拳神エリカ
校庭の遥か奥。
ゴウキの縄張りであり、
喧嘩部の敷地に一歩足を踏み入れたガクト。
あきらかにさっきまで感じなかった人の気配を背後に感じ、
振り向くと、
おさげの髪に、
とても女とは思えないほどの巨体で、
ガクト以上の長身の、(ちなみにガクトは180㌢80㌔)
目付きの鋭いイカつい女が立っていた。
その女が放つ、
恐ろしい殺気に、ガクトは背筋を凍らした。
「おいコラ。
ここがどこで、
私が誰で、
で、
誰が今からここに来るか分かってんだろ?
貴様」
正に教科書の様な礼儀正しいコユキの口調とは正反対な、
言葉が暴力に近い、
喧嘩を吹っ掛けるような荒々しい口調。
「番長じゃねーな。
女だろ、ギリギリ。
お前がエリカちゃんか。
だが俺は番長を見にきたんだ。
お前に用はねえ。」
「あ?
お前か?
新入生で大魔王の血が入ってるとかゆう、
威勢だけの雑魚は。
米粒ほどしか感じない、チャチなオーラでそこまで去勢張んのは笑えるよコラ。」
「じゃあ、笑えよ。」
次の瞬間、地に着くほど拳を大きく振りかぶったエリカ。
「じゃあな。
肉片一つ残らない神の拳を喰らえ。
」
エリカが闘気を放出する!
ガクトは防御体勢に入ったが、
「う、、、!!!」
一瞬で自分が死ぬのを悟った!!
掟を破ったガクトは、初めて学園のルールが絶対的なものだとゆう事を確信した。
コユキ、ゴウキ、エリカ、
学園の三大勢力には決して近づかない事。
「甘かった!!!!
ば、化け物がぁぁぁ!!!!」
振りかぶった拳を放つ。
「神の拳」
「ライトニング ホーリー シールド ~光より愛をこめて~」
「!!!!」
突如光り輝く巨大な壁がガクトの前に現れた!
エリカの拳が光の壁にぶち当たる!!
衝撃で空間が揺れ動き、
中和された威力のエリカの拳は、
ガクトの顔面スレスレ、寸での所で止まる。
光の壁はその衝撃で弾け散った。
「コユキ!」
コユキが表れた。
「流石ねエリカ。
光子を固体化した私のライトニングホーリーシールドを、
衝撃で破る事は計算上不可能。
拳神と呼ばれるに相応しい。
素晴らしいわ、アナタの拳は。」
光の壁を造りだしたのはコユキだった。
「た、助けられたのか?
俺が、、、このハゲに、、、
くっ!!!」
一度は死を悟ったガクトだったが、
コユキの力により命拾いをした。
「てゆーか、
なんで生かす?
こんな雑魚。」
「私たち学園のトップを、
噂ばかりで目の当たりにしたことのない生徒が多すぎるわ。
生かして帰す。
そして改めて私たちの恐ろしさを知らしめる。
高みを目指す生徒達の士気を上げる。
それが学園全体のレベルを上げる事に繋がる、
そう思っただけの事よ。」
「なるほどな。
でも今回だけだ、次はねぇ。
この喧嘩部にゴウキとあたし以外、
入部の許可無しに踏みいる事は、
学園のどんな奴でも認めねぇ。
先公だろーが、コユキ、
お前だろーがな!!」
「ええ。分かったわ。
ガクト。
アナタも拾った命を大事になさい。
そして、
私たちがどれほど次元の違う強さを持つか、
改めて知るがいいわ。」
脱力感にみまわれ、
茫然とただ立ち尽くすガクト。
「、、、、、今はまだ勝てねえけど、
いつかてめえらをぶっ倒す、、、!!」
「雑魚が。」
「それよりもう直ここへゴウキが来るわ。」
邪気が押し寄せる。
大地がざわめく。
地震があちこちで起き、
雪山では雪崩が、火山では噴火が活発化する。
大気が震える。
上空の雲が、逃げるように学園から消えてなくなる。
コユキ、エリカ、ガクトにその邪気が近づくに連れ、
全身に見えない無数の針が突き刺さるような、
そんな痛々しい気を肌に感じる!
「い、痛てぇ、、、!!!」
「はー。
雑魚だな。
ゴウキの気で死ぬんじゃねーか?
雑魚すぎて」
「大丈夫よ。
サンシャイン テリトリー~太陽に溺愛されし区域~」
まばゆい、
暖かい結界がコユキを中心に辺りを包みこむ。
その結界の力により、
さっきまで感じていたゴウキの放つ気による激痛を、
全く感じなくなったガクト。
「この結界から出なければ死ぬ事は無いわ。」
重力を操る。
壁を造る。
結界を造る。
「、、、コユキか。
コイツ、マジですげえ。」
そして現れた。
超等級クラス在籍の、
最も卒業に近い男、
神風学園番長、剛力園 剛気見参。