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4話 落ちこぼれ記者と失踪事件《ノーヒューマン》

逃走した西浦大臣が飯田庵佐行きつけのバーに来た。西浦大臣との初対面どうなる?そして西浦大臣はどこにいくのか。

 今空席を二つ挟んで座っているのは他でもない、会見から逃走した西浦大臣だ。高級な服と時計をつけた西浦大臣から放たれるオーラに僕は恐れている。そのはずなのに僕は咄嗟にスマホカメラで撮影しようとしている。息をしていなかった記者魂が僕の中で起きるのを感じた。


「ここらへん、記者は通らなかったか?」

やはり大臣は記者から逃げている。何の理由かはわからない。

「そこにいるの太輪新聞の記者っすよ!」


 詰んだ。密告END?いや密告じゃないな、天然暴露ENDか。流石にマスターにさっき説明したからわかっているとは思っていたが。そういえばマスターってバーテンダーの経験があったと思う。やはり3Bの職業は恋愛的な意味じゃなくてもやばい男が多いのだろう。


暗い店内に静寂が走る。もし逃げられたらどうするのか。そこまで考えていない。だけど、僕は今興奮している。何が起こっても、僕は足を進めて追いかける!


「そんなわけなくね?」

大臣とは思えないほどの軽い口ぶり。だが僕の固有スキル、太輪新聞の記者に見られない、は上位職業政治家にも効くのか。

「もしここに記者が来たら、俺を捕まえるなら俺は死んでやると伝えとけ!!」

急に怖いことを言うな。そこまでして追われたくない理由があるのか。


大臣の言葉で何か気づいたようにマスターはすぐにさっきの発言を訂正した。もう遅いけど僕のスキルのおかげで助かった。


 大臣は体を乗り出しながら店の奥をじっくりと見ている。大臣は奥を指を差しながら

「裏口はどこだ!」

と強い口調でマスターに問い詰めた。普段のおっとりとした西浦大臣の姿からは想像もつかない、焦りを感じる口調だった。


マスターが裏口を伝えると大臣は出されたドリンクを一口も飲まず

「この財布の中身全部貰ってくれ!あとこの中身のものは全部処分しろ!早急に!」

とまた強い口調で命令を強いる。僕は強い口調に困惑しながらも、バレないようにすぐに追いかける準備をした。


だが、大臣は裏口から出ようとした瞬間

「ここから先は、カメラはないんだろ!」

とまた強い口調になった。何から逃げているかはわからないが、相当危険なんだろう。マスターはその発言に素早く頷いた。


ガチャ


「ほんとごめん!!!庵の話途中で思い出した!」

大臣が出ていってすぐに僕の方に駆け寄って謝罪してきた。そこまで怒ってはいないから許すが、僕じゃなかったら大問題だ。


だがマスターはすぐに頭を上げにやけた顔で僕の方を向いた。

「今から追跡するんだろ。これとこれ持ってけ!どうせ持ってないだろ?」

そう言うとすぐに傘と帽子とマスクを持たせてきた。

「マスター!!!!」

僕はあまりの感動で心が熱くなってくる。

「それとこれ!どうせお前やってないだろ!」

今度はさっきの西浦大臣との会話を録音した音声を聴かせてきた。


でも感謝と同時に自分の無能さを実感する。どうしてこんなこともできないんだ、僕は。追跡に必要な道具も揃えずに、録音もせずに。


「おい!早く追えよ!いっつも俺のマスターとしての仕事姿ばっか見せただろ?今度はお前が見せろ!」


今クヨクヨする場合じゃない。僕は目の前にあるものを全部バッグに詰め込んで、裏口を飛び出る。


「マスターありがと!あとでまた戻るよ!」


ガチャ



 裏口を出た僕は一方通行の道を辿る。ザーザー降る雨で視界が悪い。大臣は傘も持たずに出ていったことや焦りようから何かを隠している。その真実を掴むために雨の中を進むしかない。



裏口に入る道はあるが、そこまで人はいない。まあだから逃走経路に選んだんだろう。


そう思い視界が悪い中突き進むと何かに当たった。

「何で行き止まりなんだよ!」

目の前には段ボールが大量に積まれている。発注をやらかしたんだろうな。だが隙間から奥の光景が見える。段ボールは雨で濡れているし、柔らかい。大臣もここを通ったなら一つしか選択肢はない。


「まあ吹き飛ばすまでだ!」

僕は貧弱な体でタックルをする。骨が折れても記者魂は消え

「痛!!!」

何故か中身が入っていたせいでめちゃくちゃ痛い。だがやはり段ボールの奥には道があった。そしてそこには秋葉原にあるとは思えないホームレス街が広がっていた。


「5000ポイント!」

と急に聞こえてきた。僕が倒した数に応じてポイントを言っているのだろうが、これいるのか?と思っているとホームレス街からホームレスの男性が数人出てきて段ボールを組み直している。僕は気になるので聞いてみることにした。


「5000ポイントって何ですか?」

そう言うとホームレスの中の一人が気になる言葉を吐いた。

「5000ポイントはさっきもいたな。高そうな服着た奴だったな。あいつ階段降りて何のためかわからない通路入っていったな。」


おそらくその話の男性は西浦大臣だ。そうと決まれば駆け抜けるしかない。


コンクリートで作られた地面を滑りそうになりながら駆け抜けていく。そして今度はカメラを回す。二度も間違いはしない!階段を降りだ僕の目の前にはゆっくりと進む西浦大臣がいた。


「誰かいるか!!」

トンネルのようになっている通路内は声がとても響く。バレないように背中を追う。


さっきの口ぶりから本当に捕まえようとしたら死ぬつもりだ。ちょうどいいところで大臣を捕まえる。そう思ってタイミングを見計らったが何故か木や草が生えていたり、蜘蛛の巣もあり、迂闊に攻めることはできなかった。


いくつかの曲がり道を進んでいく今度は地上に上がる階段があった。


「この先か!」

西浦大臣はそう言うと素早く駆け上がる。この先、と言うことは到着地。おそらく僕が捕まえようとしても死なずに進むはず。ならここしかない!僕はそう思い大臣を追いかける。


「階段なら僕は捕まえられる!」

僕は全速力で大臣を追いかける。しかし大臣は驚きながらも僕にコンクリートの破片を投げつける。足を怯ませた僕は転がり落ちてしまった。


激しい痛みで立ち上がることができない。だが真実を追う今の僕が好きだ。だから立ち上がる。


「待って!!」

目の前には大臣はいないがまだ大臣は階段の上にはず。そう思って階段を登る。




「何も、ない?」

階段を登りたどり着いたのは雨が降りしきる何もない場所。ただ広がるコンクリートの場所。天井以外逃げ道がないそんな場所。


建物もない、生き物もいない、そしていたはずの西浦大臣もいない。


カメラを何度確認しても西浦大臣はここを必死に登っているはずなのに。困惑しながらも僕はカメラを回しながら手がかりを探す。




「何だ?これ。」

この場所にはこれ以外何もない。それにこれには見覚えがある。だがこれは何かおかしい。僕はバックの中からこれと同じだと思われるものを取り出した。


「これ、同じだよな?でも違う。僕が持っている方は雨に打たれて何も反応しないのに、落ちている方は雨を吸収して大きくなっている。



これ、本物のスライムじゃないか?」


僕は夢の異世界に近づいた。だがそれ以上に西浦大臣の失踪に潜む闇に近づいたのかもしれない。





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