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希望の転校生

一年二組、ホームルーム。

 月曜の朝は特にやる気が出ない。昨日の夜もあのバカ二人に付き合わされ、最近鏡を見れば、目の下に隈が出来始めていることに気付かされ、実に最悪な気分だ。

 早く先公の話終われよと思いながら、そのまま死んだ眼で時計を眺め続け、話をほぼ聞き流していたが。

「そして最後に、新しい転校生を紹介する。入れ」

 ドアを開けて入ってきたのは。

 白く短い髪に、緑に近い瞳。淀子姉さんに勝るとも劣らないぐらいに整った美貌。ブレザーのボタンを開け、緑のベストを見せている。リボンではなく、褐色のネクタイを締めていた。身長は、およそ180はありそうなレベル。そして私より大きめな胸部。

 とても日本人とは思えないが、顔つきは明らかにアジア人のようだった。

 だがこの女、どことなくある人物と似ている気が・・・・・・。

「では、自己紹介をしろ」

 転校生が教壇の上に立ってから、先生が言う。

 一歩前に出てから、転校生は笑顔で口を開き始めた。

「よろしく、ボクは琴柄(ことえ)(なぎ)だよ」

 声は少し低めで大人びていた。だがこの言い方や、名前が少し引っかかっていた。

 並び替えると・・・・・・。

「のおおおおおおおおおおおおおおお!」

「ん、どうした浅井。こいつを知っているのか?」

「あ、いえ」

 思わず叫んだことを謝り、着席する私。

 いやいやいや。こいつこの高校に来ちゃダメだろ。

 だって某ゲームのあのキャラの名前が二文字足りないだけでしょ!

 確かに髪型とかは違うけど、ボクという一人称とか雰囲気でバレバレだよ!

「では、琴柄は浅井の隣に座れ。浅井も、仲良くしてやれよ」

「は、はい」

 うわー、多分この後絶対めんどくさい展開になりそうだ・・・・・・。

 

 先生が退出し、琴柄が隣に座ってから、私は彼女に質問した。

「こほん。お前転校する前はどこにいたの?」

「転校する前は東京に住んでいたよ。親が転勤になって、前の高校の友達とは別れることになったし、あまりこの街には慣れていなくてね。ボクはなんてついてないんだ・・・・・・」

 やっぱりこの喋り方や口癖、あのキャラだな。

 次の質問と行こう。

「お前さ、前の学校でゲームのキャラに似てるって言われたことあるか?」

 少し考える琴柄。あっ、と言って続ける。

「言われたことならあるよ。前の高校での渾名は、狛〇クンだった」

 はいアウトおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 つーか、皆それで通じるのかよ。多分コイツの元ネタのゲームって、ぐろくなかったっけ?

「あとそーだねえ。前の高校ではPS〇やってる人が殆どだったわ。あと同じゲームの話題ばっかりだし」

 で、皆ダ〇ロンばっかやってるせいで、渾名がそうなったわけか。

「まあそれはともかく。この街は慣れてないけど、キミという面白い友達が出来そうだから、そこはついてるって言えるかなあ」

 うん。この台詞をどう聞いても、狛〇クンにしか見えんわ。

 まあでも、私を友達と呼んでくれたことは、嬉しいかな。

「琴柄、ライン交換しない?」

「いいよ。浅井さん」

 私はスマホを取り出す。

「初でいいよ。この一組と三組に姉さんと妹いるし」

「え、もしかして三つ子?」

「そうだよ」

「あとで会ってみてもいいかな?」

「うーん、あの二人変人だけど大丈夫かなあ」

 

 その後ライン交換を済ませてから、私は昼休みに姉さん達と屋上で合流した。

「淀子姉さん、紹介するよ。私の友達の琴柄だよ」

「ボクは琴柄凪。よろしくね」

「ボクっ娘かな? 私は浅井淀子。そいつの姉よ。よろしくね」

 頭をボリボリと掻きながら、姉さんは琴柄が差し出してきた手を握り返す。

「ふっ、浅井江代だ。よろしくな」

 格好つけながら手を握り返す江代。

「おい初、ちょっと来い」

 姉が手招きする。そのままついて行き、江代と琴柄だけを残して、私と姉さんは二人に見えない所に隠れる。

「おい初。普段ボケキャラ専門の私が言うのもなんだけど・・・・・・」

「キャラとか言うな」

「アイツの存在はこの世界を崩壊しかねないから、私達が友達になってレギュラーキャラ化させるのはやめた方が良い」

「いや、お前等二人のパロネタ合戦よりはマシだと思う。というか作者がアイツの元ネタの人が好きすぎるからどの道一話だけの登場っていうのは有り得ないと思う」

「そうか、じゃあ――」

 

「劣化希望厨を、ただいまより葬らせて戴く。取りあえずこの小説が連載中の間だけは登場させないようにしてやるよ」

 

 姉さんの言っていることが本気なのは、目を見れば分かった。

 勝負を挑まれた琴柄は、特に動揺することもなく、普通に勝負を受けると言った。

「まさか転校初日にタイマンを張るとは思わなかったよ。でも過去に元ボクサーのヤクザを倒した化け物が相手だなんて、ボクはなんてついてないんだ・・・・・・」

 ついてないのになんで勝負を受けると言ったのか不明だったが。勝負は始まった。

 あの少女の技量がどれほどかは分からないが、あの姉さんを倒せた者は、八話に出てきたあの少年ぐらいしかいない。今回こそ多分、姉さんが勝つだろう。

 最初に動いたのは姉さん。

 拳を握り、そのまま二本の足で地を蹴って、琴柄に接近した。

 目にも止まらぬ速さで琴柄の顔面に向かって打ち出される両拳。琴柄はガードせず、首を動かして躱している。

 彼女の顔を見る限り、完全に予測出来ているようには見えない。

 あれは恐らく、感で躱しているのだろう。

 元ネタの人があれだから、彼女も幸運なのだろうか。

 ただ琴柄はまだ、一切攻撃を行っていない。だからまだ、姉さんが負けると決まったわけではない。

 姉さんの攻撃が止んだ瞬間、琴柄が拳を握った。

 明らかに先が読める程の速さしか持たなさそうなパンチ。

 拳は予想通り姉さんに躱された。

 

 しかし。

 

 姉さんは横に向かってジャンプしながら回避したが、まだ姉さんは落ちない。

 止まることなく斜め上に飛翔し、遂には屋上の床の上ではなく、屋上からはみ出してしまった。

 そしてそのまま、重力に従って姉さんは落下する。

「あああああああああああああああ!」

 姉さんの絶叫。

 琴柄は自分が勝ったことに驚きながらも、笑顔でいつもの口癖を呟いた。

「なーんだ。やっぱりボクはついてたよ」

 まさか幸運だけで姉さんを倒すとは。

「さて、次の授業始まっちゃうし戻ろうか、初さん」

 琴柄はそのまま屋上を去った。

 姉さんは全治一ヶ月の怪我で、入院することになった。

 幸運って怖えー。


どうも。松野心夜の松に、松野心夜の野に、松野心夜の心に、松野心夜の夜で、松野心夜でーす。

はい。今回はダ〇ガ〇ロ〇パというより、そのキャラの一人がモデルの人物に登場してもらったわけですが、似てなかったらすみません。

えー、琴柄は元々、フリースキル・ファンタジーに出す予定だったキャラを浅井三姉妹のバカな日常向けに改変を加えたキャラです。

一応モデルがいるキャラなので何度も登場することはないと思いますが、レギュラーキャラ化はほぼ確実ですね。

では、次の話でお会いしましょう。

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