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絶望島 セイゾンホンノウ  作者: ゆぱへす
1/1

-君とこの果てることのない絶望を-


登場人物


<古賀白高校の人間>

小野(オノ) 達也(タツヤ)

男性 17歳

・古賀白高校、陸上部部長、仲間を大切に思い優しい性格である。

リレーと長距離の選手。


佐々(ササキ) 芽衣(メイ)

女性 17歳

・男よりも男らしい性格で喧嘩には負けた事は無い。勇猛果敢な性格だが虫だけは苦手。

長距離の選手。


紫流(シリュウ) (アキラ)

男性 16歳

・達也たちの後輩だが口は悪く、芽衣とよく喧嘩する。ハワイに旅行した時に射撃経験があり拳銃を扱い方を知っている。

ハードルの選手。


水野(ミズノ) (シズク)

女性 16歳

・丸眼鏡をかけた少女、見かけは大人しいが陸上部の中で一番足が速く、大会に出た経験がある。

短距離走の選手。



<達也たちより島に先に来ていた人達>

天野(アマノ) 恵美(メグミ)

女性 26歳

・黒いコートを身につけた女性。「アリス」と言う名前の人を捜している。

銃の使い方に慣れており、ただの一般人には見えない。


ネクロ

男性 33歳

・本名不明、達也たちを助けてくれた。この島の謎を調べているらしい。

日本人ではなく日本語もカタゴト。


ルビア

女性 ?

