生徒会選挙編 その三
スタ子はすぐに博士の所に送られた。
次は第2試合。琴柄と大河原――あの体格の良さそうな女性だ。
この勝負で敗北すれば心美が生徒会長にされてしまう。大河原と琴柄、普通に考えれば琴柄が負ける。
だけど、彼女の幸運に賭けるしか無い。
大河原は琴柄を睨んでいるが、琴柄は侮蔑の笑みではなく、いつもと同じ笑顔を向けている。
大河原が口を開く。
「ふざけているのか? 見た所、私に勝つのは不可能だぞ?」
「そうだね・・・・・・。ボクなんかに負けるようじゃ、キミが上杉さんの近くにいることは相応しく無いよ・・・・・。
でも、簡単に勝てると思わないでね? ボクは、普通より少し運が良いんだ」
「運だけで勝とうとは笑わせる・・・・・」
大河原の顔が険しくなるが、琴柄の顔は余裕に満ちている。
本当に、勝てるのか?
「勝負、開始!」
開始の声と同時に、大河原の拳は突き出された。
しかし。琴柄もそれを読んだのか、その攻撃は回避されている。
「格闘技を十年続けた私の攻撃を避けるとは、何者だ貴様」
「別に何者でも無いよ。攻撃を躱せたのはただの運。偶然だよ」
相変わらず狛〇っぽい喋り方で、琴柄は呟く。
大河原はがむしゃらに拳を振るうが、琴柄には一撃も命中しない。ただただ、大河原の体力が減っていくだけだった。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」
「運が無い・・・・・・。これ程絶望的な事は無いよね・・・・・・」
大河原の体力は削れたが、戦闘不能にする為には琴柄が大河原に重い一撃を入れなければ不可能だろう。
「ただ、貴様はどうやって私を倒すつもりだ?」
「当然ボクがキミを殴ったところで、キミにはダメージは入らない。
だから・・・・・・」
琴柄がポケットから取り出したのは、野球ボール。
まさか、剛速球でも投げるのだろうか?
「ははは・・・・・・。そんな野球ボールで何が出来るんだ?」
琴柄は何も言わず、振りかぶって投球した。
だが肝心のボールは、大河原に当たりすらせず。空に向かって飛んでいく。
「貴様の武器は、もう無くなったようだな。これで、私の勝ちだ」
だがそれでも、琴柄は笑みを崩さない。
数秒後。恐ろしいことが起きた。
上空から、何かが墜落する音が聞こえる。
それは大河原目掛けて、落下してきた。大河原は、それに気づけず。
それに押し潰された。
「ボクは最初から、野球ボールを当てて倒そうとは考えていなかったさ。
だから。ボクの運を信じて、飛行機に当たるように投げた。
安心してよ。ボクの運は良い。だからキミも飛行機に乗っている乗客も無事な筈だよ」
飛行機を敵に落下させて倒す。そんなあまりに非現実的に倒し方を見ても、私と姉さんと江代、そして藤堂以外のギャラリーは驚きすら見せない。
これが、琴柄凪。
彼女の運の恐ろしさを、目の前で知った。




