第117話【Fight me】
ナニイッテンダコイツ
ロダン達のお隣、 高い塀に囲まれた屋敷。
その屋敷の住人達は何処か切羽詰まっている様子だった。
一人のメイド服のおさげの少女が庭で稽古をしていた、 恐らくは武道の類である。
ぽん、 と幾つもボールが投げ込まれる。
少女はそのボールを打ち落とす、 幾つも幾度も。
「凄いじゃないか」
「お褒め頂き恐縮です、 若様」
跪く少女。
「大会へのウォームアップは充分かな?」
「えぇ、 大会に優勝して悲願を叶えたいと思います」
そこに飛び込むテニスボール。
少女はそのテニスボールに拳を打ち込んだ。
テニスボールは壁にぶつかりひしゃげた。
「・・・・・このボールは?」
「投げてない、 もしかして・・・隣から飛んで来た?」
「若様、 御戯れを、 この塀の高さはそう簡単に超えられる物じゃありませんよ」
「じゃあ何処から?」
「・・・・・」
黙る少女。
「すみませーん、 ボール入ったので取らせて下さーい」
モルガナが外から声をかける。
「・・・・・」
少女が門の所に向かう。
「あ、 すみません、 ボールが・・・」
「ボールと言うのはテニスボール?」
「はい」
「如何やってこの塀を超えて来たの?」
「隣でテニスをやっていて」
「隣・・・最近引越して来た人?」
「えぇ・・・」
「・・・・・貴方がボールを中に?」
「はい」
「・・・・・」
門を開ける少女。
「すみませ」
「ハッ!!」
掌底を繰り出す少女。
受け止めるモルガナ。
「急に危ないでしょうが、 何考えている」
「っ!!」
ぱっ、 と離すモルガナ。
「・・・貴女・・・何者ッ!!」
「いや、 ボール返してよ」
「・・・・・え?」
「ボール、 テニスボール、 隣でテニスして飛んで行ったの」
「・・・・・貴女・・・相当の実力者の様ね」
「はぁ? 何言ってんの? そんな事よりもボール返してよ」
「ボールを返して欲しかったら私と一手試合しても良いかしら」
「じゃあ良いよ、 帰ります」
そそくさと帰るモルガナ。
「待ちなさい」
少女が後を追う。
「何よ? そこまで言うならボールはもう良いよ、 たかがボールだし」
「そう言う問題じゃない」
「・・・あ、 窓ガラスを割ってしまった?
それだったら弁償しますよ」
「そういう問題でもない」
「じゃあ如何言う問題よ」
流石にイライラし始めるモルガナであった。
少女もこのまま帰らせる訳には行かないと思った。