃ、ここ1ヶ月くらい会えてなかったけど。

柚那が忙しくて、そういう時はお互い放っておいてほしいタイプだったから、気にしていなかった。


柚那は6つ下で、最初に会った時は妹みたいな子だと思った。

実際に俺には兄弟がいないからわかんないけど、その距離感が居心地いいなと思った。

俺は母子家庭で、柚那は両親に溺愛されて育った子だったから、多少の育ちの違いはあった。

柚那はまっすぐな子で、俺はこの子に見合う人になろうと思わされることも多かった。

それでも一緒にいるのは楽しかったし、変なところはよく似ていた。

笑いのツボとか、許せるものとそうでないものなんかは、かなり似ていた。

あとは耳の形がそっくりで、柚那はよく俺の耳を触っては「お揃い〜」とはしゃいでいた。

それが可愛くて、大好きな瞬間だった。


俺は柚那がこの世からいなくなったことが信じられないままで、落ち込めなかった。

なんで柚那は消えることを選んだんだろうか。

そのことだけが頭をぐるぐるして、気づいたら柚那の友達に片っ端から会っていった。


「3日前に会った時、様子がおかしかったんです」

柚那の親友の友恵ちゃんは、そう言って険しい顔をしていた。

頼んだコーヒーの氷が、カランと鳴った。

「おかしかったって…?」

「思い詰めた顔をして、白い封筒を持っていたんです」

「封筒?」

「それで、『怖いけど、見ないとダメなのって』」

「それ、中身が何だったかはわかる?」

友恵ちゃんは静かに首を振って、赤い目で俺を見た。

「わかんない。でも、『思い違いだったらそれでいいの。そしたら玲央くんとずっと一緒にいられるから』とも言ってて…」

「俺…?」

「『今は勇気が欲しい』って」

なんだ、勇気のいる、俺に関係あることって。

ずっと一緒にいるために必要なことなんて、柚那がいてくれる以外に何かあったのか?

そういえば、前に何か調べ物をしてたな。

「柚那、病気だったんですかね…?」

「え?」

「だって、あんな顔で、あのよくわかんない封筒を見てて、他に思いつかなくて…」

「何かの検査結果だったってこと?」

「病気だったら、玲央さんとのこと考え直しそうじゃないですか、柚那なら」

もし本当にそうだったとしたら、柚那は俺から離れることも選択肢に入れそうだと、俺も思う。

でも──。

「死ぬまでのことだったのか…?」

俺のポツリと零れた疑問に、友恵ちゃんの目からは涙が落ちた。


『好きになっちゃったから、恋愛対象として見て欲しいのっ』

『誕生日おめでとう!生まれてきてくれてありがとう!』

『気になったきっかけは、パパに声が似てる気がして』

『私と玲央くんって、鼻の形も似ている。なんかニヤけちゃうね』

『ずっと一緒にいてね、玲央くん!』

柚那を思い出しながら、俺は寝そべっていた。

病気だったとして、俺がそれを理由に別れる訳がないことは柚那だって想像しただろうに。

それに『思い違い』って言葉が引っかかっている。

柚那…、柚那の事なのにわかんないよ…。

『小さい頃パパと結婚するって言ってたんだよ。玲央くん似てるから、ある意味叶っちゃうかも』

そう言って笑っていた柚那が頭を過って、急に何かが結びついた気がした。

突拍子もなさすぎる、だけど、柚那と俺は変なところが似ている。

柚那も同じように考えたんだとしたら…。

俺は駆け付けるみたいに洗面所に向かった。

ヘアブラシには、柚那の髪の毛が残っている。

まさかな…。


DNA検査の結果、俺と柚那は『異母兄妹』だった。

俺の母親は未婚の母で、当時付き合っていた男に子どもが出来たと言ったら、堕ろせと迫られ、最終的に母の前からいなくなったそうだ。

母は、俺を産んだ。

そんな馬鹿げた話の末路が、俺と柚那だった。


俺はもう一度柚那の実家に行って、その検査結果を柚那の父親に見せてやった。

あとから知ったことだが、柚那の家には、ぐしゃぐしゃになった父親の若い頃の写真が落ちていたそうだ。

泣き崩れるそいつを見て、『こいつが父親なんだとしたら、俺と柚那は似てないな』とぼんやり思った。

俺が先に知ればよかった。

そしたら柚那に知られることなく、この世からいなくなってみせたのに。

俺はようやく涙が出た。



お読みくださりありがとうございました! 毎日投稿39日目。

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