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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第三部 転生の階段編
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第三部 第22話 リセットマラソンの勇者達


「さあ、イクト君! 思いっきりスマホの画面をタッチしてね。新たな冒険の記念に、冒険者ギルド組合からのスペシャルプレゼント……すなわち無料10連ガチャだよ」


 ノリノリの守護天使エステルに促されて、ガチャ画面を起動する。

「そういえば、なむらちゃんやマリアも冒険者スマホを所有しているよな。そっちのスマホでもガチャは出来そうか?」

「いえ。どうやら、1つのパーティーにつきリーダーのスマホのみで挑戦出来るガチャみたいですね。私のスマホ画面には無料10連ガチャの画面は実装されていませんでした」

 一応、なむらちゃんやマリアなどのメンバーのスマホ画面を確認するがガチャに挑戦出来るのはオレだけのようだ。


「つまり、我々の命運はイクトさんのガチャ運にかかっているという事でしょう。私は神に、勝利の祈願を捧げてサポートしますので」

 記憶がリセットされた影響で、ギャンブラーとしての記憶も消滅しているはずのシスターマリア。だが、ガチャの勝利を祈願し始めたマリアからは、リセット以前のギャンブラーの気質が伺えてなんだか不安だ。やはり、どんなに記憶を消したところで同一人物ということなのだろう。


 冒険のスタート限定無料10回連続ガチャ、もしかしたらいきなり伝説の武器防具で冒険出来るかもしれない!

 リーダーのみの特権である10連ガチャに緊張感を感じながらも、期待で胸をときめかせながら、スマホのガチャ画面をタッチした。


 ファファファファーン!

 くす玉からハラハラと鮮やかな紙がこぼれ落ちる描写とともに、ガチャ鉱石の色がきらびやかにきらめく。

「こっこれは……!」

 注目が集まる中、思わせぶりなファンファーレがスマホ画面から響き渡り……期待の装備一覧表がアップされるが……。



【レア度3:普通な鎧上】

【レア度3:普通な鎧下】

【レア度3:どこにでもある盾】

【レア度3:旅人の服上】

【レア度3:格闘家の服下】

【レア度3:どこにでもある杖】

【レア度3:愉快な帽子】

【レア度3:普通な鎧上】

【レア度3:どこにでもある杖】

【レア度5:凄く丈夫なハチマキ】


「あれ……何ていうか名称からしてやる気のなさそうな装備ばかりじゃないか。もっと中二病が喜びそうな、威圧感溢れる装備は……?」

 まさかのハズレ感満載のラインナップに、動揺を隠しきれない。さっきまで祈りを捧げていたマリアは無言になり、なむらちゃんも口を閉ざしている。


「ガチャ終了ですね! レア度凄いはひとつしか出ませんでしたけど、一応杖が二本ありますし、冒険は進められると思いますよ」

 平然とガチャを終了させようとする、解説役の守護天使エステル。


「レア度凄いがひとつだけで、しかもハチマキか……。いや、このハチマキのおかげで助かる日が来るのかもしれないけど、何か強力な武器が欲しかったな」

「おお、神よ! 私たちに、無料で冒険の装備を与えてくれたことに感謝します」


 つまり、妥協してこの装備で冒険しようということか……。


「とりあえず、冒険を進めて戦闘してみましょう! 敵とやりあえるかどうか、確認しないと……これまでの武器よりもレベルは上がっているはずです。装備名はなんだかシンプルですが……」


 なむらちゃんが、とりあえず戦闘することを推奨し始めた。修道院でゲットした基本装備のレア度はすべて2ランクだから、3ランクレア度のガチャ装備の方が戦いやすいはずだ。

「そうだな……この装備で渡り合えるか、バトルで確認だ!」


 気を取り直して起点の修道院を出て、次の街に向かう森を進んでいくとザコモンスター達が現れた。

 ガサガサガサガサ……ぽいんぽいん、ぷるるる。


「プルルー、僕たちザコモンスターだよ!」


 可愛らしい水まんじゅうのような雑魚モンスタープルプルである。リセット以前の記憶が確かなら、最初の戦闘そのものは簡単なハズだ。


「ザコモンスタープルプル3匹か……こいつらなら楽勝だろう。よし、みんな構えろっ」


 てれれれれーん! バトル開始のサウンドがスマホ画面から流れ始め、いざ初陣。


「はああぁあっ喰らえっ」

「えいっ! 攻撃呪文で一掃しちゃうわよ」

「おお、神よ……癒しの加護を与えよ」


 オレが物理攻撃、なむらちゃんは呪文攻撃、マリアは回復魔法とそれぞれの役割を分担。少なくとも2ターンあれば余裕で倒せると考えていたが、気がつくと4ターン経過していた。


「プルー。僕たちまだまだ元気だよぉ!」

 まさかの5ターン目に突入してしまい、動揺を隠せない。単調な攻撃の繰り返しに、仲間たちも消耗している。

「何故だッ? プルプルってこんなに丈夫だっけ? なんか今回のザコ達強くないか?」

「仕方がないですね……この装備シリーズに付属している必殺コマンドで総攻撃をかけましょう。それしかないです!」

「ああ、じゃあみんなでチカラを合わせて……せーのっ」


 みんなで装備に付属している、初級ランクの必殺スキルをまとめて使うと、バトル音楽がハードモードに切り替わり通常の数倍の威力を発揮。


 ズガガガガーン!


