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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第三部 転生の階段編
80/355

第三部 第14話 ドキドキデートメロドラマ


 どういうわけだか、実は血の繋がらない妹だったアイラとのデート計画に、元魔王で同級生の超美少女真野山くんを加えて3人でデートすることになった。


「えっと……どうする、映画館の前に食事にするか? アイラはケーキとパスタのランチセットが良かったんだよな。まだランチには早いけど……」

「そうだね。お昼が食べられるほどは、まだお腹が空いていないけど……でも飲み物を飲んでから映画館に行ってもいいし……」


 ピッピッピッ!


「んっなんだろう? 通知音……ちょっと失礼……」

「お兄ちゃん、電話か何か? あれ、アイラのスマホにも通知が来てる……何だろう。これって【蒼穹のエターナルブレイク】からじゃない? 異世界で何か変化があったのかな」

「今は一旦ゲームクリア状態で任意のクエストしかないはずだけど……そのうち追加シナリオの実装もあるだろうし。一応、確認した方がいいかもね。歩きスマホは他の通行人の迷惑になるし、危険だからそこのカフェで休みながら確認作業をしよう」


 カランコローン!


「いらっしゃいませー。3名様ですね、お好きな席をどうぞ」

「良かったぁ、まだ時間が早いから空いてるね」

「あの、ここってフリーWi-Fiありますか?」

「ええ、店内のどこでもご使用になれますよ。このパスワードを入力してください」


 真野山くんの提案で、駅近くのカフェに入店して席を確保。しかも、フリーWi-Fiが使えるから、ゲームデータのダウンロードなどもバッチリだ。

 オレが注文したドリンクは、アイスカプチーノ、ケーキはスフレチーズケーキ。アイラはさっき話していた通りブルーベリーケーキとアイスティー。真野山くんは、アイスカフェラテとチョコレートケーキ。

 それぞれ少しずつ違うテイストのメニューとなった。

 丸いテーブル席にトレーごと置いて、水分補給とケーキを楽しみながらゲームダウンロード開始。


「わぁ! このブルーベリーケーキ、甘いのに爽やかで食べやすいっ」

「よかったなアイラ! 真野山くん……アイラの頼みをきいてくれてありがとう」

「ふふっ。いろいろアイラちゃんも考えたい年頃なんだろうけど……せっかくだし、今はゲームを楽しもう!」

 なんだかんだ言って、アイラが当初希望していたデートプランを実現させる機会をくれるあたり真野山くんは優しいな。


 フリーWi-Fiを使って画面を確認すると、ひさびさにスマホの冒険者管理アプリが勝手に起動していた。


【新しいアプリのダウンロードが、完了しました。初々しい恋愛シミュレーションゲームをお楽しみ下さい】


「恋愛シミュレーションゲーム? そんなのダウンロードしていたっけ……」

 ダウンロードしたてのアプリは【蒼穹のエターナルブレイクシリーズ】と同系統の企業が開発しているらしい。


「お兄ちゃん、アイラのスマホには女の子向けのオシャレ恋愛ゲームがダウンロードされているよ」

「あれっ。微妙にオレとアイラのアプリのテイストが違うな。性別でオススメのアプリが異なるってことか?」


 勝手に【蒼穹のエターナルブレイク】と連携モードに移行して、攻略対象の美少女のデータを追加し始めた。

 オープニングの画面が始まり、何やら陽気な歌が流れてくる。


『あなたのことが好きなのかもードキドキなデートォ』

 清楚系ヒロインの代表のような爽やかな女性の歌声と、楽しそうな男女のデート風景。


 アプリゲームのタイトルは『ドキドキデートメロドラマ』


【あらすじ】

 ごく普通の高校生のあなた。

 みんなの憧れの的であり、現役魔法少女アイドルである血の繋がらない妹と、魔法界のお姫様であり現役地下アイドルである同級生とデートすることに……。

 実は異世界アースプラネットのネオ立川駅にはジンクスがあり、モノレール北口の駅周辺で愛の告白をすると2人は永遠に幸せになると言われています。

 また、基本攻略メンバーに加えて【蒼穹のエターナルブレイク】の連携機能により、バトルヒロインや隠しヒロインの追加機能もあり! 様々なシチュエーションで女の子達とデートを楽しむ事が可能です。


 頑張って、ヒロイン達から告白してもらおう!