・達也たちを屋敷に案内してくれたメイド、常に生気のない表情であり人間とは思えない肌の色をしている。






「………。」


達也は薄暗い部屋の一室で鏡の前に立っていた。




俺達は旅行を楽しむ為に、この島に来た。


だが俺達は今、まさに死を目前にしている。



目の前には拳銃を持った自分がいる。




「悪い夢なら…覚めてくれ。」








Act,1 埋められた恐怖














俺達、古賀白高校の陸上部は部員4人の淋しい部活だった。大会の際は周りの高校と共同参加。

そんな陸上部が廃部にならないのは部員全員が大会に通じる才能を持っているからだ。


たった部員4人だったけど楽しかった。


部長の俺「小野 達也」に男まさりの副部長の「佐々木 芽衣」口が悪いが責任感がある「紫流 彰」大人しそうな見た目に反し足の速さは学校1番の「水野 雫」


ある日、芽衣の言った一言から始まった。







芽衣「達也!! 春休みにここ行かないか?」


部室で芽衣が達也にパンフレットを押し付けた。


達也「なになに…『自然溢れた鵜没島に一週間の旅行』お前な…大会前に練習サボるつもりか?」


芽衣「違うわよ!!部活の練習も含めて行くのよ。私と達也に雫ちゃんで…」



部室内の椅子で寝ていた少年が起き上がった。


彰「なぁ芽衣先輩…俺は」


芽衣「ダメ、あんたは来ないで。」


彰「ひえー副部長様は相変わらず意地悪で性格が悪い。」


小馬鹿にした声で彰が指をさす。


芽衣「そのあんたの態度が気に入らないのよ!!」



眉間にシワがよった芽衣は大体は喧嘩する。


雫「芽衣先輩!紫流君!喧嘩は…その…。」


芽衣「…大丈夫よ、雫ちゃんいつものことよ。」


彰「そうそう、ジョークだよ、ジョーク」


芽衣が再び彰を鬼の形相で睨む。



達也「まぁ…行くにしても男一人、女二人は困るからな…彰にも来てもらわなきゃ困る。」


彰「さすが、部長様は話が分かる。」


芽衣「達也…あんたせっかくのチャンスだったのに、勿体ない。」


達也「チャンス?」



雫「あの…まだ私行くとは言って無いのですが…。」




結局俺達4人は春休みの一週間、遠征という形で鵜没島への旅行が決定した。

遠征という形だが実費という事もあり顧問はついてこない、単に一週間部活を休む理由が欲しかっただけだ。



しばらくすると旅行会社から日時と時間、船を使って島に行く事が伝えられた。詳しいことは書いてなかったが泊る場所はあるらしい。


船といっても漁船、船長も旅行会社から金を貰っただけだとのことだった。



俺達は3時間ぐらい船に乗り、ようやく『鵜没島』についた。

船といっても漁船、船長も旅行会社から金を貰っただけだとのことだった。











船を降りた俺達の前に広がるのは殺風景な景色だった。


小さな埠頭にボロボロの小屋、停泊している船は一隻もない。

滑らかな坂に多くの木々、人がいる様子は無かった。


彰「人いるのか?無人島にしか見えない。」


芽衣「おかしいな…迎えの人が来るって聞いたんだけどな。」


雫「あ、誰か来ますよ。


奥の坂からゆっくりとメイド服の女性がこちらに向かってきた。



メイド服の女性「いらっしゃいませ、お待ちしていました。」


目の前に現れたのは生気のない顔、人間には見えない程の肌の色をした女性だった。


達也「え、えーと俺たち鵜没島に旅行にきた小野です。あ、あなたは…?」


メイド服の女性「申し遅れました、わたくしはこの島の持ち主。アリト様のお屋敷のメイド長を務めます『ルビア』と申します。」


ルビアは不気味に微笑んでいた。



ルビア「長い船旅でお疲れでしょう。旦那様のお屋敷までご案内させてもらいます。お荷物のほうは…」


芽衣「あ、いや…自分で持ちます。」


普段は気が強い芽衣でも流石に気が引けていた。



滑らか上り坂を登りながら達也達は屋敷を目指した。



彰「ルビアさん、この島には俺達以外は観光客とかはいますか?」


一瞬 沈黙があったがルビアは口を開いた。


ルビア「…いえ、他のお客様はいらっしゃいません。」


彰「そ、そうなのか…どうも。」



長い沈黙が続きながらも坂を上るとようやく大きな屋敷が見えた。


雫「凄い豪邸ですね。」


屋敷の大きさに一同が圧巻されていた。


ルビア「どうぞ、中にお入りください。」


ルビアが扉を開けて、4人は入っていった。


室内にはいかにも高級な彫刻、巨大なシャンデリア、金色色の絨毯とまさに絵で描いたような豪華な部屋が広がっていた。


玄関を閉めるとルビアは達也たちの前に立ちポケットから薬瓶を取り出した。


ルビア「皆様、これをお飲みになってください。」


ルビアは薬瓶からカプセルを4つ取り出して達也に渡した。」


達也「これは…薬ですか?」


シトリー「はい、これはこの島に住む虫の毒に対する免疫を作る薬です。」


達也「虫?蚊とかスズメバチとかですか」


ルビア「この島に住む虫の中には危険な毒を持っている虫もおります。皆様の安全を考慮しまして旦那様から…。」


芽衣「虫!?やだ…達也、その薬を頂戴。」


薬を受け取った芽衣は薬を口に入れ持参していた水と一緒に飲んだ。


達也「仕方ない、刺されたときに困るしな。」


雫「あ…先輩。私達のをお願いします。」


達也「はいよ、雫ちゃん。」


雫「ありがとうございます。はい、紫流君のも。」


彰「…ああ。」


三人もカプセルをそのまま口に入れ、水と一緒に飲んだ。


その様子を満足そうに見ていたルビアは再び口を開いた。


ルビア「では…皆様、お部屋にご案内させていただきます。」



階段を上り奥に歩くと左右に分かれた扉があった。


ルビア「こちらの部屋が男性、そちらは女性の部屋です。わたくしは今から今晩の晩餐の準備をします、何かご用がありましたら室内の内線でお呼びください。」


達也「わかりました。」


ルビア「……では、ごゆっくり。」


一同に深々と例をしたルビアは立ち去った。



達也と彰は部屋に入り自分の荷物を置いた。


達也「ふぅ…なんか疲れた。」


荷物を片づけると達也はベットに寝転がった。


達也「船酔いかな…それともさっきの薬か?なんか気持ち悪いな…彰は大丈夫か? 」


彰「俺は別に大丈夫っす。」


達也は部屋に入った時から軽い吐き気を感じていた。


達也「…悪い、少し休む。」


彰「わかりました。僕はパンフレットでも見て明日の観光スポットでも探しておきますよ」



達也はそのまま布団に横になった。













「うーん。」


達也は目が覚め、体を起こした。



芽衣「よ、爆睡部長のお目覚めか。」

雫「おはようございます、先輩。」


竜也「…芽衣と雫?なんで、ここの部屋にいるんだ?」


ふと、部屋にある時計を見た。

時計には[19:12]と表示されていた。



達也「あれ夕食は…まだなのか?」


彰「まだみたいですよ、あれから音沙汰なし。部長が起きたらみんなで下に降りようって話をしてたんですよ。」


達也「内線があるだろ。」


雫「それが壊れてるみたいで。」


雫が部屋にあった内線の電話線を指す、電話線は無残にも引きちぎられていた。


芽衣「ちなみにこっちの部屋のもだめ、全く豪邸のくせに壊れた電話なんてすぐに変えればいいのに。」


達也「…変だろ、客の部屋の内線が切れてるなんて。しかも男女どちらの部屋も。」



部屋に沈黙が広がる。



芽衣「まあ下に行ってメイドさん…ルビアさんに聞けば解決よ。じゃあ行きますか。」







達也たちは部屋を出て階段を降りていった。

高級な彫刻に囲まれる廊下は沈黙が広がると不気味さが増していた。


達也「静かだな…。」

芽衣「……。」

雫「ま、まあ私たちと使用人さん以外誰もいませんからね…。」

彰「まあそうだけどさ」


4人が1階につき、大きな扉の前に立つ。


扉の向こうから何か音が聞こえた。


彰「ここが食堂ですかね?…なんか音も聞こえますし。」


芽衣「なんだか嫌な音ね、何作ってるのかしら。」


4人は扉を開けて中に入る。

部屋にはいかにも豪邸にある机と椅子が並んでいた。


雫「ここが食堂ですね。」


達也「じゃああれが厨房か…?」


食堂の奥に扉があった。

他の扉と違い、客を招くにはふさわしくない地味な扉があった。


4人は厨房の扉に近づく。


厨房に近づくにつれ、音が大きくなっていく。

しかし、その音はあきらかに料理を作る音では無かった。まるで水に濡れた雑巾で地面をぶつけるような音だった。



雫「随分、その…凄い料理を作ってるみたいですね。」


達也「料理を作る音にしてはいくらなんでも生々しすぎる。」


全員が嫌な考えを持った。



彰「すみません、ルビアさん…いますか?」


返事はない。

しかし異音はまだ聞こえる。


達也「…開けますよ。失礼します、」


達也がドアノブを捻りドアを開けた。






その扉の先にルビアは居なかった。



代わりに血だらけの若い男が倒れていた。



雫「え!?」




男「タ、助けズげでぇ…死にた…死ニたクない…。」


雫「だ、大丈夫ですか!!しっかりして下さい。」


達也と雫が倒れている男に近づいた。男は腹部から大量の血を出していた。


達也「…酷い怪我だ、速く応急処置を!」



ズル…



彰「…!!」


その男の異変に気づいた彰は声を出そうとした。





ズルズル…



雫と達也は気づいていない、男の背後から緑色の何かが出てきていた。




ズルズルズル…



彰「ま……!!」


待て…!!と、もう一度言おうとしたが出来ない。



ズルズルズルズル…




達也「なっ!!」

雫「…え?」


ようやく達也と雫が気づいたが。それと同時に倒れていた男が雫の足を掴んだ。




ズルズルズルズルズルズル…



彰「逃げろーー!!」


彰が叫んだ。



男「うがああああぁああ嗚呼嗚呼!!!



