残酷にしてマザコンの勇者 〜最強のチート能力をフル活用して異世界から最速帰還する〜
「ンゥゥゥ!!滅茶苦茶美味しいよママ!!」
俺は自宅にて食事を食べていた。ママが作る料理は世界一
いや、宇宙で一番美味しいと言っても過言ではない。
そんなママの料理をこんなにも食べられるのだ。俺は宇宙一の幸せ者だ。
「あぁんら!それなら良かったわ!まだまだあるからたんとお食べ」
「うん!!」
俺は目をつむり頷く。もう一度目を開け、ママの料理を楽しもうと思い、目を開ける。
だが、目の前は、ママが作った料理が並んだ食卓ではなく。何やら西洋風の石レンガで積まれた地下空間のような場所であった。
「は?どこ?まさかママ、高速リフォームでも習得した?」
目が覚めると俺は、よくわからない場所にいた
辺りを見渡すと、10人程度の人間があたふたとしていた。
「異世界転移は成功か?おい!!早く鑑定をしたまえ!」
この場にいる最も偉そうな人物が部下に対して何かを要求しているようだ。もちろんだが、こいつが何を要求しているのかも、なぜこの場にこれ程まで人が集まっているのかわからない。それに、明らかに日本人でないような見た目ない。なのだが、日本語を話している。なぜだろう。
「持ってまいりました!!こちらが鑑定結果です!!」
部下の一人だ、リーダー格のような人物に書類を手渡す。
「なにぃぃ!!こいつは…こいつは相当の逸材 傑材 超材だぞ!!言葉では…表せないが!!とにかくすごいぞ!!」
なにやら、俺はすごいらしい。だが、何がすごいのかわからない。そもそも、ここがどこかもわからない。何もわからない
「えっとぉ…どこっすか?ここ」
混乱状態だった俺はそのリーダー格の男に尋ねる。さっさとママに会いたい。
「おお!!勇者様!!お目覚めになったのですね!!貴方様には魔王を倒していただきたくこちらの世界に召喚させていただきました。」
ここは、どうやら俺がいた世界ではないようだ。
じゃあ、この世界には、ママがいないってことだ。
ママがいない。なら、この世界はどうでもいいな。
「いや…そんなのどうでもいいからさぁ…俺をさっさと元の世界に戻してくんね?俺まだママの料理楽しみきれてないんだけど?」
声圧を強めながらそのリーダー格の男に話しかける。ママのためなら多少の犠牲は仕方がない。
「ひっ…も、もちろん、元の世界に変える方法もあります!それは、この世界の魔王を倒すことです!!」
「おけ…魔王殺してくるわ。」
魔王を倒すことで、元の世界に戻れるらしい。ならば、殺すしかないか魔王
「感謝いたします…あ、こちらは勇者様の強さを示した紙になります。これを見ながら魔王を討伐してください!!こちら、旅の資金です。そして魔王がいる魔王城はあっちの方向です。」
そう人間が言うと、今俺が向いている方向とは反対を指差す。
「ですが…さすがの勇者様でも魔王を倒すのは簡単では…」
「よし…時間が惜しい。試しに使うか。えっと?”瞬足”」
そう言うと魔王城があると言われている方角に向かって突き進む。壁を突き破り、目にも止まらぬ速さで向かっていく
「あっ…行っちゃった……えっと、ちょっとさぁ…強いのは良いんだけどさぁ…キモい勇者だったな…魔王…倒してくれるよね?」
勇者が去ったあと、呆然とした状態となってしまった。ステータスは歴代最強と言っても過言ではないのだが、それを全て外に押し出すほど不安である。
「信じましょう…あのマザコン勇者を…」
部下の一人がそう語る。
「うん…そうだな…」
勇者が去ったあとは何やら全員がしんみりしていたらしい。
瞬足により空を、地を、風のように駆けるのは俺だ。魔王城にノンストップで向かう。だが、数分走り続けて気づいたことがある。
「すげぇ腹減る…ママのご飯を持ってしてもここまでお腹減るなんて…燃費悪い能力だな…さっきのスキルとかのやつに食事に関する能力なかったし。どっかの街で買い溜めして一気に行くか…」
あたりを見渡す。近くに村や街のようなものは無い。だが、数分もこれほどの速さで動けば見つかるだろう。
そんなこんなで空腹状態で集落を探していると、遠くに、村を見つけた。行くしか無いだろう。あそこで買い溜めをすれば魔王城がどれほどの距離かわからないが、スキルの中にアイテムボックスなる保管ができる能力があったし大丈夫だろう。
「よしっ到着…さっさと飯買うか。」
村の少し外れた位置に着陸し、ご飯を売っている店を探す。数分程度早足で探す。
ドサッッ
「あっ…すいません…」
「あぁごめん」
誰かとぶつかってしまったようだ。その姿は、金髪の碧眼の幼女だった。正直キモいのは承知だが、いい匂いがする。
元の世界にいたら誰もが絶世の美少女と言うほどの美少女だ。
