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3話 落ちこぼれ記者と偶然の好機《ハイランクラッキー》

コラムを書かなければクビの飯田庵佐。彼はとある人物の会見での逃走により太輪新聞はその人物を追うことになったが呼ばれなかった。悲しい思いをする現在鰻屋にいる飯田庵佐。味は美味しいらしい。

 僕は鰻を熱が冷めないうちに食べ進めた。好きだから熱いうちに食べて口の中を火傷させたわけじゃない。そんなフェチない。僕の固有スキルの太輪新聞の記者に見られない、によって僕が太輪新聞だと言っても信じられなかったせいでこんな羽目になってしまった。隣に大声で取材してた西岡がいたのに、僕はどれだけスキルレベルだが高いんだろうか。


水のおかわりを大量にして口の中を冷やして会計をする。元は取材する西岡の分だけしか頼んでいないので鰻代が経費で落ちたことはいいが、先輩を連れてくるのに鰻を食べさせないのは流石に舐めていると言わざるを得ない。


 車を回して社内に戻る。部署に戻るとそこにいたのは先ほどのメールで帰っていいと言われた3人だけだった。僕が入社してからこんなにも閑散とした社内は見たことがない。それに加えて僕含めてここにいるのはクビ候補だと考えればより心にくるものがある。


心にくるものはあるし、クビ候補だからこそクビ候補同士で手を取るのが大切なのかもしれないが、僕にはできなかった。会社に残るために帰っていいのに必死に記事を書いている3人と比べて帰ろうとしている僕は根本的に何か違う。クビになるのは辛いが、それが正しい道なのかもしれない。


だが暗い気持ちになってはいけない。クビになるかもしれないがそれまでにやる仕事はやる。まずは部長から言われたコラムを書くことが大事。切り替えなければいけない。


 なら切り替えるために、

「あの予約してた、アルスちゃんのスライムと共同生活異世界転移記!!アニメ10周年コンプリートボックス買いにきました!」

元気にオタ活だ!僕は秋葉原に来た!なんと僕がオタクになるきっかけになったアルイセのDVDコンプリートボックスが出たのだ。アルイセに出会ったのは小学生の頃だがアニメ化されたのは18歳の頃。僕にとっては10周年のコンプリートではなく、ほぼ20年コンプリートと言ってもいい。


「予約されてた方ですね。こちら店舗特典になります。あとあなたが一番最初にこの商品を買われた方なんですよ!」


嬉しい。本当は仕事をしていたはずだが僕の日々の失態のせいで仕事をしなくて良くなった。そのおかげでこんなに嬉しい気持ちになれた。正直さっきまで暗い気持ちだったが車を回して店に向かっている最中は、ワンチャン一番乗りじゃね?と思っていた。


僕の後ろに並んでいるスーツの男性が少し落ち込んでいるようだ。彼も一番乗りだと思ったのだろう。だが僕の勝ちである。


「あの、仕事に戻らないといけないんで早く退いてもらえます?」



 「負けちゃったよーーー!!!!なんで、なんで、あの人よく見たらめちゃくちゃ高い時計だったー!!」

一瞬にして気分が落ちてしまった。僕はその気持ちを吐き出すために行きつけのバーに昼間から行くことにした。昼間から開いているというよりかはマスターがアニメをリアタイするために昼間だけやっている。バーとして致命的な気がするがマスターは楽しそうだからいい。

「いや、高い時計の方がいいのか。と俺は思うんだよ!このタペストリー見ろよ!」

そう言って僕のもらったタペストリーを指差す。

「アルスは確かに胸大きかったけど、ここまでする必要ないだろ!」

確かにとても大きい。僕が小学生の頃は相棒のスライムと同サイズなのに気づけば倍になっている。


「こんなの、こんなの、僕の知っているアルスじゃない!!!」

「だよな!こっちの特典のスライム見ろよ!質感も素晴らしいし!もうこっちの方がいいよな!アルスの胸には惹かれない!俺はスライムの方が好きだよ!今の胸なら!」

二人だけしかいないバーで僕はアルスの胸に不満を漏らし続けた。


「それで、なんで今日は仕事があるのにここにいるんだ?」


僕はマスターに事の経緯を最初から話した。マスターは神妙な面持ちをしながら洗い物をしている。

「ある人を追って、でもお前は追わなくていいと判断されたのか。」



どちらからも話しかけられない空気が漂っている。だが元はといえば僕が無能なのが悪い。ここは勇気を出して話しかけることにした。

「あ、あのさっ!」

チリンチリン


「ここに変な奴はいるか?」

誰か客が来た。威圧感のある声はどこかで聞き覚えがある。僕はタペストリーをすぐに隠した。


そして僕の視界にその人は入った。

「あんた、西浦大臣ですか?」


西浦大臣。現在会見から逃走した大臣。



そして、今太輪新聞が追っている人物である。


僕は咄嗟に感じた。追わなくても言いと言われた。でも追わなければいけない。そんな記者魂を。



 

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