ぐにゃ。



男の背中から白い 何かが 出てきた。男は声も出さずにその生物の足となっていた。


静寂が広がった。



白い生物はまるで人間と蝶を無理矢理合わせたのような姿をしている。

昆虫特有の複眼の眼、触角と背中にボロボロの羽根がついた恐ろしい姿だった。


そして、その生物はこちらを見て笑った。



達也は逃げたした、反射的に危険を感じたからだ。

だが雫はその場から動かない。



達也「雫!! どうした!逃げるぞ、そいつは危険だ!!」


雫「先輩!!あ、足が…。」



足…? 達也は雫の足元を見た。


雫の足首を男が掴んでいた、青白くなった肌で弱々しいながらも掴んでいた。

そして、白い化け物は近くにあった包丁を持ち雫に向けた。



雫「いや…いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」




バン!!!



達也「!?」



「フギャアアア!!


白い化け物の手から包丁が落ちた、同時に雫を掴んでいた手も解けた。


達也「なんだ!拳銃!? 誰が…!!」


達也の後ろにいた彰は拳銃を構えていた。」


彰「先輩、水野!! 速くこっちに!速くしないと化け物が動きだす!!」



達也「…分かった!!雫速く!!」



「ウゴオォオ!!」


化け物が動きだした。


達也と雫は部屋から出た、彰は動き出した化け物に拳銃を撃った。


バン!!!バン!!!


「オァァ!!アォオ!!」


銃弾は化け物の腹部に被弾した。

怯んだ化け物は苦しそうに腹部を抑えていた。


彰「先輩!芽衣先輩を!」


ふと達也が見ると芽衣が苦しそうに蹲っていた。


達也「芽衣!?くそっ!」


達也は芽衣に肩を貸した。

そして達也たちは部屋を出た一目散に部屋を目指した。



暗い廊下をかけ抜け、階段をあがる。化け物の発した奇声に耳を閉じながらも走った。




ガチャ



雫「…鍵をかけました。」


達也「サンキュー…。」



ようやく出来た安息、この短い期間に起きたことを考えてみた。


達也「……俺達、夢見てるのか?」


沈黙、当たり前だった。血だらけの男、それから出てきた白い化け物。何より自分達の命が危ないと言うことだった。



達也「彰、芽衣に何があったんだ?」


彰「先輩と雫が厨房に入る時に芽衣先輩が苦しそうにうずくまってたんですよ。」


達也はベットに芽衣置いた。


彰「そんで先輩の声をかけようと思ったら後はさっきの通りで」


芽衣は息遣いも荒く苦しそうにしていた。


達也「……そうか。彰、さっきはありがとう。だがお前なんで拳銃なんか。」


彰は少し黙ったが、口を開いた。


彰「この部屋に入った時、ちょうど先輩が寝る前に引き出しの中にあったんだ。それに変なレポートを見たから、不安になってね。」


達也「レポート?」


椅子から立ち上がり彰は引き出しを開けた。中にあった紙を達也に渡した。


彰「正直、映画の設定とか悪戯かと思って黙ってましたけど。こんな事なら最初から見せておくべきでしたよ…。」









《第18回目 実験の結果 および被験者の様子》


1月25日

・男女3人の被験者が島に到着。区別のため、被験者を男性A、女性B、女性Cと分ける。

被験者が島に到着、被験者3人に「リティコグン」の投与成功。


1月26日

・被験者の女性Bが「フェアリー」成体と交戦、深手を受け、同日16時32分に被験者 女性B死亡。


1月27日

・被験者 男性Aが激しい頭痛と高熱が発生「リティコグン」第一病状を確認、定着に成功。


1月28日

・被験者達が屋敷外に移動し、南小屋に潜伏。武器を所持し成体「フェアリー」と交戦、死亡者無し。被験者Aが「リティコグン」第二病状となる。

被験者 女性Cに未だ第一病状を確認出来ず、要監視。


1月29日

・「フェアリー」幼体が被験者Cの女性に寄生。被験者 女性C「リティコグン」最終病状になる。

「フェアリー」が定着したため被験者Cの女性も通常観察に移行。


1月30日

・入手経路不明で「フェアリー」と「リティコグン」に関する情報を被験者達が入手。同日、被験者 女性Cが東埠頭付近で自殺。


1月31日

・被験者 男性Aが「リティコグン」最終病状となる。既に同化が始まる、のちに「フェアリー」の母体になると思われる。 同化の速度が速いため幼体に寄生された可能性が高い。