「じゃあ…行くわ」
だが、別にどれだけの美少女であろうとも、俺のママの魅力には到底及ばない。それも天と地、月とスッポン、ママは天使だ。
「あっ…ぶつかってごめんなさい!!」
後ろでその少女が頭を下げながら謝るが、急いでいるので、俺はすぐさま捜索を再開する。ある程度探すと、それらしき施設を発見する。その中で、旅の資金を全て差し出し、ありったけの食料を買う。そして、それを目の前でアイテムボックスにぶち込む。
「まて!!お前…アイテムボックス持ちなのか!?」
「あぁ…うるさいうるさい。じゃ行くわ」
店主が足止めをしてきそうな雰囲気になったので、すぐさま店を去る。店を去っている間も、店主がごちゃごちゃ言っていたが。まぁ関係のないことである。外に出ると何やら村が謎の生物に襲われているようだ。それも、小さな人間のような生物。
「はぁい無視無視」
俺は無視して、もう一度”瞬足”で素通りしようとしたが、その中でも少し巨躯な体を持ち合わせたボス格っぽいやつに、足止めされてしまった。
「は?殺すぞ?邪魔するんだな?よし死ね」
意思が通じていないと速攻で判断した俺は紙に記載されていた内の一つのスキルである”掃滅”を使用する。使用した瞬間、ここら一体にいたその小さな人形の生物は、死体となってしまった。だが、巨躯の生物はまだ生きながらえている。
「あれ?もしかして雑魚にしか聞かない?まぁいいや」
その巨躯の生物を殴り、肉片と変える。
「俺とママの感動の再会を邪魔するやつは問答無用で死ね」
俺は、もう一度瞬足を使用し、魔王城へと向かう。
「もしかして…さっきの人?」
金髪碧眼の少女が胸を抑えながら独り言を話すが、もう遅いのである。
「んー走りながら飯食べるのって結構きついな。意外と横腹に来るわ。それに、ママの料理と比べたら…まぁママの料理と比べるのは世界に失礼すぎるか…」
村を飛び出し、もう一度森を走る。まだまだ魔王城らしきものは見えてこない。これだけの速さで走る機会はなかなかないが、ただ走るだけでは飽きる。そうだ、俺まだママの料理見れてなかったしママの料理の予想でもするか!!
「うーん?なんだろうなぁ?今日のママの料理…やっぱりハンバーグかなぁ?それとも、中華系だったりして。あぁ…やばい…想像しただけでよだれが…」
ガコンッッ
「あん?何かとぶつかったな…木か?まぁ良いや」
ママの料理を想像し、速やかに家へと帰りたいと思った俺は、更にスピードを上げ魔王城へと向かう
「なんなんだよ!!なんで急に馬車が壊れんだよ!!あぁ!!もう!!奴隷共が逃げやがる!!」
どうやら、勇者とぶつかってしまっていたのは奴隷を運んでいた馬車だったようだ。
(誰だかわからないけど…馬車を壊して私達を逃がしてくれた…かっこいい人だな…)
頭部に動物の耳を携えたいわゆる”獣人”と呼ばれるような種族だろう。それに幼女だ
また意図せず幼女を救ってしまったらしい。
「お!!あれじゃね!?魔王城ってやつ。でも…あんまり魔王がいそうな感じしないけど。」
俺が見た魔王城(?)は思っていた以上に明るいというより、もう白く、城壁に囲まれ、その中に民家が並んでいるように見える。俺の想像に過ぎないけど、魔王城って城がドーンって佇んでて、もっと紫とか…黒とかそういう色なんじゃないのか?
まぁいいや…誰かに聞いてみればいいだろ。
幸運なことにちょうど近くに馬車が走っているしな。
”瞬足”により馬車と並走しながら俺は中にいる男と会話する
「おぉぉい!!これって魔王城?」
「…追手が来たぞぉ!!殺せぇ!!」
なんでっすか?聞いただけじゃんか…魔王城ってそんな警備厳重なの?そんな事を考えながら、その男たちは、馬車を止め、俺にナイフを向け、本気で殺そうとしようとしてくる。
「おぉぉぉぉい!!お前らぁぁ!!ママから教わらなかったのか?人にナイフは向けんじゃねぇ!!」
俺はママからの教えである人に凶器を向けるなという教訓をその男たちに向ける。
「まぁいいや…で?魔王城なの?ここ。それだけ答えてくれたら帰るから。」
「うるせぇ!!オメェ追手だろ!?死ねやぁ!!」
もはや話が通じていないのではないのか?というレベルである。ママでさえこの男には苦言を呈すだろう。
「あっそ…じゃあ仕方ねぇや静まれ」
俺は、スキル”断罪”をその男たちに向けて使用する。相手は死ぬ。
「己がママに懺悔しろバカども」
仕方ない、もう一度探すか。誰か良いのは…
「えっと…ここは魔王城じゃないです。魔王城はあっち方向です。」
馬車の中から、白髪長髪緑眼の美少女が下りてくる。どうやら、この世界は美少女が多いらしい。
「あ、まじ?ありがと。じゃ」
俺は”瞬足”によりもう一度走り出す。
