豪鉄族
テレビで金原 ギンが八回目の再選を遂げたニュースが流れた。
それをめいはぼんやり眺めていた。
豊齢線がうっすらと浮き出ているが、あの褐色の肌と輝く銀髪を見るとやはり銀武に間違いない。
(やっぱりあの人だ・・八回目の再選ってことは、二十八年議員やってるってこと?)
年を感じさせない美貌に鳥肌が立った。
ふとニィヤの死体を思い出した。
(いのちを・・)
「なんであんな光景が見えたのかな」
背後から誰かに抱きしめられ驚いた。
「ひとりでぶつくさ言っちゃってどうしたのよ」
ルルだった。
「あのね、この人がもしかしたら私たちの仲間かもしれないの」
ルルはテレビをみて眉間に皺を寄せた。
「え?あのおじさんが?やだぁ」
市長だったのでめいは焦った。
「違うってほら、おじさんの後ろの・・」
指で押さえたところを見るなり、ルルは腰を抜かした。
「マルスクラン!」
「まるす・・それって何?」
(確かこの間倒したベーゼも言ってたような)
「豪鉄族。戦争が三度の飯より好物のおっそろしい種族よ」
顔を青くさせながらルルはチラシの裏にクレヨンで絵を描いた。
「説明してなかったわね。アヤカシ界には主に三つの種族がいて、ヨミたち十字架族と黒天狗族、そして豪鉄族・・マルスクランともいうわね。それらは自分が頂点に立とうと互いにいがみあっているの。特に十字架族とマルスクランの相性は最悪ね。ベーゼが現れる前から戦争状態だったの」
めいは首を傾げた。
「でも、この間の十字架族の子はあの人と一緒だったよ」
「おかしいわね。相手が子供であろうと抹殺するくらい血の気が多いはずなのに」
ルルは顎を撫でた。
「ルルちゃん、顎が汚れてるわ」
めいはハンカチで汚れを取った。
「ありがと」
よく見るとルルの手がチョコレートで汚れていた。
まさかと思い自分の服を確かめると案の定。
「ルルちゃん!」
ルルはすたこら走り去った。
その頃、テレビ出演を終えたギンは控室に戻った。
誰もいない部屋でパイプ椅子に座りお茶を飲み、溜息をついた。
「おつかれさま、ギンさん」
「だから、その名はやめなさい」
彼女の胸についた鋼鉄の薔薇のブローチを外した。
するとブローチが光り、ニィヤの姿に変わった。
長時間変身していたので伸びをした。
「まさかブローチになっているとはあの人たちも思わないようね」
「安心はしていられませんがね。演説中に言い寄られたときは冷や汗がでました」
ニィヤは顔を覗き込んだ。
「全然感情が顔から出ないのに。ところであの十字架族の子たちはどうするの」
「・・」
「様子見ってことね。あの生意気な赤髪の子とはウマが合わなさそうだけど」
ニィヤは依然として黙っている銀武の前で腕を組んで仁王立ちした。
しばらくして銀武は口を開いた。
「誰か来るぞ」
「はいはい。ブローチに変身するのも飽きちゃったけどな」
「ワガママは慎みなさい」
ニィヤは再びブローチになった。
それと同時に彼女の秘書がドアを開けた。
「今から記念撮影だそうですので来てください」
「はい、ただいま」
さっきの仏頂面とは打って変わってにこやかに出て行った。
胸の鋼鉄の薔薇が光った。