農業王女と悪役令嬢の1日(次の日編)
私の1日の日課は早朝から始まる。野菜たちの水やりと肥料の調整のために畑へ来ると畑の前には昨晩この畑を狙いにやってきて、メロスにたち仕留められた獣たちが綺麗に並べられている。これが今日1日のご飯、またはこの獣の肉や毛皮を買いに来る商人の商品にもなる。
死体を回収すると、使用人たちと一緒に野菜の世話が始まる。時期によっては畑を耕したり、雑草を抜いたりもあるが、今日は収穫も近いので害虫駆除と水やりがメインだ。
屋敷には男性の比率が多く、10人、女性は3人という配置だ。
農作業に慣れている人員で日課を済ませると朝食に入る。今日は収穫したジャガイモのポタージュスープとパン、サラダだ。実に庶民的だが、この国では贅沢に入る部類の朝食。
とくにこのふわふわの食パンはここでしか食べられない。なんたって私が再現したからね。
ご飯を食べていると昨晩泊まったミーシャ嬢が起きて来た。時刻が午前7時を回ったところだ。
「おはようございます。……すみません、もう少し早く起きようと思ったのですが、ベッドが、その……気持ちよくて」
「北方の国から輸入したベッドだからね。私寝具には結構五月蠅いほうなんだよ?」
王国のベッドはまるで保健室のベッドのように固いからな。鉄で出来たベッドにマットレスを引いただけなので寝心地はあまりよろしくないし。
「メアリー様はお早いのですね」
「うん。今日は5時に起きたかな」
「随分とお早いのですね……昨日は1時頃に就寝したので、実質睡眠時間は少ないのでは?」
「私自身ショートスリーパーだし、そこまで苦にはならないの。それに畑の様子が心配になっちゃって……」
「しょーと……?よくわかりませんが、そうなのですね。次からはもっと早く起きれるように心がけますわ」
「お客様がなにいってんの。ゆっくりしてちょうだいな。さ、ご飯食べて!朝ごはんたべたら9時に獣を買いにくる商人と、お昼前に野菜を買い付けにくる本城の使用人が来るから、その後に王城にいきましょ!先に昨日の経緯をお父様に伝えないと」
「わかりました。なにからなにまでありがとうございます。なにか私に手伝えることがあれば、なんでも言ってくださいね。恩ばかり受け取り過ぎているので、少しでもメアリー様にお返ししたいですから」
「うん!じゃあ、なにかあったらミーシャ嬢にお願いするね。さ、冷めないうちに食べてね」
使用人たちが配膳してくれた料理の前に座り、ミーシャ嬢も食事を始める。うちが育てた野菜を「今まで食べた食材の中でも一番においしい」とべた褒めしてくれたので心の中でブイサインを送っておいた。