5話 落ちこぼれ記者と危険なタバコ男《デンジャーホットマン》
西浦大臣を追うとスライムらしき物を見つけた飯田庵佐。西浦大臣を見失い警察に連絡しようとする。
戸惑いながらも、僕は震える指で動画を止めて、すぐに警察を呼ぼうした。
無機質な空間の中、西浦大臣はここにいるはずだった。だがこの空間には一つも大臣の痕跡なんてない。あるのは空から降ってくる雨を吸収するスライムのような物体だけ。
「ここから出る方法は一応外から出る方法があるのか。」
僕は雨雲を見つめた。天井は空いているので、そこを猛スピードで登れば不可能ではない。僕の仮説とは違うので天井説を否定したいが、ヘリコプターの音が聞こえる以上、ヘリで逃げた可能性もあるので否定できない。
ただ僕の仮説は相当な自信がある。仮説のことを深く考えていたら30秒程度考え込んでしまった。早く警察を呼ばないと。
「ここに西浦大臣が逃げ込んだという情報が来たんですが。」
目の前に現れたのは5人程の警察。階段の一番上で止まったまま、4人の警察を指で動かしながら1人の警察が僕を呼び寄せる。
どうしてここに警察が来たんだ?僕はまだ警察を呼んでいないぞ?困惑は更に強まっていく。だがここは冷静になって話を聞くしかない。
「誰から通報が」
「分かりません、ここには何もないみたいですね、失踪したみたいだ。何もないよな?」
「「「「はい」」」」
上司と思われる僕の目の前の警官が無表情、無感情の機械のような言葉で部下たちは反応する。僕は隅々まで目の前の警官を見る。
濡れていない。この大雨の中、階段を登ってここに来るには外を通らないと行けない。傘も持っていないのに、、、まるでこの中で待機していたみたいだ。
「でも待ってください!何もないわけないですよ!!」
僕はさっき見せた映像に写っているスライムらしき物を見せた。
「おい、お前らあるか?」
「な」「な」「な」「な」
「なが四個でな4、なしみたいなんで。見間違えじゃありませんかね?あ、見つけた。」
警官の指の先にあるのは確かにさっきのスライムみたいなものと似ている。
「水で膨らむボールですね。」
だけど僕は絶対にスライムだという確信を覆せない。
「スライムですよ!現実にあったら良くないですか!」
僕は購入特典のスライムを見せる。
「バッグ深くないですか?なんで縦に1mくらい?」
「いいんですよ!見てこの子!かわいいでしょ!」
警官5人全員が僕の周りを囲っている。
「かわいいけど、、、現実には」
「な」「な」「な」「な」「な」
「なが四個で、な4、なしです」
「なが四個と一個でな4な、なしなの方が良くないですか?」
「って話があったんだよ!!」
「うん、うん、いい話だねー。」
マスターはどう考えても話を聞いていない。僕はとりあえずバーに戻ってきた。とりあえず心を落ち着かせることにする。
するとマスターが突然僕の椅子を回転させた。
「あ、お前の先輩呼んだいたぞ!」
「よっ、飯田!今の話聞いてたぞ!」
目の前にいたのは小山先輩だった。だが何か違う。
「小山先輩、、、なんか臭くないですか?」
普段の小山先輩とは違って少し臭いを感じる。
「あれ、先輩って電子タバコでしたよね。電子ってこんな感じでしたっけ。」
「ほらこれ!」
小山先輩の近くから小山先輩のマフラーが投げられる。
「うん、こんな感じが電子のやつです。」
「だってよ、小山先輩さん。後輩はあなたのこと臭くないってよ。」
小山先輩の隣には初めて見る人がいる。この人がマフラーを投げたのか。そしてどうやらこの男性が吸っているタバコが臭いの原因のようだ。
僕はとりあえず立ち上がってその男性の近くに行く。
「もう落ちかけてますよ。」
僕はそう言葉をかける。
「おい、何すんだ!」
戸惑う男性。
「飯田!何外出ようとしてんだ!」
カラン
ザー
カラン
「いやー、雨で消せましたね。」
僕がそういうと男性は一瞬睨みを効かせた後にすぐに優しい目に切り替えた。
「消せてよかったですね。まあ、また付けるんですけどね。雨が止むか、俺のタバコが尽きるか、やるか?」
流石に怒らせてしまった。コミュニケーションを間違ってしまったな。ちょっとインパクトのあるくらいがいいと思っていたんだが。
それにしても雰囲気がある男性だ。184cmほどの身長でフードを付けたパーカー。先ほどの警察のような体つきをしている。フードは被らずにハンチング帽をかぶっている。そんな男性がこちらを見る。だが、その目は僕の方を向いているようで、他の何かに向いている。そんな、何か異質な空気を纏っている。
「小山、俺忙しいんだよ?秋葉原の近くのバーで飲食する金もあいにく持ち合わせてないし。」
男性は今度は小山先輩の方を向いて睨む。
「こいつが飯田だよ。」
小山先輩は僕のことを説明していたのか。
「あの飯田か!おーおー、よろしく、それとさようなら。バイバイの方がお前にはあってるか、子供みたいだしな。記者クラブ出禁でしょ?この言葉の並び初めて見たよ!」
なんだこの人は、失礼だな。怒らせてしまったとはいえここまでするか?
ならこっちもアレをするしかない。
「あの、僕これでも太輪新聞の記者ですよ!ほら名刺!」
「そうか、これ本物だね。うわー、そんな感じに見えない!」
「年齢みたいに言わないでー」
マスターが僕のセリフを横取りした。言ったところでメリットはないのに。
「それに奇遇、俺もね、お揃い。」
男性から手渡されたのはしわくちゃな太輪新聞の名刺だった。手は大きいが潰したわけではない。
「しらまつ、れいし?」
「そうなの、白松嶺士。記者なの。その名刺昔の、今の名刺はこっちなんだけどね。」
「週刊ラッキーラバーズ?」
見たこともない雑誌の名前が書いてある。
困惑していたら小山先輩が僕に対して急に仕事モードでこう言い放つ。
「飯田、お前大臣の失踪事件追え。」
僕は急な言葉に戸惑う。だが気になっている、不思議なところが多くあるし。だから頷いた。
「ひとまずコラムはその仮説をテーマにしろ。そして今すぐ書きたいなら、ラッキーラバーズ行け。」
僕の仮説をコラムにしろ、ということか。
「僕書きます!コラムのテーマは、
この失踪事件は異世界が関わっている。」
ぜひ評価よろしくお願いします!