被験者3人の死亡を確認、監視を終了する。












達也「…これは何の冗談だよ『リティコグン』『フェアリー』って何だよ…。」



達也がレポートを握りしめた。


彰「おそらくは、俺達も実験のために招かれた被験者でしょうね。」



雫「もしかして芽衣先輩はこの『リティコグン』と言われる病気にかかって……」


その時、達也の頭の中に嫌な予感を感じた。


達也「ああ、このレポートにある病状と芽衣の病状が似ている…おそらくその『リティコグン』だろう。…ただ感染してるのは芽衣だけじゃない、俺たち全員だ!!」


雫「………え?」



椅子に座り達也は頭を抱えて言った。


達也「リティコグンになる条件は寄生されるかリティコグン自体を投与されるかって書いてあった、俺たちが化け物に接触したのはさっきの厨房の時だけだ。」


彰「……………。」



達也「あの時、化け物の近くにいた俺や雫はともかく、近づいても無い芽衣が一番最初にリティコグンの病状になった。つまり…。」



全員が同じ発想に至った。






達也「あのメイド…ルビアが渡したカプセルの中身が『リティコグン』だ!!」




















ルビア「旦那様、お客様達は無事にお薬をお飲みになられたみたいです。」


クラシックが流れる部屋の中にはルビアと椅子に座る若い男性。

女性のように長い髪をいじりながら『旦那様』は本を読んでいた。




ルビア「さらに成体フェアリーとも接触したようです。お客様の中には戦闘能力も高い方も混ざっているようで撃退に成功していました。」



???「それはいい、今回は観察しがいがある被験者のようですね。」


旦那様の近くに立っていた白衣の男が嬉しそうに笑っていた。




白衣の男「前回みたいの初日に殺されたり、自殺されては実験の意味がありませんからねえ。」


白衣の男は持っていた資料を広げた。



白衣の男「既にリティコグンを摂取して時間が経ちましたねえ、そろそろ定着しやすい方にはリティコグン第一病状が始まるころです、くっくく。」




???「失礼します。」


扉から入ってきたのは赤いベレー帽を被ったいかにも軍人の服装の女性だった。



ベレー帽の女性「侵入者の件でご報告です。侵入してきた連中ですが19人は無力化しました。しかしまだ1名は現在も逃亡中です、現在隊長の部隊が捜索中です!」


旦那様は読んでいた本を閉じた。



ベレー帽の女性「れ、連中のいた西側エリアを捜索しましたが…発見できませんでした。おそらく東側エリアに逃亡したかと。」


部屋に沈黙が広がった。




「…そうか」


ゆっくりと椅子から立った旦那様は3人の方を向いた。



旦那様「クロエ、お前は夜明けまでフェアリーを率いて西側エリアをもう一度捜索するんだ、アメリカの犬がまだ隠れているかもしれない。」


クロエ「は、はい!いますぐに!!」


赤いベレー帽の女性は敬礼をすると一目散に部屋を出て行った。



旦那様「ルビア、君は引き続き被験者を監視していろ、ただし他の生存者は発見次第始末するんだ。」


ルビア「はい、承知いたしました。」


ルビアは深々と頭を下げると部屋をでていった。」






白衣の男「しかしビューローかカンパニーどっちか知りませんが随分早く嗅ぎつけましたね。」


旦那様「連中は鼻だけはよく聞く…ただこの島は私に庭だ。いくら鼻が利いてもこの島に臭うのは死体の香りだけだ。」



白衣の男「っくく、違いないですねえ。何せこの島の名前は鵜没島、ひっくり返して『ぜ』を付ければ本当の名前が出てきます。」


旦那様は再び椅子に座り、ほくそ笑んだ。



旦那様「絶望島、被験者の諸君にはせいぜいこの島で絶望してもらおう、我々の夢のために。」














ずし…



ずしずし……





達也たちは部屋で考え込んでいた


達也(もし今までの予想が当りなら…このままでは俺もあの化け物に…。)


おそらく全員が同じことを考えていただろう。

ただその現実を口に出すには勇気がいる。



雫「…そんな、私も…私達も…、あの…あんな白い化け物になっちゃうの…。


誰も同意したくなかった。しかし、それが真実だった。


雫「いや…嫌だ…。


ふと、小さな声で芽衣がしゃべった。


芽衣「…ゴメン、みんな…。私がこんな事言わなきゃ…始まらなかっ…のに…。


達也「芽衣!大丈夫か、安静にしててくれ。お前は俺達が必ず助けるから、だから弱気になるな。いつもみたいに男まさりはどうした?


