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Howling Moon  作者: 椿屋 ひろみ
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鋼鉄の薔薇

昨晩遅くまでゲームをしていたヨミが大いびきをかきながら豪快なポーズで寝ていた。


「金原 ギン、金原 ギンに清き一票を」

選挙カーが通り過ぎ、若いウグイス嬢の声が近所中にこだました。

その声でせっかくの睡眠を砕かれたヨミは窓を開けて叫んだ。

「うるせぇ!」

フーフー息を漏らしながら怒るヨミの背後でめいは新学期の準備をしていた。

「もうお昼よ。いつまで寝るつもりなの?」

「だって、近頃街歩くたびにあいつらがうるせぇから・・」

その様子をめいの母が微笑みながら言った。

「ヨミちゃんたちにはまだ早いものね。もうすぐ市議会選挙があるのよ」

「なんだそれ」

「まぁ、この街の議員さんを決める選挙ね。今週末が投票日だから必死なのよ」

ヨミは頭を抱えた。

「えー週末までこんな感じかよ。耳が潰れちまう」

「大袈裟ね。さ、気分転換に出かけるよ」

めいはヨミの首根っこを掴み図書館に連れて行った。


「おまたせ」

借りた本を返しためいは図書館前でジュースを飲んで待っているヨミのところまで駆けた。

「おう、ついでにエイイレいかねぇか?お菓子買いたいんだ」

ヨミは嬉しそうにコンビニでしか売っていないお菓子の話をめいにした。

その道すがら選挙カーが止まっていた。

「またあいつらか。ちょっと文句言ってくる」

「ちょっと!」

すっかり怒りモードのヨミは選挙カーのところまでずんずん歩いた。


めいはふと車の上で立っている人を見て驚き、ヨミを引き戻した。

「なにすんだよ!」

「あの人よ!この間の銀の鎧を着た女の人」

たすきをかけた菫色のスーツの女は少し老けて見えるが銀武そっくりだった。


「はぁ?まじかよ」

焦りを抑えきれないめいは演説を聴いていたおばさんに訊ねた。

「この人、誰ですか?」

「へぇっこの年で政治に興味あるなんて感心ね。この人は金原 ギン。何期やってるか忘れちゃったけど、もう七十越えて現役の女性議員よ」

ヨミはじと目で言った。

「七十って・・もうばぁさんじゃねぇか。絶対人違いだろ」

「本当にこの人なんだって。信じてよ」


老婦人にしては背筋がまっすぐでモデル体型の彼女はヨミ達に気づかないまま演説を繰り広げた。

すると聴衆の一人がギンに指差し喚きはじめた。

「早く匿っている少女を差し出せ!さもなければお前の命を頂戴する!」

男の物騒な発言にざわめいた。


ギンは顔色一つ変えることなく立ちすくみ、胸に輝く鋼鉄の薔薇ブローチを触った。

警備員がやって来て騒ぐ男を取り押さえようとした。

「人間風情が止められると思っているのか」

男は警備員を謎の力で突き飛ばした。

その勢いでサングラスが飛び、真っ黒な目が見えた。


「おい、こいつ・・ばあさんが危ない!」

「私もそう思ったわ」

ヨミはめいに変身のキスをした。

バトルスーツを着たヨミは男に向かって斬りかかった。

「そこにもいたか」

白い触角を腕から伸ばし、ヨミの四肢を捕まえた。

「・・!」


身動きができないヨミは敵の触角に弄ばれた。

「う・・ああ!」

(みんな見てるのに・・)

辺りを見ると聴衆の動きが止まっていた。

(時を止めた・・?)

「狙っていた者とは違うがやはり十字架族の女は貧弱で旨いな」

優越の表情でベーゼはヨミにとどめの一発を差し込もうとした。


するとどこからか回転する大きな円が飛び、触角を切断した。

「仲間、みっけ」

触角の残骸を掃いながらヨミがその方を見上げるとこの間の緑髪の幼女が立っていた。

「お前やっぱりそうだったのか!」

「お前って・・女の子なのに口が悪いわね。助けてやったわよ」

その背後に大きな影が見えた。

ゆらりと現れた影にヨミは目を見開いた。

「・・ばあさん!」

銀武の肩に乗った幼女は怒った。

「ちょっと!ばあさんじゃないわ。あたしの用心棒の銀武よ」

銀武はぽつりと言った。

「ニィヤ、彼女は仮の姿しか知らないのだ。そう言うのもおかしくはない」

「でも、納得いかないわ」

ニィヤは頬を膨らせた。


・・次回に続く

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