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【2024夏ホラー】実話・三題【キーワード『うわさ』】

作者: 千葉 仲達

※所要時間……3時間

※新作のネタがあまりにも出せないから苦し紛れに書き出したホラー未満の何か。まあ実話なんてこんなものかな。

1.盛岡市(もりおかし)松園(まつぞの)の幽霊屋敷


 あれは――私が小学校高学年の話だったように思う。

 級友のM君に誘われたのだ。


「仲達君、松園にある心霊スポットに行かない?」と。


 M君というのは、オカルト関係に興味関心が強い男子であり、近所に住む幼馴染みであった。そのM君(いわ)く――松園には所謂(いわゆる)お化け屋敷があり女性の幽霊が出るのだとか。また、一昔前に名を馳せた霊能力者である宜保愛子(ぎぼあいこ)女史が訪れたが、除霊できずに呪われてしまったのだとか。その屋敷を写真に写せば、必ず心霊写真が撮れるのだとか――。


 当時、私もオカルト分野に興味を抱いていたこともあり快諾した。

 今にして思えば、幼少期に特有の、万能感交じりの蛮勇である。


 土曜日か日曜日の休日、私とM君は早速松園の幽霊屋敷に向かうことにした。

 黒石野(くろいしの)にある私の家の前で待ち合わせた。交通手段は自転車である。M君は青く格好良いマウンテンバイクに、私は鼠色をしたお下がりのクロスバイクに跨がり、松園までの長い長い坂道を、ひいひい言いながら必死に漕いで、ぐんぐん進んでいった。


 記憶は定かではないが、暑くもなく寒くもなかったのだから、きっと春か秋だったのだろう。今にも降り出しそうな曇天の空だったことだけは明瞭に覚えている。


 幽霊屋敷に着いた私達は、自転車を家の前に停めた。


 何てことは無い。ブロック塀に囲われた、何の変哲もない()()()一軒家である。信号のある四ツ辻に面した安普請である。二階の窓は障子で閉ざされている。一階も曇り硝子(ガラス)か何かの戸で閉ざされている。少なくとも家屋の中は見えなかった(はず)である。庭は草木が繁茂(はんも)して、人が暮らし手入れをしている気配は微塵も感じなかった。


 私はあわよくば家屋を探索しようと懐中電灯まで持ってきたのだが、どうにも気が進まず敷地に踏み入ることすらできなかった(この慎重が、第六感の制止なのか、はたまた倫理や人目を気にしたものだったのかは今でも分からない)。


 結局、M君が持参したインスタントカメラで屋敷の外観を二三枚撮影して、私達はすぐに帰ることになった。


 これで幽霊が映り込んだり、私達が霊障で寝込んだりしたら立派な怪談になったのだろうが、残念なことに期待した成果はなかった。後日、M君の報告に依れば、オーブの映り込んだつまらない写真しかなかったらしい。


 酒の肴にもならない二十年前の話である。


     *     *     *


2.雫石町(しずくいしちょう)、慰霊の森における小話


 「慰霊の森」をご存じだろうか。端的に言えば飛行機墜落事故のあった場所であり、日本最強心霊スポットのひとつとして名高い曰く付きの場所である。

 そこでは昔から幽霊が出没する噂が絶えなかった。曰く――近くの県道を走っただけで無数の手形が車についた。フロント硝子の隅に顔が浮いて離れなかった等、枚挙に暇がない。


 そんな処を、大学時代の友人であるT君とM君が(おとな)ったという。T君は長野県出身の、麻雀が得意な、飄々(ひょうひょう)としていながらも私に様々なことを教えてくれた人生の師である。M君は愛知県出身の、競馬好きで、顔立ちが整った俳優のような男である(ふたりの名誉のために書くが、決して遊び半分で行った訳ではない。あくまで旅行ついでの慰霊のためであることをここに記す)。


 そんなふたりだが――面白いことが起きたという。石碑の前に缶コーヒーと火を点けた煙草を置いたら、みるみるうちに煙草が短くなって、吸い尽くされたのだ。終いには「美味かったよ」なんて声も聞こえたらしい。


 T君が私を怖がらせようとした嘘なのか、それとも事実なのかは、今では確かめようもない。


     *      *      *


3.東日本大震災の爪痕


 復興した今でも、海沿いの町では、階段をバタバタと走るような音が聞こえるらしい。

 被災地出身のK女史曰く、その音を怖がってはいけないと。

 本当に怖かったのは津波に呑まれて、訳の分からぬ(まま)死んでいった者達なのだから。

 その者達の成仏を祈って手を合わせてくれないかと。


 私は就活を理由にボランティア活動を断ったが――。

 もし被災地を訪えば、何かが変わったのだろうか?


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