「ヒロイン達から告白される……だと? このゲーム、男から告白するんじゃなくて、ヒロインを告白させるゲームなのか? 大胆な発想だな」

 不思議な点はそれだけじゃなく、ゲームの舞台は地球ではなく異世界アースプラネットという設定のようだ。まぁ原作が異世界転生系スマホゲームだし、意地でも舞台は異世界ではないといけない縛りか何かがあるのだろう。


 ゲームパラメーター画面は恋愛ゲームらしく、かっこよさ、運動神経、話題性、オシャレ度など、もはやRPGの勇者とはかけ離れたものだった。


 説明動画が終わり、アバター登録を済ませてゲームのスタート画面をタップすると、まばゆい光に包まれた。



 * * *



「んっ……あれっ。ここは……?」

 気がつくと、真野山くんが誘ってくれた映画館の前だ。さっきまでカフェでゲームのデータをダウンロードしていたはずだけど……。


「お兄ちゃん! 早く、映画始まっちゃうよ!」

「イクト君、何の映画がいい?」


 当たり前のように、これから観る映画を選び始めるアイラと真野山くん。2人の顔をよく見ると、ゲームの攻略画面のごとく横にパラメーターが現れた。


 このパラメーターで、2人がオレに対してどれくらい好感度を抱いているか分かるようだ。


【攻略対象ヒロインその1:血の繋がらない妹アイラ(結崎アイラ)】

 現在のドキドキ度:90

 攻略難易度:中くらい

 アイラのドキドキ度90パーセント……アイラちゃんはあなたのことが大好きだけど、少し遠慮があるようです……。やっぱり、最近まで兄妹として育てられているし、遠慮のようなものがお互いにあるのでしょう、あなたから兄妹の壁を破って!


 意外なのが真野山君のパラメーターだ。


【攻略対象ヒロインその2:魔族の姫君アオイ(真野山葵)】

 現在のドキドキ度:95

 攻略難易度:中くらい

 ドキドキ度95パーセント……あなたに夢中でメロメロ状態です。ほぼハートを落としていると言っても過言ではないでしょう。おそらく伝説のモノレールの下で告白されます。


 このまま行くと、デート帰りに真野山くんに告白されて、オレの人生の伴侶は真野山くんに確定するらしい。

 そんなことで、伴侶が決まるって一体……。

 真野山くんは可愛いし、胸も大きいし、嬉しくないことはないけど。もっと、いろいろとお互いのことをよく知ってから結婚を決めた方が良い気がする。



 すると、当然のように最近猫から人間に戻ったマリアや、里でボランティアに励んでいるはずのエルフのアズサ、神官エリスも姿を現した。


「イクトさん! 私達も混ざりますね!」

「何故いるっ? 一体どこからやって来たのっ?」

「ああ、それが緊急クエストのお知らせがスマホからきてて、気がついたらデートクエストに参加することになっていたんだよ。5分で支度してゲートでサッとワープしたんだ」

 突然の展開に驚くオレに、今の状況説明を簡単にしてくれるアズサ。


「そうそう、お仕事中に突然呼び出されたからびっくりしましたけれど……またみんなでクエストが出来て嬉しいですわ。普段のローブはロッカーに預けてきましたの」

 一応、街中に歩いていても浮かないように配慮しているのかエリスの服装は神官のローブ姿ではなく普通のワンピースだ。ただ単に上着のローブを脱いで、中に着ていたワンピース装備だけになったのかも知れないが……。


「まぁ私なんかは、ちょうどお仕事がお休みだったんでクエストが入っても余裕でしたけどね。でも、デートクエストならもっと準備する時間が欲しかったです。せっかくイクトさんとのデートなのに……」

 そう言いつつも、相変わらずナチュラルメイクと清潔感のあるスカートスタイルのファッションが決まっているマリア。


 そういえば、この3人もオレと結婚するとか騒いでいたけど、本音はどうなんだろう?

 スマホの画面に3人が登録されると、ドキドキ度が表示された。


『マリアさんのドキドキ度120パーセント……行き過ぎた好感度です』

『アズサさんのドキドキ度119パーセント……行き過ぎた好感度です』

『エリスさんのドキドキ度119パーセント……行き過ぎた好感度です』


『以上のデータから、あなたの人生の伴侶はマリアさんになるでしょう!』

 

【マリアさんと結婚した場合……(マリアエンド)】

『Fカップ巨乳の美人白魔法使いマリアさん。可愛くスタイルの良いマリアさんとの新婚生活は、同人誌も裸足で逃げ出すほどの甘々な展開になりそう。けれど、マリアさんのギャンブルの借金返済のために、家に抵当権がかけられて大変なイクト君……。2人で鳥の唐揚げ作ったり、貧しいけど仲良くやってます!』

【ラブ度100パーセント、幸福度25パーセント……】


「ラブ度に反して幸福度が低すぎだろ? なんだよこのパラメーター……。しかも同人誌も裸足で逃げ出すほどの描写なんてどうせ期待できないだろうし……」

 むっつりスケベ根性のあるオレとしては、Fカップ巨乳美女であるマリアとの甘々新婚生活に興味がないといえば嘘になる。だが、それ以上にギャンブルによる借金の重圧がのしかかるかと思うとフラグを折りたくなるというものだ。


 マリアのオレに対する好感度を下げて、他の女の子とフラグを立てよう。幸福度の低いマリアエンドから逃れるんだ。


 オレはこの時から、恋愛シュミレーションアプリのパラメーターを意識するようになった。


 将来の不幸を回避するために……!



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