もしも淀子がキラだったら 前編
「あー。ムシャクシャする・・・・・・」
私が無人の路地でこんな事をほざくのにも理由があった。
事の発端は今日の昼。
私はいつものように淀子姉さんや江代と遊んでいたのだ。
やらされたゲームは王様ゲーム。
姉さんが王様となったターンで、こんな命令が出た。
『二番の人は、この家の中で一番貧乳の女性に命令をしなさい』
運の悪いことに、二番は江代だった。
そんな江代が私に下した命令。
『高級プリンを赤の姫と吾に五個謙譲せよ』
勿論プリンを買うことは出来たが、私の小遣いはもうゼロに等しい。
せっかくバイトして貯めたのに。
「畜生。巨乳殺してえ」
しかしそんなことをすれば私は殺されてしまう。
「デ〇ノートがあればなあ・・・・・・」
と、まあ丁度いいところで。
黒、ではなくピンクのノートが落ちてきた。
「チチノート・・・・・・?」
何ともふざけた名前のノートだ。
表紙には女性のおっぱいが乳首の部分を黒線で隠して描かれている。
明らかにデスノートとは用途が違いそうだ。中高生の悪戯だろうか・・・・・・。
ノートを開くと、もう完全にあのノート風に英語でズラリとルールが書いてあった。
「辞書使うか」
◇◇◇
数分後、取り敢えず公園でスマホを使いつつ翻訳した。
『・このノートに名前を書かれた人間のバストサイズは変化する。
・ノートを所持している人間のバストサイズは変化出来ない。
・書く人間の顔が頭に入っていないと効果はない。故に同姓同名の人物に一遍に効果は得られない。
・名前の後に人間界単位で四十秒以内にバストサイズを書くとその通りになる。
・サイズや状況を書くと更に六分四十秒、詳しい乳房の変化について記載する時間が与えられる。
・サイズや状況を書かなければ、全てが最低サイズのバストになる。
・ノートの所有権を破棄すると、このノートを持っていたことを忘れる。
・このノートを使った人間のバストサイズは永久に変化しない』
などなど。
「まあ自分を巨乳に出来ないのは残念だが、これは面白そうだ」
私は悪い笑みを浮かべて、まず実験を開始した。
姉さんや江代に手を下すのは楽しみにとっておこう。
まずはテレビの女優にしてみることにした。
今スマホに映っているのは、生放送中の特別番組。
目的は巨乳モデル『音原田九子』。
こいつのバストを最低サイズにしてやろう。
前からこいつの乳を見る度にイライラしていた。
さあ、私の実験に協力してもらおう。
私はノートに名前を書く。
「さあ、どうなる・・・・・・」
そしてスマホの時間が四十秒を過ぎた後。
自然界ではあり得ないものを見た。
たぷんたぷんと揺れていた奴の乳が、身体に吸い込まれるように縮みだす。
Gはあった奴の乳は最低サイズら縮・奴がそれに気付いて悲鳴を上げると同時に私は笑う。
「計画通り・・・・・・」
正直驚いてはいるが、これは使える。
さて、ここからは私の時代。
「貧乳世界の神になる」
◇◇◇
「ただいま」
「・・・・・・」
玄関で、椅子の上に体育座りをしている淀子姉さんが背を向けて黙っている。
「名を名乗って下さい」
「は?」
あまりにも不可解な要求に、私は呆れる。
「浅井初。これでいグホッ!」
私の腹に、姉さんのボディーブローが炸裂する。
「ッ――カハッ!」
「ダメよ初。私がキラなら、アンタ死んでるわよ」
こんな馬鹿なLやだわ・・・・・・。
取り敢えず落ち着いてから、私は姉さんに質問する。
「王様ゲームの次は何だよ」
「実はさっきだが、生放送で巨乳モデルの乳が縮むっていう事件が起こったのよ。
あれはこの世界の常識を破壊するような現象・・・・・・」
お前の存在や能力も常識外れだがな。
しかも見限られていたか。
「もうこれはLの出番よね。
だから私が絶対キラを見つけてみせる」
もしもし淀子さん?
目の前に犯人いますよ。
「悪い事は言わない。馬鹿のお前には無理だ」
「あァ? ぶっ殺すわよ?」
「ごめんなさい」
あのな、淀子姉さん。
今こうして止めようとしている奴が犯人と気付かない時点でお前はアウトなの。
「大体、そんなノート見た事も聞いたこともない」
「・・・・・・? ノート?」
しまった口が滑った。
「アンタ今ノートって言ったわね?
私はまだどうやってやるのかまでは推理していないわよ。
なのに、アンタはノートと言った。
浅井初・・・・・・アンタはキラよ」
・・・・・・。
まさかこんな馬鹿に見破られるとはな。
仕方ない。少し遊んでやろうじゃないか。
「・・・・・・ふふふ。
はははは・・・・・・。
あははははははははははははははははははッ!!
・・・・・・そうだ、私がキラだ」
続く