しがない珈琲屋での喧嘩
休みの日。
私は久しぶりに珈琲屋『ろーれらい』の扉を開いた時の事だ。
中に入ると、今日の客は五人いた。
一人は、『今日からアイドルを始めたい!』の主人公、杉谷寿奈。
この世界は不思議な事に、メタ発言を普段しないキャラがしてしまう世界だったり、他の世界の住民が気軽に来られちゃったりするので、問題は無いのだが(因みに私は珈琲屋を出ても記憶は消えない、寿奈やアサミは記憶が改ざんされるらしい)。
問題は店の真ん中の席で口論をしている四人だ。
まず長身で、黒髪黒目の平凡な――だが二重瞼でそれなりの容姿の少年――心夜、つまり私の作者。
次に心夜よりは背が低いが、此方も中々の容姿をしている青年、松岡浩児。
リべスト世界の魔法使い、マリーのそっくりさんの坂本茉莉。
そして巨乳大好き野郎――リョーヘイのそっくりさんの良平だ。
「リアルで嫁出来ないので、茉莉ちゃんと結婚したいんだよ良平」
「いや、二次嫁だったらアサミいるだろ! てか茉莉は渡さんぞ!」
「でもアサミ以外の自キャラに手出せないし、自分の娘みたいな感じだから手出したらほぼ近親相姦だろ?」
アサミは良いのかよ。
「そんなわけで、良平。
茉莉をくれ」
「断る」
ダメだこいつら、早く何とかしないと。
「仕方ないな。それなら俺にも考えがある」
そう言って心夜が取り出したのは、黒い和風レイピアだ。
「それ戦国〇双の高虎の武器じゃねえか!」
私のツッコミなど届いていないが、心夜が解説し始めた。
「これは作者権限で召喚出来る武器だ。必殺技たるダークブレイドは、殆どの敵を一撃で駆逐出来るぞ」
流石作者・・・・・・チートの限りを尽くして戦う気か。
「スパーダ・ルーチェ、召喚!」
良平の近くに、パチパチとスパーク音を立てながら、スパーダ・ルーチェが出現する。
「なるほど、お前もそれを使えるのか」
「わわわわ、喧嘩はダメですよ良平さん! 心夜さん!」
「大丈夫だよ茉莉ちゃん。喧嘩じゃないよ。
殺し合いだ」
心夜は床を蹴って良平に突撃した。
闇の力を纏ったレイピアを、その勢いで良平に振り下ろす。
「喰らえ! ダークブレイドッ!」
闇の雷が、良平目掛けて降り注ぐ――かと思ったが。
「ぐああああああああああああッ!」
ダメージを受けていたのは心夜の方だった。
「あれ? なんで作者がダメージ受けてるんだ?」
と言っていると、奥のカウンターでコップを洗っていた遠藤が呟く。
「珈琲屋の改造の一つ。迷惑な客対策だよ。
店を破壊しかねないレベルの攻撃は全部使用者に跳ね返るようにしているんだ」
「お前の店はどうなってるんだよ」
「チョコレートパフェお代わり~」
寿奈、流石にチョコレートパフェのお代わりは太るぞ・・・・・・。