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姉の手がかり

「ところで、サナはなぜあんな所にいたの?」


「えっと……、信じてもらえるかどうか分からないけど、実はわたしのお姉ちゃんを探してたんだけど、気がついたらあの森にいたの……」


「気がついたらあの森にいたっていうのはにわかには信じ難いけど……、サナが探しているお姉さんってどんな人なのかしら?」


「わたしのお姉ちゃんは佳奈って名前で、こんな感じの人なの」


 わたしはブレザーのポケットからスマホを取り出すと、それを操作しフォルダー内に保存してあった姉の写真を二人に見せる。


 二人はスマホを見たことがないのか、おっかなびっくりといった様子でスマホを手に取るとお姉ちゃんの写真を見つめていた。


 これは今から二年ほど前のヤツだけど、多分さほど変わってはいないと思う。


「え~っと、どれとれ……?う~ん……、あたしは見たことないわね……。ユーリは?」


「僕……、この人知ってる……」


「ほ……本当ユーリ……っ!?」


「う、うん……。本当だよ……」


 突然のユーリの言葉にわたしは思わず身を乗り出したせいか、彼は驚き仰け反っていた。


「どこでっ!?どこでお姉ちゃんを見たの……っ!?」


「確か一年ほど前にドラゴスという街の闘技場で会ったんだよ。その時の僕は奴隷として闘技場で戦わされていたところをサナのお姉さん、カナさんに助け出されたんだよ……」


「ああ……そう言えばユーリ、カナって人に助けられたって言ってたわね」


「そ……、そうなんだ……」


 お姉ちゃんがユーリを助けた……?


 どうやって助けたのかは分からないけど、問題事に変に首を突っ込んだり、困っている人をすぐに助けようとする性格は相変わらずみたい……。


「それにしても、サナがカナさんの妹だとは知らなかったな……。だって、カナさんはメチャクチャ強かったから」


「え……?お姉ちゃん強いの……?」


「うん、確か闘技場の絶対王者ってのを殴り倒して優勝したって聞いたけど……」


 ユーリの言葉を聞いて開いた口が塞がらなかった……。 


 お姉ちゃん何やったの……っ!?


 確かにお姉ちゃんは行動派だし怒ったら口よりも先に手が出るタイプだけど……、え……?闘技場で優勝した……っ!?


 ど、どういう事……っ!?

 わたし意味がわかんないよ……っ!


「それで、ユーリ。そのカナって人はそれからどこに行ったのか知ってるわけ?」


「確かカナさんはプルックに行くって言ってたよ」


「プルックか……、遠いわね……」


「プルック……?」


 また知らない地名が出てきた。

 どこだろうそれ……。


「プルックはこのゼービル大陸の南部に位置する港街だよ。ここが僕達のいるキーヴァで、プルックはここ……」


 ユーリがどこからともなく地図を取り出して広げると現在位置とプルックという街の位置を教えてくれた。


「……かなり離れてるのね」


 地図でみただけでもかなり離れているのが分かる。

 地図でこれだから実際は想像以上に距離があるのは間違いないと思う……。


「カナさんを探すのなら僕も手伝うよ。護衛依頼もこなした事あるし、僕も改めてカナさんにお礼を伝えたいという気持ちもある。それに、きっと姉さんだって……」


「あたしはサナを連れてそのカナって人に会いに行く事は反対よ」


 ユーリの言葉を突然エミリーが遮った。

 しかも、反対意見として……。


「姉さんどうしてだよっ!護衛依頼も一緒にしたことあるじゃないか……っ!?」


「確かにあたしもユーリと冒険者として護衛の依頼はしたことあるわ……。近くの町までの護衛というのならまだしも、ここからプルックまでどのくらい距離があると思ってるのっ!?」


「姉さん、それはそうかも知れないけど、僕はカナさんに助けてもらった恩があるんだ……!だからその恩に応えるためにもサナをカナさんに会わせてあげたいじゃないか……っ!?」


「ユーリの言う事ももちろん分かるわ。確かにあたしとしてもカナと言う人にあんたを助けてもらった礼は言いたいと言う気持ちもあるわ……。でも、問題はサナあなたよ……!」


「わ……、わたし……?」


「そう……、見た所あなたは身体の線も細いし、体力があるようにはとてと見えない……。ここからプルックに行くまでに果てしない道が続くわ。広大な森、険しい山道も待ち構えているのよ?あなたは何日も森の中を歩いたり、山を登ったり、そしてそこで野宿とか出来るっ!?さらにそれだけじゃない、道中には魔物や野盗だって出てきたりする……、サナあなたは自分の身を自分で守れるっ!?キツイ言い方だけど、あなたの我儘の為にあたしや弟の命を危険にさらすことは出来ないわっ!!」


「そ……、それは……」


 エミリーの言う通りだった……。


 わたしには何日も歩いたり山も登ったりする体力があるとはとても言えない……。

 途中で倒れて迷惑をかける事もきっとある。


 ましてや、そんなわたしのために他人を危険に晒すなんて出来るはずもない……。


「姉さん……!そんな言い方しなくたっていいじゃないか……っ!」


「ユーリ、これが現実よ。時には厳しい現実を突き付ける事も大切なことなのよ。あんたみたいな甘っちょろい考え方では必ず後悔することになるわ。最悪サナを途中で死なせてしまうことだってあるかもしれないのよ……?そうなったらどうする気っ!?」


「だからこそ姉さんの力が……っ!」


「あたしは冷静に判断した結果、無理だと判断したのよ。ユーリみたいに楽観視した訳じゃないわ。それとも、あなた一人でサナを守りながらプルックまでいける……?サナには悪いけど間違いなく彼女は足手まといよっ!?さらに、プルックに着いたら終わりじゃないのよ?その後どこにいるのかも分からないカナという人をどうやって探すのよ?下手したら世界中を探す羽目になるのよ?その事わかってるの……っ!?」


「うく……っ!」


 エミリーの言うことは確かに正論だった……。

 ユーリがお姉ちゃんを探すのを手伝ってくれると言ってくれたことは嬉しかったけど、エミリーの言うことは的を得ていた。


 やっぱりわたしのために二人を巻き込めないし、二人を言い争わせる訳にも行かない……。


「あの……!わたし一人でそのプルックに行ってみます……」


「サナ!あたしの話を聞いていたの……っ!?あなたでは無理だと言っているのよ……っ!?」


「でも、自分のペースでゆっくりとでも進んでいけばそのうち着くよね……?」


「サナ危険だ!魔物だって出るんだよ……っ!?」


「ありがとうユーリ。でも、二人にこれ以上迷惑はかけれないし、こうみえてわたしはカクレンボは得意なのよ」


 笑みを浮かべながらわたしはそう言うと席を立つ。


 カクレンボは得意と言うのはウソだけど、なんとかなる……かな……?


 プルックという街も人に聞きながら行けば多分日数はかかってもそのうちたどり着くと思う。


 もしかしたら、その途中にお姉ちゃんの情報も手に入るかもしれないしね。


「はあ……、これじゃあたしが悪者じゃない……。分かったわよ、あたしも付き合うわよ……」


「ホント姉さん……っ!?」


「ただし、条件があるわ!サナ!あたしの出す依頼を達成したら同行してあげるっ!もしそれが出来なかったらお姉さんを探しに行くのは残念だけど諦めて貰うわよ……っ!」


 エミリーの言葉にわたしは静かに頷いたのだった。

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