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23話 落ちこぼれ記者と未知の大男《ワンダービッグマン》

謎の大男が入ってきた!飯田庵佐はこの男に何をされるのか。

 病室に入ってきた大男。ドアの縁に頭を掠めていたが、慣れているのか何の気にもとめていない様子。それに横幅が扉と同じサイズ、というかそれ以上だ。


「僕に何しようとしてるんですか!?」

そんな大男から厳しい視線が向けられている。スキンヘッドにサングラス、黒いスーツに身を包んでいる。絶対裏の筋の人間だ。間違いない。


「...こいつが誘拐犯ですか。許せない!!!!!」

・・・まともな人だ。ちゃんと犯罪者に対して怒りを滲ませている。握り拳から血が溢れている。あれで僕潰されるのかな?


「僕やってないですよ!!!本当にやってないです!やっっ!!」

僕のお腹にサングラスが投げつけられた。これ本当にサングラスなのか?重い拳が入れられたとしか思えない。

「俺はトレーニングのために重いグラサンをしてるんだ。」

そんなトレーニングがあるのか?おかしいと指摘しようと思ったが、真剣な瞳をしている。本当なんだ。

「飯田くん。反発して怒らせないほうがいい。彼は特殊な人材なんだ。いいかい?別に君を殺すと言ってるわけじゃない。出所後はある程度まともな仕事に就いてもらう。OK?認めようか。」


 その威圧感に僕は圧倒している。二人の圧が僕をこのベッドに押し付けている。立ちあがろうとしても負けることは目に見えている。


ならスマホを奪うしかない。おそらく認めればスマホの音声を切り取られて、不都合な部分を除いて聴かれてしまう。


だがスマホを奪って僕が誘拐犯じゃないことを証明すれば大男が味方になるかもしれない。どうやって奪えばいいんだ?簡単には渡すはずがないだろうし、強引に奪うのも難しい。


「グラサンを返してもらうよ。・・・俺これ終わったら何食べようかな...」

・・・スマホを奪う方法、か。僕は一つ違和感なくスマホが彼の手から離れる瞬間を思いついた。


「すいません!僕食べたいものがあるんで電話していいですか!」

「いいけど、どの店?私が電話するよ。」

「いや、番号で電話するしかなくて!あと他人に漏らしちゃいけないんですよ!」

これでスマホをもらえる!僕は心の中で腹を抱えて笑った。勝利宣言を考えながら、スマホをもらうのを待っていた。


「・・・はい、これ。ちゃんとお店の人に電話してるのがわかるようにスピーカーにしてね。」

渡されたのは見慣れたものだった。僕のスマホ。

「早くしてよ。」


誰か頼れる人に電話して、でもスピーカーだしなあ。


僕は一人だけいる気がした。暇で、でも度胸がありそうな人を。割と身長も高い。


白松さんなら何とかなる気がした。

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