17話 落ちこぼれ記者と血のつながり《ブラッドライン》
飯田庵佐は舞子の父親と対面を果たす。そして舞子は起きるが、父親に怯えている。そんな庵佐と舞子はついに初対面する。
「嘘を見抜く能力?」
ハレントが少しだけ口にしていた、能力とはこれのことなのか。確かにあの子の言うとおり戦闘には微塵も役に立たない。でもなんか迂闊に質問に答えるのは心の中を見透かされている気がして、躊躇ってしまう。適当なことを口走らないように、相槌だけを使おうかな。
「カーテンちゃんと開けなくていいんですか?」
「そうだ!まだ僕顔見てないんだよ!」
僕は中途半端に顔だけ隠れているカーテンをすぐに開いた。
「・・・ん?」
僕がカーテンを開き舞子ちゃんと初対面を果たした。でも少し不思議そうな顔をしている。
舞子ちゃんは僕が想像していたよりも長髪で目が大きくて、まさにお嬢様と言った美少女だった。想像では人の心を操ってくるようなミステリアスな感じだと思っていたから驚いた。むしろそんな想像する僕の方がおかしかったかもしれないけど。
どこかさっきの父親のような面影が口元に感じられる。虐待していた酷い父親とはいえ、あの人も相当に顔は整っていた。そんな家族側から見れば、仲睦まじい家庭にしか見えない。気づけないのも仕方がないのかもしれない。
そんな美少女が不思議そうな顔をして僕の顔をまじまじと見つめている。何かを考えているんだろうけど、見つめられると困るな。
「・・・あなたがあの庵佐さんですよね!」
さっきまでの不思議そうな顔が嘘のように、その顔は晴れやかになった。
「そう、僕庵佐!!でもなんで知ってるの?」
あの、ってもしかして娘にまで僕の悪事を伝えているのか?僕は地面に落ちていた布団を拾い、すぐに顔を隠した。
「どうしたんですか?私ハレントから聞いたんですよ!」
「ハレントから?僕がダイブしたあと?」
「多分そうです。私マンドラゴラが倒されて少しの間は回復してたんです。その間にハレントが、庵佐が私を助けてくれたんだって。あいつなら信頼できるって言ってました。」
僕は手が緩んで布団をもう一度地面に落としてしまった。
「なら、ハレントが警察と救急車を呼んだの?」
「いや。ハレントは呼んでないみたいです。だって私が警察の前に出れば、父親に見つかるし。救急車で運ばれても見つかってしまうので。ハレントから聞いたと思うんですが、ハレントは誰か信頼できる人を私がこっちに来る前に探してくれました。私はハレントが探してくれている間に、ゲート内である考え事をしてたんです。」
舞子ちゃんは僕のことを信頼してくれたのかスラスラと言葉が出てくる。
「実は元々異世界転移してきたお医者さんがいたんですが、そのお医者さんの場所を思い出していたんです。私の事情もその人に話してたので思い出せればすぐに匿ってもらえると思ったんです。見事その場所に出れたんですけど、気絶してしまって。ハレントが言うに、もしかしたらハレントが私を見つける前に誰か私を発見したんだろうって。」
「そうだったんだね。」
「でも、私の顔を初めて見る?私の顔見たんじゃないんですか?」
舞子ちゃんはまた不思議そうな顔をして考え始めた。今度は変顔も交えて。
「もしかして変顔してたからですか?」
「違うよ。僕実はマンドラゴラのせいで一時的に目が見えなくてね。」
舞子ちゃんは納得しながらも、変顔をしたことが急に恥ずかしくなったのか僕のように布団で顔を隠した。
「庵佐さんになら話していいかも。」
舞子ちゃんはさっきのような顔は捨てて、真剣に僕の方を見つめる。
「私がこんなリスクを犯してまで帰ってきたのは
母親が死んでしまうからなんです。」