病状に歪んだ芽衣の顔が笑顔になった。


芽衣「…うるさいな、言われなくても分かってるよ…馬鹿達也。



この悪夢が始まった時、忘れていた笑顔4人に少しだけ帰ってきた。







ずしずしずし…




どん










達也「まずは俺達が出来る事を考えよう…。


彰「携帯は圏外、帰りの船は一週間後に来る。その間に『リティコグン』をどうにかしないと…ワクチンか何かを探さなきゃな。」


達也「…その過程で確実に白い化け物…いや、『フェアリー』に遭遇するのは間違い無いな。


芽衣「間違いないわね、逃げるだけじゃいつか追い込まれるわ。」


雫「でも…、紫流君以外の人は武器なんて持って無いよ…。



ードンドン

誰かがドアを叩いた。


達也「!!」


ードンドン


彰「……扉から離れてください。」


彰が小さな声で囁く。

ドアに向けて彰が銃を構えた。



ルビア「ルビアです、大変お待たせしました。お食事のご用意が出来ました。」


達也たちは驚きを隠せなかった、部屋の外には自分たちにウイルスを飲ませた女が全く場を読めない理由で会いに来たのだから。



達也「罠か?どうする…。」

芽衣「…どうするもこうするも。」


彰「……いや、あえて入れてみませんか…?」


突然の彰の考えに達也はぎょっとした。


達也「何言ってるんだ、俺たちを殺しに来たかもしれないんだぞ。」


彰「退路を断たれている以上、窓ガラスを割って2階から飛び降りるかこのドアから出るかの2つしかありません。彼女の目的は分かりませんがこちらには銃もあります。」


確かに退路は断たれている。この大きな屋敷の窓から飛び降りて無事な保証はない。


達也「くそ…分かった。芽衣、動けるか…?」


芽衣「ええ、大丈夫。」



彰「…達也先輩はドアの鍵を開けてください、水野さんは隠れて…。」


芽衣と雫は部屋の奥に、達也がドアに近づき鍵を開けた。



彰「……どうぞ、入ってください。」




ドアノブが曲がりドアが開いた。




ルビア「失礼しま……。



彰はルビアに拳銃を向けた。


彰「外に出て壁に両手をつけろ!」


拳銃を向けられても表情を変えない。

だがルビアは言う通り背中を向けて壁に手を置いた。


達也「俺達はあんたに聞きたい事がある…。」


ルビア「……私の知る限りでお答えします。」



達也「俺達はさっき下の階で白い化け物に出会った。あれは何なんだ? 本当に『フェアリー』と言う怪物なのか!」


ルビア「はい、皆様が厨房で出会った『フェアリー』の成体でございます。しかし怪物などと言ったたいそうな生き物ではありません。」


芽衣「は…何いってんの…。


ルビア「あれは適応出来なかった『選ばれなかった』ただのゴミです。」


彰「……次の質問。この屋敷に来た時に飲まされた薬、あれは『リティコグン』か?





今まで表情をほとんど変えなかったルビアは微笑んだ。


ルビア「どうですか?体に巡りませんか?『リティコグン』は素晴らしい物です、旦那様のおかげで皆様もこの『リティコグン』を与えられました。とても幸運なのです…ふふ。」


達也「…くそ、やっぱり!!」



ルビア「お客様、私が運んで来たカートの中をご覧ください、旦那様からのプレゼントです。」


ルビアが運んで来たカートの中には携帯食料や拳銃4丁、弾薬があった。



芽衣「馬鹿にしてるの!これじゃまるでゲームよ!」


笑みを浮かべていたルビアは再び無表情になった。

ルビアは壁から手を離し、こちらを向いた


ルビア「違います、これは『篩い』なのです。」


雫「篩い…?」



ルビア「そう篩い、選ばれない人間は死、選ばれた人間、私たちだけの世界が!私が…私が…誰にも愛されず捨てられた私が…選ばれた!キシ、キシシシッ!キシィシシシッ!!!」


恐ろしい表情のルビアが天に向かって嘲笑う。



彰「…!…動くな!!動くなら撃つぞ!」



彰の脅しを無視しルビアは話を続けた。


ルビア「キキシシシッ!喜べ!喜べええええ!!」


恐ろしい表情のルビアが部屋の中にゆっくりと足を進める。

達也も銃を持った彰も狂喜の表情のルビアに恐怖を感じた。


芽衣「っ!選ばれるとか選ばれないとか…気味が悪いわ!」


芽衣が運ばれた台車から拳銃を取って構える。



ルビア「キシシシッ!キシィシシシッ!!!」







タッタタッタッタッタ!!











???「その子の言う通りよ!!薄気味悪いクソメイド!!


廊下の奥から黒いコートにショットガンを持った黒いロングヘアーの女性が走ってきた。



ルビア「…貴様っ!!」



カチャ




女性がルビアの顔にショットガンを向けた。



コートの女性「…そういえば玄関が汚れていたわよ、綺麗にしてきなよ!」




ーーバン!!!!


















Act,2 生存者

















ルビア「………………。」



顔を撃たれたルビアは窓ガラスを突き破り2階から落ちた。

体は血だらけだがルビアの眼はしっかり開いていた。


ルビア「…いけない。旦那さまから頂いたお洋服が汚れてしまった。」


ゆっくりとルビアが立ち上がった。




ルビア「…旦那様にご報告をしなければ。」


暗い夜道を血だらけのメイドが歩く。










一方、ルビアを撃った女性は椅子に座って、達也たちと話していた。

達也たちは今までのことを彼女に伝えた。



コートの女性「成る程ね。貴方たちの状況は分かったわ。」


達也「改めて先ほどはありがとうございました、えーと。」




コートの女性「そういえば自己紹介してなかったわね。私は『天野 恵美』理由があってこの島に来たの。


雫「もしかして警察ですか!


恵美「いいえ違うの、ごめんなさいね。」



芽衣「で、恵美さんがなぜこの島に…?


恵美の顔が真剣になった。


恵美「……私の生き別れの妹がこの島に来てるの。名は『アリス』って言われているわ。」


彰「妹さんがこの島に。」


恵美は下を向いて大きなため息をついた。


恵美「でもあの子がここに来たって情報が1ヵ月前の話、怪物がいるのは知ってたけどここまでとはね…生きているかもう分からないわ。」


達也「でもそれでも貴方もこの島に来た…と。」



恵美はゆっくりと頷く。













ルビアは屋敷の北にある教会の上から空を見ていた。



ルビア「旦那様、ありがとうございます。ルビアは旦那様の手足となります。」



キィ…キィ…キィ…キィ…キィ…


ルビアは再び屋敷を目指す。

ルビアの後ろには十数体の『フェアリー』巨大な鎌を持ったルビアが屋敷を見て笑った


ルビア「邪魔はさせない…、あの女は…私が始末する。」








達也「貴方も…飲まされたんですか…。


恵美「私も貴方たちと同じように観光客に混ざって潜入したのよ。…怪しいのは分かってたけど1人だけ飲まないのも目立つからね。」


達也「…ちょっと、待ってくれ。薬を飲んだのは俺達よりも先なのに…貴方はそんなに元気なんですか?」


ポケットに手を入れ、恵美は達也たちに薬を投げた。


彰「これは…薬、まさかワクチンですか!」



恵美「いいえ、うちで作ったこの手のウイルスの進行を遅くする物よ。…気休め程度だけどね。」


達也(うち…?)


