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天使?人に会う。  作者: ヒモ
1/5

始まり

【0】


僕は天使だ。




「大丈夫ですか?」


「…」


「…あの、大丈夫ですか?」


肩を叩かれた。


「…え?」


これが彼女との出会いだった。



「もうー、そりゃ誰だって公園のベンチで死にそうな顔して座ってたら声かけますよー。」


「…なるほど。」


つい先程、それこそ10分ぐらい前に彼女とは出会った。

彼女が僕に声をかけてきたのがきっかけだ。

死にそうな顔をしていたらしい。

天使は死なない。


「それよりー「名前」、教えて下さい!」


「名前?」


「私の名前は「橘 桃花」、さっき言いましたよね?」


「あぁ」


「あなたのお名前は?」


彼女の会話はテンポがはやい。

彼女とはさっき会ったばっかなのにもう名前だ。

天使に名前はない。


「名前…」


「…?」


「名前か…」


ここだと、名前は前と後に分かれてるらしい。

前に普通の、後に普通だったり普通じゃなかったり。

普通の基準はいまいちよく分からない。


「あけの…」


「あけの?」


「あけの…せい?」


「あけの せい さん?」


「あぁ、それだ。」


「…字はなんて書くんですか?」


「字?……「明野 星」…で大丈夫か?」


「はい?」


僕は近くにあった木の棒で足元の砂に字を書いた。


「別に読み方はなんでもいい、セイでもほしでもショウでも。」


「なんでもはよくないでしょう…」


「好きなのを選んでくれ。」


「好きなのって…明野さんはなにが1番好きなんですか?セイですか?」


「好きなのはない。強いて言うなら「ジョウ」がいいのかもしれない。」


「なんか新しいのきたし…。」


「明野と、呼んでくれ。」


「セイ君はなにをしてるの?」


彼女は話を聞かないらしい。


「別になにもしてない。」


「学校は?」


「学校?」


「学校って知ってる?」


「一応は知ってる。」


学校というのは若い人間たちが集まる場所だ。

若い人間は行かなくては行けないらしい。

行かないといけないと決まってるらしい。

天使に学校はない。


「…君って変だね。」


僕は変らしい。


「そうか。」


「あのさ、なんであたしが君に声かけたか分かる?」


「死にそうな顔をしてたからでは?」


「死にそうな顔してても普通は声かけないよ。」


彼女の言ってることは分からない。


「君、何歳?」


「歳か…」


そんなの数えたことがない。

そもそも「歳」という概念すらない。

僕は…僕は何歳だ?


「いくつに見える?」


彼女の言った歳にしよう。


「うわー、めんどくさ。」


僕はめんどくさいらしい。


「あたしより年下なのは確かだよねぇ」


な訳ない。


「お前はいくつだ?」


「年上に向かってお前はないでしょー。」


「すまない。」


「…なんか調子狂うなぁ。」


ここで1つ疑問に思う。

僕は今、なにをしているのかと。

なぜ、僕は彼女と喋っているのかと。


「名前で呼んで。」


「橘 桃花 歳はいくつだ?」


「…なんかもう、君がよく分かんないなぁ。」


こっちのセリフだ。


「あたしは今年で20歳だよ。」


「なるほど、じゃあ僕は19歳だ。」


彼女の下を言った。


「はっ?同い歳じゃん。」


「……なるほど。」


凡ミスをしてしまったようだ。

彼女は今年で20歳だ。

厳密に言えば今年で20歳になるだ。

彼女はまだ19歳だ。


「今年で19歳だ。」


完璧だ。


「…それほんと?」


ほんとな訳ない。


「ほんとだ。」


「なんかさぁ、さっきから君あたしに嘘しかついてなくない?」


当たり前だ。

全部嘘に決まっている。

僕は天使だ。


「名前とかも嘘っぽいし…」


「どこがだ?」


「明野 星 だっけ?」


「あぁ。」


「それ本名?」


「…変か?」


「変って…いやまぁ……変…なのかなぁ…?」


「結構、分かりやすいと思ったんだけどな。」


「さっきから言ってる意味もよくわかんないし。」


「すまない、気をつける。」


「…う〜ん。」


名前は難しいものだ。

先程も言ったが普通がよく分からない。

ここでは先にくる名前、苗字というそうだがそれは最初から決まっている。

生まれる前から決まっている。


しかし後ろの名前は生まれる時に親が決めるらしい。

原則、好きな風に付けていいそうだがそうもいかないのが人間だ。

好きなのを付けてはダメだ。

理由はよく分からないが普通のじゃないのを付けるとあまり良くないことになっている。


僕からしたらあまり意味が分からない。

なんでも好きなのを付けていいとなっているのだから別に好きなのを付けてもいいと思うのだが、そこは普通のありふれた名前を付けるのがルールだ。

見えないルールだ。

そもそも自分の名前なのだから自分で付けた方がいいのではないか?


このように人間は見えないルールに縛られて生きてるいる者達だ。


「明野」は結構いい線いってたと思うのだが、「星」がダメだったのか?

「名前」など、どうでもいいだろうに。

ただの呼び名だろう、分かればよしだろう。


「まぁいいや、でさ話戻すけど。」


「…。」


「あたしはさ気になったから声かけたの。」


「ほう。」


「どうしてこんな平日のお昼時に死にそうな顔した綺麗な少年がベンチに座ってただぼっーとしてるのかなぁと?」


「することがないからな。」


「…君、1歩間違えれば不審者だよ?」


僕は天使だ。


「しかも高校生かと思ったら、本当か知らないけど19歳らしいし。」


「19歳でも高校生はいるだろう。」


残念だがそのくらいの知識はある。


「留年してんの?」


引っかけだったか。


「高校生ではない。」


「じゃあなに?やっぱ大学生?」


「また学校か…」


「はっ?」


この世界は学校が多すぎる。

なんで4つも種類があるのだ。

小中高大とそんなにいらないだろう。

1つでいいだろう。


せめて小学校と中学校は一緒でもいいのではないか。

ここでは義務教育というので小中は行かなくてはならないらしいからな。

そういうルールだ。

高校から先は行くのは自由になっていて、大学もまた然りだ。


だが、ここでもまた人間の見えないルール。

ここでの人間は基本的には高校にも大学にも行くようになっている。

特に高校なんてほとんどの人間が行っている。

行っても行かなくてもいいと言っているのに…難しい。


そもそもなぜ人間は皆、学校に行くのか。

別に行きたいのならいいが行きたくない人間はいないのか?

学校とはそんなに素晴らしいものなのか。

それなら僕も少し興味が湧いてきた。


「大学にも行ってない。」


「なに?じゃあ…働いてんの?」


「働いてもない。」


「……もしかしてニート?」


「ニートでもない。」


「ニートって無駄にプライド高いもんねぇ…」


「そうなのか。」


「…。」


ニートはプライドが高かったのか。

プライドがないからニートだと思っていたのに。

これは不思議なことを聞けた。


「あたしマジで変な人に声かけちゃったかも…。」


「僕になにを求めている?」


「…いや別になんともないならそれでいいんだけどさ。」


「僕は大丈夫だ。」


「大丈夫ねぇ…」


「…。」


「…。」


「…。」


「まぁ、いいや。じゃっ、あたし用事あるから、バイバイ。」


彼女はそのまま行ってしまった。


一体なんだったのか。

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