8 昇山・御来迎
そのあと大道寺のおっさんに昇山について聞いた。
富士山の剣ヶ峰あたりにある、小さい岩の祠に立ち祈ると天命が聞こえるらしい。
こっちの富士山は神聖な物なので、登山は基本的に昇山で天命を聞く意外は禁止。
不二国と相模国の侍が24時間パトロールをしている。
ドローン撮影も禁止だ。(こっちのドローンは魔力で動いている、こっちの世界の魔力とは医療にも使えると言う色々とチートな力だ)
ナミとシオとレイリで一夜城跡辺りにある墓に来ている。昇山前にご挨拶と言う事で暗殺された南国母と湘王子の墓参りだ。
もっと早く来なくてならなかったのを謝り、2人の御霊が安らかなる事を心から祈った。
「ナミ、シオ」
「はいなんでしょう兄様?」
「絶対許さないからね!南国母と湘王子を襲った国はきっちり報復させてもらいます!」
「はい!兄様!私達もお手伝いします!」
「うん!頼むね!」
さて!久しぶりに富士山登るか!
向こうの世界では5回ほど登っている。
朝5時からのんびり登り、昼過ぎには降りて帰宅しているそのパターンだ。
雪の残る時にアイゼンを持って登ったりもしている。
休みには丹沢や箱根外輪山を歩きまわっていたノブオにとって、富士山の難易度はそれほど高く無い。
表丹沢から西丹沢に抜けるルートの方がヤバいぐらいだ。
◾️◾️◾️
今日は日の出ちょっと前から富士山を登っている。お供はレイリと荒木善将軍と黒装束の2人だ。
(この2人は女の子っぽいな?)
「ゼンちゃんどお?」
「大丈夫です・・・」
「レイリは?」
「問題ありません」
「そっちの2人は?」
「大丈夫です」
「・・・はい」
ゼンちゃんと黒装束の1人がキツそうだ。多分、標高に身体が上手く適応していないのだろう。まだ2500メートルの6合目あたりなので、ここで1時間休み、ゼンちゃんと黒装束さんを高さに適応させる事にした。
「1時間休みます!」
「ノブオ様!先を急ぐのにそんなに休んではいけません!」
「あのねゼンちゃん、高所の適応は運動出来るから大丈夫とか無くて体質みたいなもんなんだよ、ここでゆっくり適応して登らないとあとあとゼンちゃんお荷物になるよ!そんなの嫌でしょ?」
「言葉もございません・・・」
「そっちの子もいいね?」
「はい、ノブオ様ありがとうございます」
おっ!素直でよろしい!頭をいい子いい子してあげた。
ここら辺から森林限界なのでつまらない景色が頂上まで続く。体調が悪い時につまらない景色を見ても気が紛れないので最悪になるからね。
そして富士山は風も強いので、体調が悪いと踏ん張りがきかず飛ばされてしまう。転がったら岩なので頭をぶつけたら終了だ。
なのでチームで行く時はとにかく時間がかかっても、全員が適応する事が大事だ。
行動食のチビ羊羹を取り出し食べる。足の筋肉が痙攣しないように、時間で水分も定期的に摂取する。
ゼンちゃんの顔色が良くなって来た。適応出来たようだ。
「ノブオ様お待たせ致しました。もう大丈夫です」
「そっちの子もどう?」
「おかげ様で楽になりました」
「うん、じゃあ行こうか!」
『はい!』
さて、登山スタートだ!
7合、8合、8合5尺・・・
初心者は結構キツそうだ。近くに見えるけど全然着かないからね。
時間とメンバーの様子を見て休み休み登る。
7時間ほどかかって頂上にやっとついた。
「頂上だあー!着いたぁーーー!」
なんか霧っぽい・・・
おぉぉーーーコレはっ!!
俺は何も無い空に向けて拝んだ。
ゼンちゃんとレイリと2人組はそんな俺を見て、不思議そうな顔をしている。
背後から光があたると、霧の中に光輪を纏う仏が現れた!
いわゆるブロッケン現象、日本で言うと御来迎である。
ゼンちゃんとレイリと2人組は跪き、涙を流しながら祈っていた。
ごめんそれ俺の影だよ!とはとても言えない雰囲気だ・・・
こうしてナミ、シオの他に強烈なノブオ信者がここに4人誕生した。
1人は嫁で2人は誰か知らんけど・・・