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21話 落ちこぼれ記者と人を人形にする男《ドールメーカーマン》

まさかの光を見出した庵佐。ただ今は話を聞くしかない。なぜ舞子の母は人形になったのか。

 もしさっきの音声を撮っているとして、その音声をぶちまければ僕はここから解放される。この闇の中から出ることができる。

そして一番は舞子ちゃんだ。長年の苦しみから、ついに。


なら尚更今は耐えなければならない。僕はベッドの下から一歩も動かない覚悟を固く決めた。


「刑務所に行った時の音声があるから一緒に聞こうか。」

―――――――

「本日はこんな場所に出向いていただき、ありがとうございます!ほら、挨拶してくださいよ!」

 若い男性の声がする。やけに丁寧、ということはこの人じゃない。おそらく刑務官かな。

「・・・別にこれやったとこで刑期は縮まないんだろ?なら帰らせてくれよ。」

また別の男性の声。だけど今度は何か違う気配を感じる。この男が、人を人形にする男?

ドンッ!

「おいおい!何やんだよ!!そこの美しい人に何かすんのかよ!!混ぜてくれよ!」

ドアが開く音、今度は複数の男たちの声がする。でもこれから何が起こるのかを理解していない、軽い声。多分廊下でたまたま通りかかった受刑者たち。


「すいません!大下さん!!皆さん、早く戻ってください!!」

刑務官がはっきりとした声で注意をする。数秒間のドタバタ音の後、すっかり静かになった。


「・・・何をするんですか?」

震えた声。これがさっき言っていた、怯える妻の声。何をされるかわからない恐怖が声だけで伝わってくる。この後起こる悲劇を知っていれば、声すら出せなかったかもしれない。


「本当にされるんですか、大下刑事部長。」

この人って刑事部長だったのか!!なんて驚いたけど、刑事部長ってすごいよね。記者なのにあんまり詳しくないんだよな、僕。

「君に聞かせてくれ。この力は本当なのかい?」

「ああ本当だよ!!疑ってんじゃねえよ!!」

「西岡くん。君はこの力を悪用したよね?いくつか、被害に関する情報も届いている。」

この瞬間、他にも被害者がいることを僕は知った。他に被害者がいるなら、なぜこの男の情報は流出しなかったんだ?

「・・・俺が言えんのはこの力は異世界で得た、それだけ。」

異世界!!!!喜ぶべきではないけど、また異世界に関する手がかりを得れるかも知れない。異世界を証明して、行った人を調べればその人の力を悪用できないようにできるかも知れない。


「はぁはぁ、はぁはぁ。」

さっきの舞子ちゃんのように呼吸が荒くなっている。おそらくお母さんだ。

「本当にやるんですか!それもすぐに症状が出るように!」

「ああ、やってくれ。」

「お水飲みましょう!」

またドタバタ音が聞こえる。刑務官の人が慌てている。この状況でただ一人知らないとなれば舞子ちゃんのお母さんは余計に怖くなるだろうな。

「・・・じゃあ、やるよ。」

バァン!!


椅子が蹴られる音。人形にする男がそうして立ち上がった。音だけしかわからないが、近づく足音から逃げたくなる。この音が近づかなければ、救われたはずなのに。


足音が止まった。ピタッと、何の音もしない。


「さっき俺の背後で騒いでたあいつらいたよな。あそこの扉を見ろ。水を飲み干したらまた俺は喋るぞ。」」

「はぁはぁ、、、はい。」

ゴクッゴクッ


静かだから水を飲む音が響いている。ここで遅延行為をして、拒否していれば帰れたかも知れないと思ったが、この夫はそれを許さなかっただろう。

「飲みま」

「じゃあ。」

パァン!


何かを叩く音が響き渡る。頭って感じじゃないし、背中かな。

「・・・この人形を見せてやる。」

「あの受刑者のかい?おい、妻はまだ人形になってないぞ。」

机に何かが置かれた音がした。おそらくそれは人だった物。まだ人形になっていない?舞子ちゃんは確かに人形になったと言っていた。やっぱり比喩だったのか?でもそれなら今置いた人形は何なのか。


「・・・この子嫌い。」

―――――――

そこで音声は途切れた。でも声に聞き覚えはあった。この声。


「私の妻の声だ。私はもう撮る意味がないと思って音声を切った。だがその直前、妻は喋り出した。」

やっぱり舞子ちゃんのお母さんだ。


「私の妻は徐々に人形になっていった。この時はまだ心だけが人形となっている状態だ。ただ、舞子が失踪する前ぐらいはもう体も人形になっていた。後少しすれば完全に人形になり、死の可能性もある。この力が異世界由来かも知れないと私は思った。」

だから異世界を信じているのか。


「私は解除の方法をこの後聞いた。殺せば解除されるらしい。私も刑事だ。悪用される前に殺そうと思ったさ。」

だから舞子ちゃんはすぐに帰りたがっていたんだ。異世界の時間がわからないから、新聞で初めてこっちの日にちを知ったから慌てて。


 僕は嫌な予感がした。母が人形になって、舞子ちゃんが失踪するまでの間。その間に犯人を殺していれば、戻っているはず。でも舞子ちゃんはそんなことを言っていない。それにこの人も、今もまだ人形になっているということで話している。


「・・・犯人は脱獄した。」

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