雫「でも進行が遅くなるなら芽衣先輩!」


芽衣「…あんな目にあってまた薬か…飲むけどね。」


恵美「そうした方がいいわ。」


芽衣が薬を水と一緒に飲む。



達也「恵美さん…ありがとうございます。」


恵美「気にしないで、あと貴方たちも飲みなさい。フェアリーとの戦闘中に倒れたら最悪だから…。」


達也「………え?」


立ち上がった恵美はショットガンを持ち、割れた窓を見た。






恵美「クソメイドがお友達を連れて来たわ…。全く面倒な事をしてくれたわ。」




屋敷のドア前にルビア率いるフェアリー達が来た。



ルビア「…逃がさないです、キシシ…。」















時同じくして旦那様の部屋に人が集まる。



クロエ「例の侵入者が屋敷に…。」


旦那様「そうだ、被験者との接近する可能性が高い。奴は被験者に余計な情報が流される可能性が高い…君の失態だ、クロエ。」


下を向いたままクロエは小刻みに震える。



???「アッハハハ!Hey、うちの優秀な部下を苛めないでくだサーイ。」


クロエの後ろから金髪のいかにも軍人の男が前に出た。


クロエ「隊長…。」


???「meたちとyouの関係はビジネスパートナー、そのために協力しているのデース。」


男は周りに空気に合わず陽気に話しかける。



旦那様「そうだな、それが我々の契約、…それにこれはこれで面白い。」


旦那様も不敵に笑う。



白衣の男「しかしいいんですか?ルビアに安定剤は打ってありますが今かなり不安定ですよ。…仮に制御を無視して被験者に手を出したら。」


旦那様「その為に君がいるのだろ、天才の名を持つ医者ジェニーよ。」


ダルそうにジェニーは椅子から立つ。


ジェニー「…全く人使いが荒い旦那様だ。ルビアが侵入者の始末に回っている間は私が被験者の監視をしましょう。」

















「グギャアァァァアア!!

「ガアアア、コロスコロス!!


ルビアが入口のドアを蹴破り、人間に寄生した『フェアリー』が階段を登り始めた。


ルビア「馬鹿な出来そこないは礼儀はなっていませんね。」


鎌を引きずりながらルビアも後を追う。









恵美「みんな構えな、そこに拳銃があるんでしょ?


ショットガンを構えた恵美が部屋を出た。


達也が拳銃を持つ。今までテレビや漫画の世界でしか見たことない物が自分の手の上にある。」


彰「先輩、両手で持って、狙いを定めて引き金を引けば弾は出ます…大丈夫ですか?」


達也「あ、ああ…分かった。」


達也は両手で拳銃を握る。


恵美「貴方たちは部屋にいなさい。特にあなたは本調子じゃないんだから。」


芽衣「く、ごめんなさい。」

雫「先輩は私が…。」


芽衣と雫も拳銃を握る。


達也「…やるしかないのか…。」







イタゾオオオオオオオオオ!!

シャアアアアア!!


廊下の奥から人間に寄生したフェアリーたちが迫る。


バン、バン、バン!!!


廊下では恵美と彰がフェアリー達に攻撃を始めた。



恵美「…いいか?あの寄生された人間の頭か足を撃てば動きが止まる!そこを狙いな!」


ーバン!!


彰「……はい!!」


ーバン!!


フギャアアア!!

うがぁぁアア!!


達也も二人に続き引き金をひく。


ーバン!!


クアアアアアア!!


弾は顔をそれ肩に当る、フェアリーは一瞬怯むがすぐにこちらに迫る。


彰「先輩、それでいいんです!」


ーバン!!


クカアアアァァ!


彰の撃った弾がフェアリーの頭に当り、その場に倒れる。


達也「彰悪い、次はしっかり当てる!!」


彰「いえいえ初めてでその命中率なら僕より才能がありますよ!


ーバンバン!!

ーバン!!


うがゃあああああ!!

アカガ…!!




ずるずるずるずる…




恵美「…! やっと登場したね。クソメイド」



階段の踊り場で微笑みながら鎌を持ったルビアが立っていた。




ルビア「旦那様の命です。貴方は…不必要。選ばれていないィィィ!!


鎌を握り身を低くしルビアがもの凄いスピードで突っ込んで来た。


恵美「ち…クソ!!」


ルビアに向けて恵美はショットガンを構え撃った。



バン!!バン!!バン!!


ルビアはいっさい怯まずさらに達也たちと距離をつめる。


達也「……あいつ2階から落ちたのに生きているのかよ!!」


ーバン!!


恵美「あいつが人間に見える?人間だったらもう5回は殺してるわ!」


バン!!バン!!



突然、部屋の中から悲鳴があがった。


雫「キャアアアアア!!!


達也「…なっ!!


彰「水野!!!


