ガクト
昔昔昔。
神さまは世界をつくった。
宇宙を描いて、そこに星を散りばめ、
そこに命ある生き物をうみだした。
昔昔。
ひとつだった世界は、神さまの力によって真っ二つに分けられたと伝えられている。
光と闇。
善と悪。
陽と陰。
重なり合うことのない、この異質なふたつを、ひとつの世界に置いていては、いずれ世界は消えてなくなってしまうだろう。
そう思った神さまは、
2度と交わることのないよう、
聖人世界と、魔人世界のふたつに分けたのだ。
昔。
魔人世界から、次元の壁をぶち破って、
聖人世界にやってきたひとりの人間がいた。
彼は、自らを魔王と名乗り、
聖人世界を闇で覆い尽くそうとした。
しかし、
その魔王の計画は、聖人世界の伝説として今も語り継がれている、勇者によって打ち砕かれた。
勇者は、悪しき魔王を倒したと伝えられている。
そして現在。
桜の降りしきる穏やかな日。
今日から高校生活を送るひとりの若者がいた。
「じゃ、行ってくるわ。とりあえず、喧嘩売ってくるやつがいたら、2度と笑えないくらいボコボコな顔にしてやるか」
彼の名はガクト。
人口30人に満たない、自動販売機もないような、山奥の村で育ったひとりの少年。
16歳になったガクトは、この山奥の村を出て、
200キロほど離れた、小さな町の小さな高校に通うことになった。
ガクトの父親が、家を出るガクトを見送る。
「ガクト~~~ォ。目立った事だけはするな~~~ぁ。
われわれが平和に暮らすためには~~~ぁ、
大人しく過ごす他ないんだ~~~ぁ。」
「分かった、分かった。
んじゃ、もう行くから。」
「行ってらっしゃ~~~ぃ。」
村を、家を出て、
200キロ先の高校に、歩いて向かうガクト。
そんな遠い所まで、歩いて通うって、どうゆう事?
目立った事したら、平和に暮らせないってどうゆう事?
その答えは、
イヤォォォォ!!!