赤髪の、最弱アイドル!
今日も、如何やら転校生が来たらしい。
相変わらずスマホゲーでガチャを引く感覚になりつつあるこの学校の転校生だが、次はどんな人物なのか検討もつかない。
「私が来てそこまで時間が経っていないけどね」
「そうだな、涼子」
そして私の周りは、ほぼ転校生で埋め尽くされてしまっている。
右に琴柄、左にスタ子、上は涼子。
次は下だろうか。
まあ、常識外れな人物じゃなければ良しとしよう。
「では、転校生を紹介します」
ガラリ、とドアが開く。
そのまま転校生は、ゆっくりと入ってきた。
勿論女だ。
紅い髪を某国家錬金術師のように三つ編みにして縛り、整った顔の瞳も同じく赤。
女子高の紅い制服を纏った体はモデル体型で、まるでアイドルのようだ。
「あのバカの小説のキャラっぽいけど・・・・・・」
勿論ハガ〇ンパロディではあるまい。
松野が作ったキャラであるのは間違いないのだが、雰囲気が似ているそのキャラとは髪型が違う。
「それじゃ、自己紹介して」
「服部正子です。よろしくお願いします」
おめえかよォォォォォォォォォォッ!!
こっちの世界に、寿奈来る時あるからマズいんじゃないの!?
「えー、で空いている席は・・・・・・。
浅井の前だな」
やっぱりね。
てか私の周り空席って、私イジメでも受けてんの?
「それでは仲良くしてあげてください」
◇◇◇
放課後の屋上。おやつのナイス〇ティックに被りついている時の事。
服部正子がやってきた。
「おっす、アンタが浅井初?」
「そうだが、なんだ?」
「この前の大会、良かったわよ。
アイドル大会!」
「あー、そんなこともあったっけなあ」
てかおかしくね。
服部正子・・・・・・スクールアイドル『Rhododendron』の副リーダーという立ち位置ではあるが、実際一番指揮しているのは彼女である。
だが冬季大会前に死ぬまで、寿奈無しで優勝した経験はなし。
この世界にいること自体不自然だ。
あれは、私が今いる時代から五年後の出来事なのに。
「いやあでも、アンタの高校生時代に来られて良かったわよ。
殺されちゃったけど、行った先があの世じゃなくて、面白そうな世界だし。
ここなら、五年前の寿奈に会えるんじゃないかな」
「それはやめろ、歴史に多大な影響がでちまうから」
はあ、扱い辛い奴がまた増えた。
「アンタ、寿奈に似てるわね。
そういうとこ」
「あん?」
「私がふざけた事言うと、そうやってツッコミを入れてくれる。
寿奈もだけど、私は仲間の皆が好きだった。
だから、私は皆を守る為に死ねたのかなって今は思う」
今日アイ特有のシリアスシーンか・・・・・・。
浅井三姉妹と人気が同じくらいになりそうな要因の一つだ。
さて、私はシリアスシーンが得意ではない。
どう答えるべきか。
「だが仲間は、お前の死を悲しんでいると思うぞ。
本当に仲間が大切なら、仲間の為に死ぬな。
仲間の為に生きろ」
「・・・・・・生きろ、か。
私もやっぱり、皆を勝たせてあげたかった。
特に琴ちゃんにとっては、最後の大会だったし。
でも、芽衣を倒すことは出来なかったみたいだけどね・・・・・・」
「お前、めんどくさい奴だと思っていたが、意外と仲間想いの奴なんだな。
私の姉さんも、見習ってほしいくらいだ」
「ん? 何の話をしてるの?」
「「うわあああああああッ!!」」
私と正子は驚いて、体をビクビクさせながら叫んだ。
「姉さんかよ・・・・・・」
瞬間移動で私の背後へと現れたのだろうか。
近付かれている感じがしなかったのだ。
「その子は?」
「あー、正子だ。服部正子。
お前も知ってるだろ? 寿奈と一緒にいた子だよ」
「あれ、でも正子はセミロングじゃなかったっけ?
何時の間に、こんなハ〇レン主人公みたいな髪型になったのよ」
「私も目が覚めたらこの髪型になってたからわかんないよ」
正子は首を傾げながら答える。
「ふーん・・・・・・。
さーて、転校生が来たならお決まりのアレやるわよ」
まさか、姉さん。
戦う気じゃないだろうな・・・・・・。
姉さんが言った後取り出したのは。
「カラオケで勝負じゃああああああああああああ!」
割引券だ。
さて、勝負なのだが。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!
正子に点数で負けたァァァァァァァァァッ!!」
某クラッシャーの如くキョクナビをテーブルに叩きつける。
「イェアー!!! イェアー!!!
天皇陛下バンザーーーイ!!
あぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
叩きつけるだけ叩きつけて退出する姉さんであった。
「寿奈がいなきゃ最弱とは言え、私も普通の人に歌じゃ負けないよ」