不意の雫の悲鳴に彰が部屋に戻る。


恵美「……っ!どうしたの!」


恵美の視線が一瞬、部屋を見たのをルビアは見逃さなかった。



ルビア「…よそ見なんて…馬鹿ですね…。」


すぐに恵美は視線を戻す、しかし目の前には既に鎌を振り下ろそうとするルビアの姿が見えた。



恵美「っ!!やば…い…!!!!」


達也「ー恵美さん!!」



恵美は反射的に後ろにさがった、しかし…。


スパッ



ルビアが大きく振り下げた鎌が恵美の肩の辺りを切り裂いた、その瞬間、血が辺りに飛び散った。



彰「なっ……!!」


達也「恵美さん!!」



恵美の手から銃が落ちた、血だらけの恵美は床に倒れた。

彰が倒れた恵美に駆け寄る。



彰「恵美さん!!恵美さん!!大丈夫ですか!!」


恵美「…はぁ…はぁ…うぐ…あぁ……。」



彰「…ひどい傷だ…出血も止まらない、速く治療しなければ。」


恵美に寄り添う彰の後ろに血を被り笑うルビアが立っていた。


ルビア「…お客様、失礼します、どいてください。その女はまだ生きています。」


彰「断る…殺したきゃ、鎌を振り下ろせばいい!!」


ルビア「…………っ!!」




ーバタン!!


部屋の中から頭を撃たれフェアリーが倒れた。


達也「芽衣!雫!大丈夫か!」



部屋の中から銃を構え雫の肩を借りて出てきた芽衣の姿だった。

よろよろと雫の肩を借り血の気の無い顔で芽衣は銃を構えた。



芽衣「全く…この薬効きすぎよ…。」



芽衣「でもさっきより気分は断然いいわ!」


ーバン!!バン!!



「うぎゃああ!!

「ギャアアアあぁ!!


芽衣「2つの意味で……気持ち悪い…。



芽衣が撃った銃がルビアの後ろから迫るフェアリー達の頭を貫いた。



達也「はは…いつもの元気じゃないか、芽衣。」


芽衣「当たり前よ、こういうの結構得意だから!」


血の気が引いた顔だが芽衣の表情はいつもの顔が戻った。




雫「達也先輩!芽衣先輩!紫流君と恵美さんが!!」


っは! と達也と、芽衣が恵美たちの方向を向いた。血だらけになった鎌を持って立つルビアと鎌に切り裂かれた恵美を庇う彰の姿だった。



ルビア「…お客様、そこをどいてください。」


彰「絶対に…絶対にどかない!!」



ルビア「……………。」


ルビアの無表情の顔が二人を見下ろす。


彰「どうした、恵美さんみたいに俺を切り裂かないのか?


ルビア「………………つ!!」



ルビアは鎌を大きく振り上げた。



芽衣「…なっまずい、達也!!」


達也「やめろ!!彰!!そいつに挑発するな!!」


雫「紫流君!!いやあああ!!」



ルビア「…キ、キ、キシャアアアアアアア!!」



ルビアは鎌を振りさげた。


ーガン!!





ルビアの振りさげた鎌は彰をギリギリ避け地面に突き刺さった。



ルビア「ハァ…ハァ…ハァ…。」


彰「……………。」



雫「あ、当って…ない?」


達也「外した…いやわざと外したのか。」



ーゴン、カン。


ルビアの持つ巨大な鎌が床に落ちた。



ルビア「あ…あの女…を始末しなければ…でも…じ、実験体…は危害は…う…うわああああああぁぁぁ!!」




まるで敵を見つけた兎のようにルビアは頭を抑え怯えた。


月影「い…嫌だ…罰を受け…たく無い…罰痛い怖い…怖い怖いこわいコワイぃぃ!!!!



発狂したルビアは一目散に逃げた。




達也「一体、何が起こったんだ…。」


一瞬沈黙が広がるがすぐに最優先でやるべきことがあった。


彰「水野!!何か血を止められる布を持ってきてくれ!!」


雫「は…はい!!」


芽衣「雫ちゃん!私のバックの中に部活用の止血剤があるわ!それを使って!」


雫「分かりました!!」






悲劇の1日目の夜が明けた

しかし悲劇はまだ終わらない























Act,3 絡み付く悲劇の連鎖










AM 6:23







使用人ルビアとフェアリーとの一戦を交え一同はしばし休息と恵美の治療を行っていた。

寝ていた達也は目が覚めた。



達也「…………ん…。」


芽衣「おはよ、随分寝てたね…昨日の疲れが出たの?」



達也「あ、あぁ。それより恵美さんの方は!!」


芽衣がベットを指差す。


芽衣「雫ちゃんがずっと看病してくれたおかげで体調は安定したわ。」


雫「すぅ…すぅ……。」


ベットに寝る恵美によりかかるように雫が寝ていた。


達也「そうか、よかった。」


芽衣が携帯食料を達也に渡す。


芽衣「今、彰が一階で何か役に立つ物を探しているわ。」


達也「…!!おい、一人じゃ危ないだろ。」


芽衣「私もそう言ったんだけど…『大丈夫だ』って。」


達也「すぐに迎えにいかないと!」


達也は机の上に置いた銃を持って部屋のドアの引こうとした。


トントン。



達也「っ……!!


芽衣「まさか…。



二人はドアに向けて銃を向けた。

脳裏には昨日の夜のように使用人ルビアだったら…。






彰「戻りました、…おっと先輩、間違っても撃たないで下さいよ。」


布袋を抱えた彰が部屋に戻ってきた。






芽衣「彰!あんた、大丈夫だった?怪物は…?」


よいしょ…と、彰が椅子に座った。



彰「会いましたよ、2体ぐらい…、まあ不意打ちだったので怪我もなくですけど。」


苦笑ぎみで彰は布袋をあさっていた。


達也「彰…あまり無理しないでくれ。」


彰「ええ、さすがに1人で行動するのはもうやめときます…ただ収穫もありました。」


彰は布袋から食料や鎮痛剤、そして紙を取り出し達也に渡した。


芽衣「…またこの前のみたいに実験だー、とかじゃないわよね。」


彰「情報としてはかなり有益ですよ。気味が悪いのは一緒ですけど。」


達也「…これは…、レポートとよりも指令書…?」


彰「ええ、破れてしまってますがおそらく誰かに伝える、指令書でしょう。」


ゆっくりと達也が指令書を読み始めた。












~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

……であるため上記のことを守れば我々がフェアリーの感染体から攻撃を受けることはない。

ただし、上記の条件は必ずしも常に行えるわけではない。


ここに所要の感染体に対し有益な対処方法と感染体の傾向を明記しておく。


NO,1「成体フェアリー」

・『リティコグン』に5日以上、寄生された人間。および死後1時間以内の死亡者の肉体を幼体が寄生して生まれる。簡易的な指示は従い、頭部さえ無事ならば切られても撃たれても蘇生が出来る。(ただし完全再生は数時間かかる)

