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三姉妹とクリスマス

十二月二十四日。

 今日はクリスマスイブ。非リア充の私にとっては辛い日だが、まあそこは目を瞑っておこう。

 私は今、ケーキ屋にいる。

 ここまで溜めた小遣いで、予約していた高級クリスマスケーキを買う為だ。

 自分の番を待つこと一時間、やっと順番が回ってきた。

「えー、予約していた浅井さんですね。こちらになります」

 私はケーキを受け取ってから一万円を手渡し、そのままケーキ屋を出る。

 ケーキをあまり揺らさないようにスキップし、学校のすぐ近くにあるいつもの公園に入った。

 ――さて、噴水の近くのベンチに座って休も・・・・・・。

「うわあああああああああああああああああああああああ!」

 !?

 悲鳴に関しては姉さんにボコられた不良が叫ぶのをよく聞くのであまり驚かないが、これは――。

「姉さああああああああああああああああああん!」

 私はケーキを置いて、その声が聞こえた方向へと駆け出した。

 コンクリートで出来た円形の広場に駆け込むとそこには、姉さんと江代がいた。姉さんだけは何故か仰向けに転がされているが。

 江代は口を大きく開けて、姉さんをぶっ飛ばした奴を見ていた。

「お前ら!」

 !?

 それは私が見ても、驚かざるを得なかった。

 男子のようにツンツンした金髪。細い青色の三畠眼。女子高の赤い制服。

 確かアイツは!

「あ、安養寺(あんようじ)副会長!?」

 ゴリラ副会長と恐れられる、二年生の生徒会副会長兼ボクシング部部長、安養寺 氏女(うじめ)だ。

「イチャイチャしやがってええええええええええええええええええええええええ!!」

 副会長はどうやら、姉さんより強かったようだ。

 こりゃ死ぬかも知れない。だがここですぐ逃げれば、このゴリラに抹殺されるのがオチだろう。

 何とかしてコイツを止めねば。

「いやあのすみません。私達、非リアなので彼氏いないですよ」

「イチャイチャしやがってええええええええええええええええええええええええ!!」

 ダメだこの人。

「江代、何でこんなことになったん?」

「マイシスターが挑発したらこうなったぜ」

 またアイツかよ。

「一つ、言いたいことがある・・・・・・」

 風を感じながら、両目をゆったりと閉じ。

 カッ、と開いてから。

 

「それてめーらの問題だからてめーらで何とかしろよボケえええええええええええええええええええええ!!」

 

 私は逆方向に向かって全速力に駆け出す。

「あ、おい初!」

「うっさい、黙ってろ!」

 私は振り向かずに、ベンチに置いたケーキを回収して公園をあとにした。

 そのまま家に向かって駆け出し始める。

 公園からは江代の声が響く。

「こうなったらこの私が、貴様を亜空間に消しとばして・・・・・・ぐほあああああああああああああああああああああああ!」

 江代が一撃で戦闘不能になってから五秒も経たずに、ゴリラ副会長は獣の如く私を追い始めた。

 勘弁してくれええええええええええええええええええええええええええ!

 死ぬうううううううううううう!

「待てや、貧乳老眼ブスアマァァァァァァァ!!」

 私の脳内にブチという音が響く。

「うっせえんだよ、厳ついゴリラ副会長野郎!!」

「野郎じゃねえよ、貧乳うううううううううううううううう!!」

「んだと、ゴリラあああああああああああああああ!!」

 スタミナが減ると分かっていながら、後ろを向いて言い返す私。

 

 その内夜になり、本格的に街にリア充が徘徊し始めた時間帯のこと――。

 

 先程の公園のベンチに、座り込んでいた。

 やっぱり目の前の光景を仕方ないと分かっていても、目を合わせたくない。

 そうだ、ケーキでも食べて忘れようと箱を開けてみる。

「あっ・・・・・・」

 ケーキはもう、ゴリラから逃げていたせいでぐちゃぐちゃになっていた。

 でも捨てるのももったないと思って両手でそれを貪ってから、べとべとの両手で顔を押さえる。

 いつの間にか私は、泣いていた。

 私だって、目の前のあの人達のように、恋人と過ごしたい。

 明日は学校だが、この光景を見るのが辛くて、帰ろうにも帰れない。

 誰か私にも、恋をさせてよ・・・・・・。

 

 そんなとき。

 両手で顔を覆って涙を流しながら座る私の肩の上に、誰かが手を置いた。

 まさか、こんな私でも愛してくれたの・・・・・・?

 両手を顔から離し、私は肩を叩いてくれた王子様の顔を見ようと、し、た、が?

 はい?

 そこにいたのは、ゴリラ副会長。

「みぃつけた」

 私はニッコリと笑った。

 そして思い切り息を吸って。

 せーのっ!

「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


松野心夜でーす。結構早いけどクリスマス回をお届けしますぜ。

今回は浅井三姉妹のバカな日常では初めてな気がするけど、ちゃんと名前付きの上級生キャラを登場させてみました。

ただ最近、新キャラが登場する度に最強という格付けの筈の淀子姉さんが倒されているので、もうその設定やめようかなと考えてしまうこともあります。

あとね、僕はクリスマスは苦手です。理由は初さんと同じく非リアだからです。

いいもん! リア充なんて全然うらやましくないしいいもん!

嘘です。大嘘です。首をつろうかな・・・・・・?(おい)

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