第95話【Corrupt】
何もかもが遅かった
フギットの魔導義肢が音が鳴り変形する。
手首から先が下がり腕の付け根部分が露出する。
その付け根部分には穴が開いていた。
懸命なる読者諸賢ならばもうお分かりだろう。
フギットの魔導義肢にはギミックが存在し、 腕から武器が出る様になっている。
その武器とは炎魔石発射機、 炎魔石は炎の属性を持った魔導石で
それを発射する事で相手に攻撃する代物なのだ。
炎魔石が発車されデュラハンに直撃、 デュラハンは燃え盛り暴れ回るが
炎はアンデッドの弱点の一つ、 次々と炎魔石を打たれ続け燃え上がり
燃え尽きて黒い炭となった、 コキコキと再び指を鳴らして元の状態に戻すフギット。
「時間を喰った!!」
フギットは再度走り出した。
「フギットさん!!」
花子とカリエが後から追いかけて来た。
「アンタ達か!! アモールの部屋はこの先だ!! 急いでくれ!!」
「はい!!」
フギット達は奥に進みアモールの部屋の扉を開けた。
「アモール!! 無事・・・か・・・」
フギットが勢い良く扉を開けるとそこに居たのは・・・
「あらフギットじゃない、 丁度良かったわぁ」
五体満足の女性だった。
道化の様な恰好をしてベッドに腰かけていた。
「アモー・・・ル? 手足・・・一体・・・」
「ふふふ、 見ててね」
アモールは傍の机に在った林檎を手に取ってジャグリングを始めた。
「どう? どう? 凄いでしょ?
漸く私に手が戻って来たのよ」
「アモール・・・その手足は一体・・・」
「これ? アンドゥ様経由で魔王様のアンデッドにして貰えたのよ」
「・・・・・何を言っている?」
呆然とするフギット。
「いや、 フギット私の為に頑張ってくれていたじゃない?
そんなアンタを見ていて私も切ない気持ちになってたのよ
色々アンタに心無い事を言って自己嫌悪になったりして・・・
そんな時にアンドゥ様がアンデッドになって新しい手足を貰えば五体満足になれる
って誘ってくれたのよ」
「アンドゥって誰だ?」
「魔王様の直属の配下の四天王の一人」
「・・・・・」
フギットは瞑目した、 まさかアモールがアンデッドになってしまうとは。
「ねぇフギット、 今の私、 如何?
五体満足にやっと戻れたしすごくいい感じだと思うんだけど」
ニコニコと笑うアモールはフギットに無邪気に尋ねたのだった。