兵士の素質は充分だが日光に弱く日光が当たると蘇生が出来ない。また寄生した人間の状態にもよるが拳銃などの武装も可能。

上記にも書いてあるように日光に弱く日中屋外で活動するのは難しい。また懐中電灯など強い光を受けると怯む様子も確認出来る。

対処法:日中は屋外で脅威にはならない、ただ日中でも室内では活動できる。寄生された人間の頭を撃たれると即死する。作戦に邪魔になるなら頭部を撃って即死させるか足を撃って動きを止め、頭部を撃つ。


NO,2「幼体フェアリー」

・見た目は大きくなったカゲロウ。単体の戦闘力は皆無だが生きた人間や新鮮な死体に寄生する。生きた人間に寄生した際、ものの数分でリティコグン最終病状に移行するので要注意。特に夜間の活動が激しいので夜間屋外での活動は成体と交戦するより危険である。

日光に弱いのは成体と一緒だが成体と比べると活動に支障が出るほどではなく一瞬その場から逃げる程度、日中でも森林地帯など影がある場所なら活動する。

対処法:発見した場合の対処は容易、下手に発砲するよりナイフなど近距離武器での対応せよ。

ただし夜間は森林地帯などに近づかず、接触する可能性を減らすべし。


NO,3「変異体 アレニェ」

・母体が男性の成体フェアリーに複数の幼体が寄生して母体が変異に耐えた場合『変異体 アレニェ』に変異する。

蜘蛛のような見た目が特徴で手足が昆虫の足のようになる。また顔全体に複眼が発生し歯は鋭くなり凶暴になる。複眼はあるが目が見えない、代わりに口から雑音を発しその反響によって周囲の状況を感知している。

また手が変異したため天井に張り付いたり、壁をよじ登る事が可能。

アレニュはとにかく凶暴であり、1度捕まったら獲物を捕食するまで逃げることは難しい。視界は消滅しているとはいえアレニュのエコーロケーションは範囲が広いため不用意に音をたてればすぐに気付かれるだろう。

対処法:とにかく発見次第無視する、間違っても交戦は避ける。どうしても無視出来ない時は音をたてて陽動せよ。


NO,4「変異体 タンタキュル」

・母体が女性の成体フェアリーに複数の幼体が寄生して母体が変異に耐えた場合『変異体 タンタキュル』に変異する。

足が消滅し、その場にテリトリーを作る。付近の~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

















達也「なんだこれ、幼体ってのは前のレポートに出ていたけど変異体って。」


達也から渡された指令書を芽衣も見る。


彰「僕たちはまだ成体フェアリーとしか戦った事がありません。今まで合わなかったのが幸運みたいですね。」


同じく指令書を読み終えた芽衣が露骨に嫌な顔をしていた。


芽衣「朝からきっつい…ってかこの変異体ってのはやばそうね。」



恵美「……やばいなんてレベルじゃないわよ。」

恵美はベットから身を起こした。


彰「恵美さん!大丈夫ですか!」


恵美「ええ、おかげ様で。」


彰の話に答えながら切られた肩を恵美は撫でる。


恵美「あたしと来ていた連中はたった1体の変異体アレニェに皆殺しにされたわ。」


芽衣「1体で…全滅…したの?」


恵美「…トンネルを通った際、天井にいたこいつに気付かずあたし達はこいつの不意打ちを受けたわ。始めに襲われた子は即死、それに驚いた隣にいた子もすぐに捕まったわ。」


体を起して恵美は自分のコートを着る。


恵美「あたしはこいつは目が見えずエコーロケーションで獲物を探しているって分かった、だから体を動かさず静かにして仲間にも言ったわ。でもあと一緒にいたもう一人は恐怖に耐えられず走った…そして。」



あとは言わずとも想像ができる。



恵美「だから貴方たちも間違っても変異体には戦いをしかけない事、いいわね?」



3人が黙って頷く。まだ見ぬ変異体の存在に言葉がでなかった。




雫「…うんん……あれ、みんな起きているんですか?」


恵美のベットに寄りかかっていた雫が目を覚ました。


芽衣「あっ雫ちゃん、お おはよう!雫ちゃん何か食べる?ほら、これどう?」


バックを探り、何個か携帯食料を雫に渡す。


雫 「はい…どうしたんですか?なにかあったんですか??」


恵美「大した話じゃないわよ、あなたにも後で伝えるわ。それと昨日がありがとう…あならもね、彰君。」


不意にきた恵美の感謝の言葉に彰は動揺を隠せなかった。


雫「いえいえ私たちも助けてもらったしお互い様ですよ!ねえ紫流君!」

彰「あ、ああ。そう、そうですよ。当然のことをしただけですよ。」


彰の顔は軽く火照る。

それを見た芽衣は察したようにニヤっとした。


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