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21話 落ちこぼれ記者とベッドの下《アンダーベッド》

飯田庵佐と舞子の父。倒れた舞子に対し何の興味もないと吐き捨てる父親。舞子が失踪する前に救えなかったと後悔する庵佐。彼は舞子を救えるのか。

「少し熱くなってしまったね。まあ私は異世界について、そんな悪感情を抱いているわけだが。」

 さっきまでの熱気はどこかに消え去り、すっかり冷静になった。しかし僕はまだ熱気に体を焼かれている。もうすぐ冬になろうかと言う10月にしては暑い。早く水を飲みたいが、ベッドの下から出るわけにはいかない。


「一個借りができてしまった。」

借り?

「偶然とはいえ、君と言う生贄を提供してくれた太輪新聞には感謝だよ。あいにく今のこっちには貸したものがないからね。昨日の大臣失踪の件もすぐに渡したし。誰かの逮捕情報渡した方がいいか。」

貸したもの。


 もしかすると、僕は相当な闇に触れているのかもしれない。しかも全て本当だと脳の中には出ている。そして、"癒着"という二文字も"本当"と並んで僕の脳を埋め尽くしている。


僕は少し踏み込むことにした。この関係はいつから続いていたのか、急に知りたくなった。

「チュン、チュン、イツカラ、チュン。」

「・・・鳥が、いつから、って言った?そんなはずあるのか?まあ、飯田くんの声の大きさじゃないからたまたまか。」

・・・成功した。この位置からだとバレずに尚且つ違和感なく、ないのかな?まあ鳥の声は成功した。

「いつから、か。この関係は7年くらいだな。まあ何でこうなったかは正確には知らないけどね。」

7年、僕が入社する少し前くらいか。ただ、噂すら聞いたことがない。おそらく上層部しか知らないような何かがあったんだろうな。


 関係ないことを考えてしまった。今大事なのはこの状況をどう切り抜けるか、だ。舞子ちゃんを救うためには何をすればいいんだ?

今の僕を客観視してみる。僕が持っている力なんてない、むしろ今は体に刻まれた傷でまともに動くことすらできない。暴力が無理だとすれば知能、何かないかな。

「そうだ、飯田くん。私は異世界を信じていないが。」

・・・僕にはわかっている。この人は異世界を信じている、と。ただ、今の言い方は何か意図を感じる。まるで、異世界の存在を感じたことがあるかのような。

「私の嫁についてだ。私の嫁は人形になった。さっき少しその話をしているのが聞こえたよ。その男はもしかしたら、人とは違う場所でその力を得たのかもしれない、それが異世界かどうかはわからないが。」

人形の話、こんなことが切り抜けるヒントになるとは思えない。だが僕は異世界、と言う言葉に猛烈に惹かれた。この暑さも、今は心の昂りの前ではむしろ低温だ。

「ドンナハナシナノ、チュン。」

「君を引き取る奴が来るまで、話しておこうか。」

―――――――

 私がこの男の話を聞いたのは、今年の初めだ。最初は疑った。だから会いに行ったんだ。


刑務所に。そこにいると知った時は驚いたよ。被害者は10年前から刑務所にいる受刑者。犯罪者がそんな力を持っていたら相当危険だ。だから私はどうにかして処理しないといけないと思った。


だが、実際にその証拠がなければ行動に移せない。だから誰かを人形にしなければならないだろ?そこで嫁を私は選んだ。


あの時、何が起こるかわかっていない嫁の顔が、今でも脳に焼き付いているよ。顔撮っておけばよかったかな。まあ、いつものように録音をしていたから声だけは聞けるんだが。

―――――――

・・・いつものように?僕はこの言葉がどうにも引っかかった。もしかしたら、今日の音声が録られているかも知れない。


スマホを盗んで、今日の音声をどこかに流せば。この闇の中で、僕は光を見た。

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