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390000PV感謝! 遍歴の雇われ勇者は日々旅にして旅を住処とす  作者: 大森天呑
第八部:遺跡と遺産
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空からの尾行


「シンシア、この先はブリュエット邸に銀ジョッキを置いてても活躍する場面はあまり無さそうだし、ここからは探知魔法と銀ジョッキの二段構えでフェリクス=マディアルグの行く先を追っていくとしようか?」


「はい、ではフェリクスの後を追わせますね。あ、でも彼は馬車では無く、乗馬で出掛ける様子ですよね?」

「みたいだな」

「銀ジョッキもずっと遠隔で動かしっぱなしなので、少し魔力残量が心配になってきました。このままフェリクスの後を追えば空中を飛ばし続けることになりますから...」

「ああ、そうか。馬車や船みたいに、屋根の上に載っけて無賃乗車させるって訳にも行かないもんな」


「はい。追跡が遠距離になった場合は、途中で銀ジョッキがダウンする可能性があるかもしれません」

「その場合、銀ジョッキの姿は?」

「魔力切れと同時に不可視結界が停止するので地上に転がって姿を現します。もちろん、停止位置は把握できるので、私たちがすぐに回収に向かえば問題ないと思いますけど」

「うーん、それは避けたいな...」

「すみません御兄様。私が途中で呼び戻して魔力補給をしておけば良かったのですが...」


「いや、むしろ探知魔法頼りのつもりだったし、銀ジョッキで騎馬のフェリクスを追うって言うのは予定外だよ。気にしなくていいさ」

「どうしましょう? ギリギリまでフェリクスを追わせますか?」


「いや、いったんここに戻して魔力を補充しておこう。ひょっとしたらこっちはこっちで別の動きがあるかも知れないしね」

「分かりました。ここまで飛ばそうとしてギリギリで魔力切れになると嫌なので、私がシエラで回収に行きますね」


「ああ、それは俺とアプレイスで行くよ。シンシアは、いつでもここで探知魔法を動かせるように準備をして休んでいてくれ」


本当はシンシアの探知魔法に大した準備などいらないし何処にいても探知は出来るのだけど、こうでも言わないとシンシアは休まない。

転移門の罠の模倣と改良や、錬金術師の筆跡を真似た手紙の偽造と、ずっと根を詰めていたのだから、いまは少し休ませてあげたい。


++++++++++


善は急げとアプレイスに頼んでブリュエット邸に向かう。


ちょうど屋敷の上空に到着した時、ペンダント経由の探知魔法で俺の位置を把握していたシンシアからの連絡が来た。


< 御兄様、外に出しておいた銀ジョッキを上空まで浮かび上がらせますね >

< おお、助かるよ >

< 今、上に上げました。見えていますか? >

< ああ、こっちに向かってくるのが見えてる。有り難うなシンシア >

< いえ... >


全く・・・シンシアも素直に休んで、一眠りでもしてればいいのにな。

責任感が強すぎると言うかなんと言うか。


< よし、回収したぞ! >

< はい! いま画面一杯に、御兄様のお顔が映っています >

< ソレちょっと恥ずかしいんだけど? >

< そうですか? カッコ良くて私は見蕩れてますよ >

< うぉぅい! そんな照れること言うなってば >


指通信なのに、シンシアがクスッと笑ったらしい様子が伝わってくる。

ひょっとして、からかわれたかな?

いいけど!


