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収穫

「と、いうわけで!今日からしばらく一緒に生活することになったミーシャちゃんです!みんな仲良くしてね」

離宮を管理する13人の使用人と2匹の賢い番犬たちを集めて、改めてしばらく一緒に暮すことになったミーシャの紹介に入る。歓迎のために拍手で迎え、メロスとアレスは遠吠えをして客人を歓迎した。


目を赤く腫らしながらも「よろしくお願いします」と丁寧に挨拶するミーシャ、礼儀正しいし可愛いし100点だよ!


「部屋は昨日と同じ場所を使っていいからね。朝食は7時、昼食は11時~13時の間。夕食は19時~20時の間だから、その間自由に過ごしてもらって大丈夫だよ」

「あの、メアリー様はどう過ごされるのですか?」

「私?畑仕事したり、契約している紹介や機関にお野菜を納品したり、肥料や種の買い付けとか、農作業に必要な道具の調整とか商会の人や取引先の外国の人との商談、会議……その日によるけど、色々?だから、昼食と夕食は曖昧にしてるんだ。予定で前後しちゃうから」

「あの!これからお世話になるのですから、私にもできることがあれば手伝わせて下さい。一方的にお世話になるのはアレクレス家の名折れですわ」


できることといっても……やってくれたらいいなってことは山ほどあるけど、貴族のお嬢様からすれば泥臭い仕事ばかりだし……。


「うちの仕事重労働だよ?土いじりとか、野菜の収穫とか。無農薬だから、害虫駆除もお願いしたりすることもあるけど……」

「やったことありませんが……精一杯頑張りますので、どうか!」


可愛い女の子に頭を下げられるの、ちょっと弱いんだよな~。まぁ、駄目そうならその時考えればいいか。


「わかった。じゃあ、明日から教えていくからお願いしてもいいかな?あと計算とか得意?慣れてきたら離宮の決済作業もお願いしたいな」

「任せて下さい!会計作業は家でもしていたので得意なので!畑仕事も頑張らせていただきます」


うん、いい返事。こんな可愛い女の子に農作業なんて気が引けるけど、同い年の子と作業をするなんて何十年振りだろう。ちょっとワクワクしている自分もいたりする。


遠くでメロスとアレスが吠えている声で話は一旦終了。多分害獣を捉えたのだろうからそちらに向かうことにした。



「おはよう!ミーシャ、よく眠れた?朝早いからちょっと眠いかな?」

「そんなことありません!昨日は22時には寝ましたので元気は余っております」

支給した作業着に袖を通している姿は公爵家の令嬢とは思えない野暮ったさがあった。でもそれを着こなすミーシャ、おそるべし。


さて、今日は1日を通して収穫作業だ。うちで育てているのは人参、たまねぎ、じゃがいも、茄子、トマト、トウモロコシ、オクラやインゲン、キャベツといった家庭菜園でも育てられる野菜たちだ。


今日は収穫時期でもある茄子とトマトの収穫だ。


「まず、茄子畑が近いし、茄子から収穫していこうか。収穫自体は簡単で、茄子のヘタの上を切り取るだけで大丈夫だよ。収穫するとき、15㎝前後……手のひらから少しはみ出るくらいの茄子が頃合いかな。皮が厚い茄子は育ちすぎで、実も固まって美味しくないから破棄ね」

丁度収穫する茄子の隣にある茄子がぼけ茄子だったので、ミーシャに触らせて見る。納得したように頷くと、もくもくと収穫作業を開始する。


物覚えが早いので、簡単な作業ながらもすぐに慣れてくれた。


「茄子を収穫するとき、虫食いが酷いのとぼけ茄子は破棄。形が悪いのはうちで食べて、形がいいのは契約している商会や機関に納品するからね」

「形がいいのは自分では食べないのですか?」

「味自体は変わらないからね。商品価値だけでいえば形がいい方があるんだよ。一応商品として売り出す以上、見栄えがいいものは対価を支払っている以上受け取る側に受け取って欲しいしね」

「そういうものなのですね……いつも形がいい野菜しか見てこなかったので、新鮮です」


ちょきん、ちょきん、と茄子のヘタを切り、収穫し、選別していく。手際がいいので切り戻しのやり方も教えて、ついでに作業してもらう。


「切り戻しは茄子もそうだんだけど、さまざまな野菜を長く収穫するためにも大切な作業なの。茄子とかトマトって、樹に側枝がついてそこから実をだすんだけど、ひとつの樹に実がなりすぎるとうまく育たたなくなるから、花がついた頃合いに一番上の側枝を切り取ることでまた美味しい実をつけれるんだ」

「手間がかかるんですね。実をつけたらその枝はもう終わりだと思ってました」

「秋前だし、トマトや茄子の収穫時期だからね。薔薇とかも花が咲いて、枯れて、また実をつけてって繰り返すでしょ。植物もそういうサイクルで1年を過ごすから、そこで終わりってことはないの」

「いつも食べている食材たちはこうやって職人の手で育てられるんですのね。いつも食べている野菜を作っている人のありがたみも増しますわ。農家の方に感謝しないと」

「さ、今日収穫できる茄子を収穫したら、次はトマトの収穫に入ろう!今日の納品する商会が10時に取りにくるから、それまでに収穫を終えたいわ!」

「はい!頑張りますわ」

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