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Howling Moon  作者: 椿屋 ひろみ
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ニィヤ・ガウディヌス

桜田町の議会選挙の演説中、聴衆の中にベーゼが紛れていた。

立候補者の一人・金原 ギンに匿っている少女を出せと要求するベーゼ。

その場にたまたま居合わせたヨミとめいはすぐさま変身し敵と戦った。

苦戦する中、立ち上がったのはかつてヨミと出会ったことのある緑髪の幼女・ニィヤだった。

ニィヤは呆れた顔でヨミに言った。

「それにしても情けないわね。こんなレベルのベーゼ相手に苦戦するなんて」

カチンときたヨミは言い返した。

「じゃあ戦ってみせろよ。ドチビが」


煽りにニィヤは顔をヒクつかせた。

(落ち着けニィヤ。悪口は自分のコンプレックスって言うじゃない)

「銀武、銀影盾に変身よ」

「ニィヤ様にはまだ使いこなせないのでは」

苛ついたニィヤは大声になった。

「いいから!」

「仕方ないですね」

二人は変身のキスをした。


巨大な盾が再び現れ、ヨミは目を大きくした。

「なんだ・・これは!」

それをドヤ顔で手にしたニィヤは持ち上げようとしたが様子がおかしい。

「?」

二トンの盾がびくともせず顔を真っ赤にしていた。

ついに諦めたニィヤは蹴った。

「もっと痩せなさいよ!」

盾から銀武の冷たい声がした。

「ムリです」

そのやりとりにヨミは溜息をついた。

(やっぱりな)


「お前らいつまで遊んでる!」

すると置いてけぼりを喰らったベーゼが襲いかかってきた。



一方、アヤカシ界で突如現れた銀武にめいは呆然としていた。

目の前の敵は巨大で、目玉を無数につけた皮膚中に王水の体液が流れている。

「来るぞ!」

ベーゼの触角から二人は逃げようとした。

だが、めいは石につまづき、前にいる銀武の背中を押しかけた。

「あぶない!」

ところが彼女の姿は影のようにすり抜けていった。


するとめいの視界に奇妙な光景が浮かんだ。

薔薇に囲まれながら、盾を持ったツインテールの幼女の影絵がオルガンの音と共にゆらゆら動いているのだ。

恐怖を覚えるほど奇怪なメロディーが頭が割れそうに鳴り響いた。

(何なのよ!)

耳を塞ぎその様子を眺めていると、意に反し体が勝手に動きだした。

「助けて・・助けて」

聞き覚えのない声にパニックになりながら、めいはついに幕を引っ張ってしまった。

白い幕は簡単にはらりと落ちた。

「・・きゃあ!」

なんとその人形は継接ぎだらけのニィヤの死体だった。

虚ろな目を見開き、口から腐敗した体液を漏らしながら最後に呟いた。

「いのちを」


めいは手を引っ込めた。

銀武は振り返り、怯える彼女に首を傾げた。

「どうした」

「なっ・・なんでも」

(もしかしてこの人、あの子を殺したんじゃ・・)

敵の気配を感じた銀武は銀影盾を構えた。

「また来る!」

鞭状の触角が唸りをあげて襲ってきた。

銀武はめいを抱え飛ぼうとしたが、触角が脚に触れ、鋼鉄のブーツが音をたてて溶けた。

とっさにめいを屋根の上に投げ飛ばし、溶け続けるブーツを捨てた。

「銀武さん!」

めいは屋根から降りようとした。

「近づくな!」

背後の靴が液状になり煙となって消える中、銀武は憎悪の目を敵に向けて言った。

「命の水を持っているのはお前か?」

「何のことだ」

「ならば生かす意味はない」

独り言を言った銀武に向かいベーゼはまた触角で攻撃した。

それを華麗に避けた。


そのやりとりをめいは屋根の上で眺めていた。

(強すぎる・・まるで敵を弄んでいるみたい)


暫く逃げていた銀武は急に地面を拳で穴を開けた。

「なんだと!」

ぽつりと口にした。

「魔障封印」

敵を中心に五芒星型の光が現れ、遂に敵を封じ込めた。

ベーゼは徐々に侵される感覚を気にしながら強がった。

「マルスクランの分際でベーゼを倒せるとでも・・」

さらに彼女は怒りの表情を見せた。

「ベーゼ以前にお前は・・」

銀武の呟きは敵の唸り声に掻き消された。


彼女は銀影盾で敵を包み、両手の拳を合わせた。

「影の銀の名の元、煉獄に砕け散れ」

(この間の呪文と違う・・)

「苦しみながら死ね!!」

感情的になった銀武の素足からケロイドのようなものが広がって見えた。


「やめて!銀武さん」

めいは叫んだが彼女の姿は敵もろとも燃えて消えてしまった。


気が付くと元の世界に戻っていた。

「あれ?銀武さんは」

ヨミはコンビニで買ったお菓子を食べていた。

「なんのことだ?銀武ってだれだよ」

「え?だってさっきまで一緒にいたじゃない」

「それよりこれ食えよ。うまいぞ」

必死になるめいの口にイチゴバーを差し込んだ。

「・・おいしい」


その様子を屋根の上で二人は見ていた。

「もう、なんでベーゼを倒した時間を切り取ったのよ」

「彼女たちに会うに早すぎた」

いつもの感情が読み取れない顔にニィヤはふくれた。

「あんたのことがわからないわ」

「わかる必要もないだろう」

さらにニィヤはイライラした。

 

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