武久 紗奈
「はあ……、今日もなんの手掛かりも掴めなかったわ……」
大都会東京……、日が沈み夜となったこの街でわたし、「武久 紗奈」は背中まである茶色い髪を風になびかせながら大きなため息を付くとがっくりと肩を落とし、学校指定のブレザーを着て一人家の玄関の前で立ち尽くしていた……。
その理由はと言うと、二年ほど前に急に行方不明となった姉の「佳奈」の足取りを探し、なんの手掛かりも掴めなかったからだ……。
「ホント、お姉ちゃんどこに行っちゃったんだろう……?」
当時高校3年の姉は学校に向かう途中とつぜん姿を消したのだという……。
学校から姉が来ていないという連絡を受けたことから始まり、両親が姉に電話するも一切繋がらない……。
警察も探してくれたりしていたがなんの手掛かりも掴めぬままいつしか姉の捜索の規模は縮小……。
両親は自宅兼店舗として営んでいる喫茶店の壁や窓に姉のポスターを貼って入り情報を求めているもののなんの情報も手に入らず、姉がいなくなってからというものすっかり気落ちしてしまっていた……。
そんな両親のためにも当てにならない警察に頼るよりは、自分で姉を足取りを掴んでみせると当時中学二年のわたしは躍起になって学校帰りはもちろん、休みの日もあちこちを歩いて探し回ったていたけど、この二年間全く姉の手掛かり一つ見つけることが出来ないでいた。
高校一年になった今でも毎日のように姉のスマホに電話をかけるけど全く繋がらない……。
最悪の展開が時折頭をよぎるも、わたしや両親は決してその事を口にすることはなかった。
「明日は学校はお休みだし、隣街とか範囲を広げて探してみようかな……。待っててよお姉ちゃん!わたしが必ず見つけ出してあげるからね……っ!!」
ーならば会わせてやろう……!ー
「え……?」
わたしはそれなりに育った胸の辺りで手を力強く握りしめると、玄関のドアを開け家へと入ろうとすると、謎の声が聞こえてきたかと思うと、わたしの身体が光りに包まれた。
◆◆◆
「ここ……、どこ……?」
気が付くとわたしは見知らぬ森の中に立っていた。
しかも、さっきまで外は暗かったはずなのに、なぜかここは日が高く、木漏れ日が差し込んでいた。
ここ、どこだろう……?
ついさっきまでは家の前にいた筈なのに気が付くと見知らぬ森の中……。
あたりを見渡すも当然こんな所に来たこともなければ見覚えもない……。
しかも、身にまとっているものは学校のブレザーと革靴、さらに通学用のリュックのみ。
「まずは、場所の把握をしないと……」
わたしはブレザーのポケットからスマホを取り出して地図アプリを開こうとしたら全く起動しない……。
よく見ると「圏外」となっていた。
「……なんで圏外なの?」
理由がわからなかった……。
これじゃあ、今どこにいるのか全くわからないよ……。
「はぁ……、ここって本当にどこなの……?」
仕方ないとため息を付きながら圏外となり使い物にならないスマホをブレザーのポケットに仕舞おうとすると、近くの茂みからなにかガサガサと音が聞こえてきた。
何かの動物か何かかな……?
もしかしたら熊とかの猛獣かもしれない……!
わたしは息を呑み音のする方を見つめる……。
すると、数人の人影が姿を現したっ!
「何やら人の気配がすると思ったらこんな所に女が一人でいやがるぜ!」
その人影は数人の男性だったが、、リーダー格と思われる人物は人間ではなく、獣人といえばいいのだろうか……?
まるで狼が二足歩行をして服を着たような感じだった。
「お嬢さんこんな所で一人でいるが迷子か何かか?なんなら俺達が寂しくないように可愛がってやろうか?」
「ひ……っ!?」
突然現れた見るからに粗暴な男性達はそれぞれ手に剣を持って、わたしの身体をイヤらしい目付きで舐め回すように見つめながらこちらへと詰め寄ってくる。
「い……、いや……。こないで……」
わたしは顔を青ざめながら今にもかすれそうな声を出す……。
今でこそ行方不明となった姉を探すためにあちこちを歩き回ったりしていたけど、本当のわたしは家や図書館で本を読むのが好きなインドア派。
姉みたいにアクティブにスポーツをしたり運動をしたりするのは苦手なタイプなのだ。
おまけに、この歳でまだ男性というものを知らない。
こんな所で好きでもない人に襲われて大切な初めてを奪われてしまうのかと思うとその恐怖で足が竦み、動けなくなってしまっていた。
(逃げなきゃ……っ!)
頭ではそう思っているけど、肝心の脚が思うように動いてくれない……。
そうしている間にも男達が迫ってくる……!
「いや……!いや……来ないで……!きゃあ……っ!?」
わたしは勇気を振り絞り逃げようとするも脚がもつれてしまい、転んでしまった。
いたたた……、わたしのドジーー……っ!!
しかし、そう思った所でどうにもならない。
おまけに立ち上がろうにも身体が思うように動かない……。
も……、もうダメ……っ!
わたしは目に涙を浮かべながら目を閉じると別の方向の茂みから一人の男性が飛び出してきた……っ!