「プルぅぅぅぅぅー」

 イクト達は、プルプル軍団をかろうじてやっつけた!


「ザコモンスター相手に、まさかの苦戦を強いられたな……。やはり装備が弱いのか?」

 フィールド上で休憩を兼ねて、作戦会議を行うことに。

「何ていうか……サッパリな戦闘でしたね。武器の名称どおり、普通の杖は普通レベルの攻撃魔法を放つのがやっとでしたし……」

 つまり、本来の魔力設定よりも攻撃呪文の効果が下がる可能性もあるのだろうか? 自分たちのスキルよりも装備品の効果の方が悪い意味で影響するなんて……。今回のバージョンアップそのものに問題があるとしか思えない。


「神が私達に試練を与えているのでしょう……こんな時は祈りを捧げましょう。きっと、神が冒険のヒントを与えてくださるはずです」


 マリアが冒険のヒントを求めて神に祈りを捧げていると、通りすがりの冒険者達がサクサクモンスターを倒していた。


 冒険者Aがオレ達に自慢するかのように……「お前凄いよー! 伝説の武器で、アッサリイベントボス倒しちゃうんだもんな!」などと、大声で語り始める。

 冒険者Bは照れながら「この伝説の武器、リセマラして手に入れた努力の結晶だからさ! 何度もリセマラして、本当に良かったよ」と、しきりにリセマラを強調する。


 羨ましそうに冒険者Cが、「あーあ、オレもリセマラの伝説の武器が手に入るまで粘れば良かったなぁ」と、やはりリセマラをゴリゴリプッシュしてくる。


「リセマラ? 粘る? 何の話だろう」

 オレの素朴な疑問に、解説役の守護天使エステルがリセマラについて語り始めた。

「冒険の初期で決まってしまうデータをリセットして、何度もやり直すことをリセットマラソン……リセマラと言います。特にガチャなんかの運要素の強いものの場合は、廃人ゲーマーなら何度でもリセマラするみたいですよ」

「へえ……リセマラか……オレ達もリセマラしたほうがいいのかな?」

 エステルの情報に、オレは仲間達と顔を見合わせる。

「そうですね。何回かガチャすれば強力な武器が手に入るかもしれないし」

 さっきの戦闘が大変だった影響なのか、なむらちゃんもリセマラに対してやる気のようだ。


「おお神よ! 我々にリセマラというヒントを与えてくださったことに感謝します!」

 シスターマリアが神に感謝し始めた。

「マリアがリセマラの祈りに入ったな……これは、神の思し召し的な発想で考えてもリセマラが無難なんだろう。よし、じゃあリセマラするか……」


『ピッピッピッ……データ情報を削除します。1度消されたデータは復元することは出来ませんのでご注意下さい』


 無機質な音声ガイドを聞きながらオレはデータをリセットし、再び修道院で目を覚ます固定イベントのシーンに戻った。


 しかし、そう簡単に伝説の武器が出るはずもなく、気がついたら56回目のリセマラを迎えようとしていた。


【中略】


「はぁはぁ……また今回も平凡な武器防具か……今思うと凄いハチマキは貴重な防具だったな」


 するとタイミングよく、スマホからメッセージが届く。

「ガチャをもう1度するには課金が必要です」

 ギョッとしてスマホを確認すると、課金の案内が表示されている。

「スマホのヤツ、課金を要求してきやがる……オレ達がリセマラしていることに気づいているのか?」

「勘の良いスマホですね……設定上はデータ消去が行われているはずだけど……どこかでリセマラの回数がチェックされているのかも」


 スマホが課金のお誘いメッセージを追加し始めた。

「ガチャをもう1度すれば、伝説の武器防具が出るかもしれません……が課金が必要です」

 どうしよう……と相談していると……。

「課金をすれば、強力な装備で冒険できます……課金が必要です。今こそ課金で激レア武器をゲットしましょう」

 スマホが直接的に、課金を要求するようになってきた……何てスマホだ。


 スマホは気づいているのかいないのか、課金しなくても実はガチャが出来る引き換えジュエルが1回分だけある……そろそろ妥協しないと……。

「もうリセマラは諦めて……ジュエルガチャに乗り換えましょうか」

「そろそろ、現実を見て課金するタイミングなのかしら?」

 するとスマホの声に反応したのか、修道院の庭で遊んでいた黒猫のミーコがスマホ画面に飛びついてきた。


「にゃーんにゃにゃにゃーん!」

「あっ! ミーコダメだ!」


 ファンファーレ!


【レア度:超絶レア……呪いの猫耳ヘアバンド】


「にゃーん!」

 黒猫ミーコは猫耳ヘアバンドを装備した。

 おめでとう! ミーコは、ミニスカ猫耳萌えメイドのミーコにランクチェンジしました。


「にゃーん、イクト。また一緒に冒険するにゃん。もうリセマラしちゃダメなのにゃん!」

「おお神よ! 新しい冒険の仲間、ミニスカ猫耳萌えメイドのミーコを仲間に加えて下さったことを感謝いたします」


 もうリセマラする気がなくなったのか、マリアが神に祈りを捧げ始めた。


 そんなわけで、オレ達はリセマラには失敗したものの、ハンターという強力なスキルを持つ猫耳萌えメイドのミーコを仲間に加え次の街に向かうことになったのである。


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