14話 落ちこぼれ記者と少女の父《ガールダディ》
飯田庵佐は病院にいた。ただ、なぜか警察の目も冷たい。そこでもらった資料に書いていた衝撃の文言。誘拐事件の犯人が、飯田庵佐。
大下舞子失踪事件。資料によると大下舞子は高校2年生、誕生日が4月6日の現在17歳。通っている高校は悠理高校、都内でトップクラスの高校だ。
事件概要としては6月7日。午後7時ごろ、いつもなら塾から自宅に帰って来る時間であるにも関わらず帰ってこない。その上に連絡もないことを心配した祖母、大下佳恵が大下舞子の父親、つまり息子に電話をした。失踪地点は塾から徒歩10分のコンビニから自宅までの帰宅途中のどこかだとされている。
正確な失踪場所はわからないが監視カメラに最後に写ったのは塾が6時半に終わった後。塾から徒歩10分のところにあるコンビニのカメラに通り過ぎるところが確認された。ただそこを通り過ぎた後、帰宅途中には監視カメラがないので正確な地点はわからない。また怪しい人物もコンビニのカメラには映っていなかった。
警察はすぐに動き出した。だが舞子ちゃんを見つけるまでには至らなかった。しかし舞子ちゃんのバッグが見つかった。場所はコンビニを過ぎてそこから徒歩2分のところにある売り出し中の土地。
そして昨日河川敷で発見。発見時には意識不明、か。
僕は少し違和感を感じた。どれだけ焦っているとしても110番をかけるはず。心配しているなら尚更自分でかけないと気が済まない。ただそれなのに警察はすぐに動き出したのは不可解でしかない。
そして、バッグの写真がないということ。舞子ちゃんが転移した、そこでバッグもあっちの世界に行ったのなら写真がないことにも納得できる。だが、資料にはバッグが発見されたと太文字で書かれている。もしかするとバッグには何か秘密が隠されているのだろうか。
あと気になる点で言えば、すぐに捜査が終了したことか。
「それで、僕が誘拐した犯人か。
裏があるとしか考えられないな。」
どんなに資料の細かいところまで読み込んでも僕が行った場所は一つもない。ただ裏があるとしたら0から証拠をでっち上げてくるはずだ。
僕は仰向けになっていた体を起き上がらせて資料を机に置こうと思ったが、お腹に傷を抱えていることを思い出したので起き上がらせようとした体を元に戻した。資料は封筒に戻して枕元に置き、さっき頭に浮かんだ疑問は枕に頭を沈めて考えることにした。
「資料は読んでくれたかな?」
白いカーテンの向こう側から男性の声が聞こえる。さっきの警察の口ぶりからしてこの人が父親に違いない。
「舞子ちゃんのお父様ですか?」
僕の問いかけに対してカーテンの影は椅子に座りながら頷いた。
僕はさっきの資料を読み込んで感じた疑問を伝えた。資料を置いてくれたのがこの人なら何か知っているはずだ。
「まず、なぜ母親が電話しなかったか。それは私が警察だから。それも割と偉い。私に連絡すれば私は刑事を動かすことができる。だから母は警察に連絡しなかった。」
確かにカーテン越しからもそのオーラが僕の方まで届いている。
「また、すぐに捜査を打ち切ったのもそれが理由だよ。他の捜査に影響してほしくないからね。」
娘が関わっている事件になんて他人事なんだ?声からは悲しみの一つも滲み出ていない。むしろ混ざっているのは、、、喜び?確かに顔を見ていなかった娘が見つかったことは喜ぶべきことに間違いはない。ただ意識不明の娘を前にしてのものじゃない。というか僕はやっていないとは言え誘拐犯扱いだ、娘に手を出された父親がこんなに平然とした声をしていられるだろうか。
「・・・もしかして、今嬉しいって思ってますよね?」
カーテンの影は先ほどよりも大きく首が揺れている。
「それって、何かを隠すための隠れ蓑。
つまり僕という犯人が見つかったからじゃないですか?」
また影が揺れる。
今度は笑い声と共に。この人は、悪人だ。
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