< ところで、いまフェリクスはどの辺りを移動してるかな? >

< ちょっと待って下さいね >


少しの間を開けて、シンシアがフェリクスの現在位置を教えてくれる。


< 半刻ほど前にそこを出ていますが、川沿いの街道に出て真っ直ぐ南下していますね >

< ってコトは、海側に向かってる? >

< かもしれません。途中で曲がらなければアーブルに着きます >

< そう来たか... >

< まだ分かりませんよ御兄様。このまま馬で走り続けてもアーブルに到着するのは夜中ですし、海岸線沿いにも東西に延びる街道がありますからね >


ルリオン平野は結構広い。

ブリュエット邸を出てどっちの方角に進んでも何処かしらに行き着くのだから、いまフェリクスが街道を南下しているのはちっとも不自然じゃ無い。

不自然じゃ無いのだけど、どうもアーブルが目的地のように思えて仕方なかった。


まあアレだ、直感的にね・・・


< フェリクスがアーブル市街に入ったとしても、単に一晩休むだけかもしれないしな? >

< 御兄様の口調で、そうは思ってないと言うことがバレバレです >

< 鋭くなったなシンシア >

< だって婚約者ですから! >

< うん、そうだな。俺の最大の理解者は非の打ち所の無い美少女だと、素直に喜ぶよ? >

< いえ...そんな....私なんて...>


シンシアが照れた。

ちょっとだけ、さっきのお返しだ。


あと、パルレアも再顕現してからのサイズと言うか、人間族やエルフ族基準でのスケール感を無視すれば美少女だし、決して俺の理解者として除け者にしている訳では無い。

もっとも『非の打ち所』については若干、議論の余地があるかもしれないけど。


< どうされますか御兄様? そのままアーブルに向かわれますか? >


「アプレイスはそれでもいいか?」

「おう、アーブルなら歓迎だぜ」

「じゃあ頼む」


< 俺たちはこのままフェリクスの後を追ってみるよ。もしアーブルに向かわずに方向を変えるようなら、その時は連絡する >

< 分かりました。川沿いの街道を走っていますから、すぐに見つけられると思います >

< 単騎だし、ブリュエット邸で着替えた服も覚えてるから大丈夫だ >

< お気を付けて御兄様 >

< どのみち様子が分かったら連絡するから、それまでシンシアは一眠りしていてくれな? >

< はい、そうします >


フェリクスが逃走中の間は、王宮に対して次の攻撃が行われるとは思えないけど、一応、シンシアとエスメトリスがいてくれれば問題ないだろう。

ワイバーン軍団を一喝で支配したエスメトリスに立ち向かうには、それこそヒュドラでも送り込むのか?って話だろうしね。


もしフェリクスがアーブルに留まるようなら、諸々を考えてシンシアとパルレアもアーブルに転移してきて貰った方がいいかもしれないが・・・


「と言うワケでアプレイス、しばらく川沿いにゆっくり飛んでみてくれないか?」


「了解だライノ。むしろ見落としての追い越し注意だな」

「単騎だから馬車よりは早いかもだけど」

「いやライノ、フェリクスが水と食い物を用意させたってコトは、何処に行くにしても数刻は馬で走るつもりだろうさ。ヤツは自分が追われてるとは思ってないし、それほど馬を急がせるとは思えないね」


「そりゃそうだな...」


もしシンシアが仮眠してるとしたら起こしたくないので、自分たちでフェリクスを発見できるように、出来るだけ丹念に街道沿いを見下ろしながら飛んで行く。

もちろん走ってる馬ならすぐに分かるだろうけど、街道から河原に降りて一休みされてたりすれば、うっかり見落としてしまう可能性もあるからな。


「いたぜライノ、あの馬がきっとそうだ!」


さすがはドラゴンの視力で、アプレイスが先に見つけてくれた。

アプレイスの予想通り、馬に速歩(はやあし)をさせて街道を進んでいる・・・凄く急いではいないけど、ノンビリでも無いって速さだ。


「有り難うアプレイス。後はこのまま少し後ろを追っていこう」

「了解だ。でもアイツはアーブルに行ってどうするつもりなんだろうな?」


「うーん...街のど真ん中に拠点があるとは考えづらいけど、ブリュエットみたいな協力者がいる可能性はあるな」

「なら、そこに転移門があるかもな?」

「無いとは言えないな」

「あれば面倒だぞライノ」


「ただ、これまでにエルスカインがホムンクルスじゃ無い...つまり、完全な支配下に無い奴のところに転移門を開いたことはない。今回の罠だって、あの錬金術師が造ったって設定だからフェリクスもすんなり受け入れたんだと思うし」


「なら協力者もホムンクルスだな?」

「そのはずだけどね」

「俺はドルイユ技師やパルレア殿と街中をアチコチ回ったから知ってるけど、アーブルは結構デカい街だ。路地裏とかに入られたら、空からじゃ追えねえ可能性もあるぜ?」


「その時はシンシアの探知魔法が頼りだな...まあ、ギリギリまで物理的に追ってみよう。いざとなったら俺が飛び降りて走って追う手もあるしな」

「徒歩で馬を追うのかよ?」

「そこは勇者だから大丈夫だ。それに街中に入ったらそれこそスピードをもっと落とすだろうしね」


「ああ、街中で馬を走らせてると衛士に捕まりそうだしな!」


このままアーブルに向かうと仮定しても、街中で何処にも立ち寄らずにそのまま海岸線沿いの街道に進む可能性もある。

フェリクスが街中に入ったら、俺が地上から追ってアプレイスが空から追うって言う二段構えで行けば、慌ててシンシアに頼らなくてもなんとかなるだろう。


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