「…かっこいい人だったな。母想いなんですね。」
白髪長髪緑眼の美少女は頬が赤らむ。
彼女は、この世界で唯一の理解者だったかもしれない。彼の独特無比の価値観を理解してくれる。そんな特別な。
だが、ママ以外に特別という感情は抱かない。
「姫様!!無事ですか!?」
城壁側から馬に乗った兵士たちがその美少女に向かってやってくる。
「はい。放浪の方のおかげで」
~1時間後~
「ローストビーフ…いや、パエリアもいいなぁシンプルに玉子焼きとかでも…あぁ楽しみだなぁママの料理。」
俺は今、紫色の沼に、枯れ木が鬱蒼としている妙な場所にやって来た。それに、俺の目の先には、黒色の禍々しい雰囲気を放つ建造物があった。
「あれが魔王城かな?よしいくか。」
あれが魔王城なら、もうすぐママに会える。
~魔王城~
「来たな…勇者が」
魔王は玉座に居座っている。圧倒的な覇気が放たれている。今まで数々の勇者を屠ってきたであろうその佇まい。
「体が震える…これほどまでに強い力を持った勇者はいつぶりだ?ははは楽しみだなぁ!勇者よ!!」
ボッゴォォォォォォ
バゴォォォォォォォ
「は?」
魔王が位置していた玉座の間が爆発していく。というより魔王城のすべてが爆発していく。
「何事だ!!」
「報告です!!勇者が…」
「な…なんだと!?」
~勇者視点~
「魔王だけ探すのも時間かかるしなぁ…あ!あれ使うか。”終焉爆発”っと」
俺がそのスキルを発動させると、魔王城のすべてが爆炎に包まれていく。それは例外なく魔王城のすべてが爆炎に包まれ、崩壊していく。やがて、魔王城は朽ち果て、むき出しになりそうな状態になってしまった。
「あれ?誰か来た」
魔王城から誰かが飛んでくる。俺は”終焉爆発”を止める。
「これ以上部下を殺すな!!狙いは我だろう!!」
魔王城から飛んできたのは2m程度の身長の赤髪に青い肌を持った女であった。
「そうだよ。じゃあ殺すね」
俺はスキルを使おうとする。だが、ママの教えが脳裏によぎる。
『女の子は傷つけちゃダメよぉぉん!!』
俺はふと我に返る。
「ママぁ!!ごめん…俺道はずれようとしてたよ…俺は、女の子は、傷つけねぇ!!」
「なんか、変な勇者だな…」
俺は考える。魔王を倒すことでしかママのもとに戻れないのかもしれない。ならどうするべきか。ん?そもそも、なぜ魔王を倒したら異世界から、元の世界に戻れるのだ?そもそも、異世界転移というのは、なぜ転移しただけでチート能力を手に入れられるのか?
「わかった…よし、”次元転移”…」
俺は”次元転移”というスキルを使用し、魔王と俺の間に空間の裂け目みたいなものを生成する。
「じゃっ!平穏に暮らしな」
俺は魔王をあとにし、目的の場へと向かう
「………あれ使って来ればよかったじゃん…はぁ…もうあんな残酷な勇者と戦いたくない…」
「よっし来たぁ!!すまん殺させてもらうぜわ。」
俺が”次元転移”を使い、やってきたのは
「は?だれ?」
神がいる空間であった。
「やっぱりねぇ…魔王で一番困ってるのって国じゃなくて神だよねぇ…そもそも、誰か殺せば勝手に戻るわけもないし…」
神がいる空間、何もない空間に一つのテーブルがその貫録を放ちながら置かれている。机の上は雑多に書類が摘まれており、凄く忙しそうだ。
神は、水色の長い髪に清楚な雰囲気を漂わせる。
「まぁいいや…魔王と交渉したしさ、俺元の世界に戻してくんね?そろそろママニウムが切れて暴走しちゃうよ?」
「…魔王ってなに?僕関係なくないかい?」
「いやあるでしょ?だってさぁ…え?あるっけ?まぁいいや、何でもいいから元の世界に戻して」
「う、うん。じゃあ、ばいばい」
俺の望みを承諾してくれると苦笑し、小さく手を振ってくる。
俺は目をつむり、心臓を高鳴らせながら待つ。そしてしばらくして、俺は目を開ける
「…はぁ…はぁ…まさか…彼が来るなんて、殺されなくてよかった…」
「ママ!!」
そこには、俺のママがいた。天井に吊り下げられた、二度と動くことがない身体を携えた。自慢の俺のママだ。
「あれ?ご飯ないじゃんか!!もしかして、夢だったのかな?まぁいいやママ!!美味しい料理期待してるね?」
そう母に告げると、俺は自分自身で。料理を作り始める。母が近くにいる温もり。母が近くで見ている安心感。ママニウムが体中に満たされていく!!
あぁ...俺はなんて幸せなんだ!
俺はママを殺した。他人から俺の思想の価値は理解されない。だが、ママが死んだおかげで俺たちは一生一緒だ!!
俺はどれだけ残酷でもいい。母と一緒に暮らすためなら。マザコンだろうと罵られようとも、そんなものはどうでもいい。俺はどうしようもないほど残酷で、マザコンなのだから。
この世界で一番怖いのは人間