異世界確定っ!?
エミリーに案内されリビングへとやって来ると、そこには美味しそうな匂いと共にテーブルへと出来上がった料理を運んでいるユーリの姿があった。
彼はエプロンを付けている事から、これらの料理はユーリが作ったのだと思う。
自慢じゃないけど、わたしも料理は得意な方だ。
でも、なぜかお父さんやお母さん、それにお姉ちゃんもわたしには料理どころかキッチンにすら立たせてくれない。
ガサツなお姉ちゃんでも料理が出来るのだから、わたしにもさせてくれてもいいと思うのに……。
「あ、サナおはよう!昨日はぐっすり眠れた?」
「おはよう。わたし今の今まで寝ていたみたい……。あの、ユーリ昨日は助けてくれてありがとう」
ユーリと目があったわたしは恥ずかしそうに笑ってみせた。
「きっと疲れていたんだよ。ところでお腹空いてない?食事出来てるよ。どこでも空いている席に座って」
「ありがとう」
わたしはユーリの促され適当な席へと座ると朝食をごちそうになることとなった。
◆◆◆
「ところで、サナはどこから来たの?見た所この辺りでは見かけない服を着ているけど……」
食事を終えた後、ユーリはわたしへと問う。
「わたしは東京にいたんだけど、気がついたらあの森の中にいたの……」
「トーキョー……?どこかしらそれ……。ユーリ知ってる……?」
「ううん、僕も聞いたことないよ……」
わたしの言葉にユーリとエミリーの二人はお互いの顔を見合わせながら首をかしげていた。
え……?東京を知らない……?
他の地方都市ならまだしも、東京は世界的にも知名度は高いはずなんだけど……、それを知らないってどういうことなんだろう……?
「えっと……、じゃあ日本という所は知ってる……?」
「ニホン……?あたしは聞いたことないわね……」
「僕も……。少なくともこのゼービルでは聞かないね……。もしかしたらランザとかナベルとかあっちの方にあるのかな……?」
日本という国名を出しても二人は首をかしげていた。
けど、逆にユーリの言っていたゼービルとかランザとかナベルとかが何なのか分からず、今度はわたしが首をかしげていた。
どこかの地名か何かなのかな……?
だとしても、それがどこなのかピンとこない……。
と、ここでわたしは一つの仮説が頭を過った。
ユーリもエミリーも東京どころか日本を知らない。
そして、ユーリが言っていたゼービルとかランザとかナベルとかいう地名をわたしは知らない。
お互いがお互いの地名を知らない……、そしてユーリとエミリーの頭やお尻のあたりについている犬のような耳と尻尾……。
さらに、わたしを襲ってきた二本足で歩き喋る狼……というか、狼男……。
あれ……?もしかしてここって異世界ってところなんじゃ……。
……。
(マジですかぁぁぁぁぁーーーーーー……っ!?)
心の中で絶叫したっ!
え……?ぅえ……っ!?
お姉ちゃんを探していたら異世界に来たのわたし……っ!?
「あ、あの……。エミリーとユーリ、一つ聞きたいんだけど……、ここってどこ……?」
「森で会った時も言ったと思うけどここはキーヴァ、ゼービル大陸の北部に位置する街よ」
わたしの問にエミリーが答えてくれた。
「あ……、あぁ~……。なるほどキーヴァね……。ゼービル大陸の北部の……」
うん、知らない……。
どこなのよ、それ……。
どうやらここは異世界と見て間違いないのかもしれない……。
あは……、あはははは……。
わたしは心の中で乾いた笑いを浮かべていたのだった。