?4話 人形の娘とNOT落ちこぼれ記者
舞子は人形になった母親が完全に人形になる前に力をつけようとしていた。
「おりゃあっ!!」
「まだ木は倒れてないよ、舞子ちゃん。」
いつものように私は慣れない訓練をしていた。森の中にある立派な大木を倒すという訓練を。
私の能力じゃ人の嘘を見抜くことくらいしかできない。先頭に向いていない能力だけど、戦わないといけない。
「お母さんを元に戻すためには、そいつを倒して能力を使えない状態にすればいい。殺さんでも、ある程度の力がありゃあいけるよ。まあ俺が言っても説得力ないか。この木はやめる?ちょっと弱い木生やそうか?」
木を生やすなんて私のやろうとしていることの正反対の能力を持っている久兎が私の指導をしてくれている。
私より身長は高いけど、手は小枝ぐらい細い。野球のキャップを被っている気弱そうな青年。そんな人でさえ大木はすぐに倒せるようになった。
ただ私は彼よりも早く異世界に来たのに、いまだに葉っぱを数枚しか落とせない。怪物だって相手が弱くないと倒せない。
でも自分の能力が戦闘向きじゃないからと甘えてはいけない。元の世界に戻れば頼れる人はいない。父親から逃げようとした結果、私は異世界に来た。だからもう頼らない。
「おい、舞子!!!」
トイはいつものように音もせずにそこに立っていた。いつ来たのかわからない。
トイは仮面をつけているからなのか、いっつも息を荒げているが、今日は一段と荒く、声が一つも聞こえない。
「おりゃあ!!!!!」
バサアッ!!!
「ありがとう、久兎。いっぱい木を生やしてくれたおかげで空気が綺麗になったよ。」
いいのか悪いのかわからないが、ひとまず木を大量に生やしたおかげでトイの荒い呼吸がすっかり元に戻った。だけど今度は葉っぱが私たちの目の前に何百枚も落ちてくるせいで、まともに顔が見れない。
葉っぱの雨は当分はやまないみたいなので、諦めてトイは話し出した。
「舞子、この新聞を桜が見つけたみたいなんだ。」
トイは新聞を差し出したみたいだけど、葉っぱの雪崩に耐えられず、どこかに紛れてしまったみたい。
「もううるさいな、葉っぱが!いいや、もう口で話す。もう10月だぞ!舞子、お母さんが完全に人形になるのはいつだ。」
「10月30日...でしょ舞子ちゃん。トイ急がないとまずいよ。」
「嘘!!!」
ファサッ
私は葉っぱの山を全力で蹴った。でも舞ったのはせいぜい数枚。
その葉っぱも次々と木から落ちる葉っぱに紛れて区別はつかなかった。




