第二部 第21話 最終決戦! オレ達のハーレムはこれからだ!
オレは真野山君に取り憑いている大魔王を倒すために、最後の手段で伝説のモテスキルモテチートを発動し成仏したグランディア姫を呼び出した。
グランディア姫の夫である伝説の勇者は、このモテスキルの持ち主だったっけ……。
『まぁ、イクト君には散々取り憑いて迷惑かけちゃったし、これくらいはね』
『ありがとう、グランディア姫。でも、こうして面と向かって話す日が来るなんて、不思議な気分だな。過去の映像で見た以上に真野山君にそっくりだ』
グランディア姫は霊体ではあるものの、間近で見ると真野山君を大人の女性にしたような清楚な超絶美人だ。さすが、超女好き勇者ユッキーが夢中になっていただけの事はある。
真野山君にそっくりというオレの指摘に、姫は髪をさらりとかきあげて、ぽつりぽつりと答える。
『ふふっそうね、あの子は私の遺伝子を色濃く引き継いでいるみたい。もしかしたら、その影響で大魔王グランディアの依代として目覚めてしまったのかも。私は、古代竜一族の血と大魔王の血を両方引いているでしょう? そのせいか、身体の中に流れる魔力が強すぎてね、結局病弱になって短命で終わったの』
姫からの意外な告白、てっきり姫が短命で終わったのは暗殺か何かだと思っていたのだが。
どうやら、体内に継承していた大魔王の魔力や古代竜の魔力に耐えきれずに亡くなったようだ。
『えっじゃあグランディア姫の死因って……暗殺とかじゃなくて、本当に病気で』
『みたいね。自分では持て余すほどの魔力を体内に蓄えた代償だったのか。もしくは、夫に呪いをかけた仕返しが自分自身に返ってきたのか。どちらにせよ、葵の身体にも限界があるはずよ。どうにかして、暴走を止めてあげましょう。これが、私にできるあなたへのお詫びになるといいんだけど』
さんざんオレに取り憑いていたことをグランディア姫は詫びてくれた。そして真野山君を救うために、大魔王のいるコンテスト会場に戻ることに……。
話し合いを見守っていたオレの仲間たちが、冒険者用の武器を手に駆け寄って来る。最終決戦に参加する気のようだ。
「お兄ちゃん! 私も行く! お兄ちゃんだけを危ないところに行かせられないよ」
「そうだぜ、イクト。アタシ達、なんだかんだ言ってこれまで一緒に戦ってきた仲間だろう? それに、真野山君を見捨てるわけには行かないしな」
「そうですわ。同じ勇者の血を引く真野山さんを助けるために……何か私たちも協力できたら」
メンバー達がオレと一緒に決戦へ行きたがったが、魔族神官さんたちに止められてしまう。
「残念ですが、あなた達がいかに優秀な冒険者だとしても、人間やエルフ族が参戦できる瘴気を逸脱しています。おそらく、加護なしではそばに近づくだけで生体エネルギーに危険が生じるでしょう」
「そんな! 私達、イクトさんとずっと一緒に戦ってきたのに」
大魔王のそばには既に近づけないほどの瘴気が漂っていて、加護のない一般の人間は死ぬだけだという。
「ありがとう、みんな。なんだかんだ言ってオレもみんなとクエストが出来て楽しかったよ。オレってハーレム勇者としても、聖なる勇者としても中途半端でどっちつかずだったけどさ。でも、もしオレに勇者としてのチカラがわずかでもあるなら、そのチカラで真野山君を助けてあげたいんだ」
「そんな。イクトさんは、勇者として中途半端なんかじゃありません! 世界を滅ぼす宿命を背負った真野山さんと友達になって、魔王の玉座を継承できるカノンさんとも幼馴染で仲が良くて。気がつかないうちに、きっとイクトさんがどんどん世界を平和に導いていたんです。勇者イクトという人は、これまでの勇者とは違った役割を背負っていたのだと。私は、そう確信しています」
「……マリア、そんな風に考えてくれていたんだな。うん、自信を持って決戦に挑めそうだよ」
マリアがオレの勇者としての役割を分析して、見解を述べる。気がつかないうちに世界を平和に……か。なら、余計今回も頑張らないと。
「相手は手強いけど、イクト本当に行くのか? これ持っていけよ、エルフ族伝統のお守りだ」
「イクト様、ご一緒できないのなら、せめて私の神官魔法でチートスキルのMP補充を出来るように加護をかけましう。ずっと、ご無事をいのっています。死なないで下さい」
アズサとエリスも心配してくれて、それぞれお守りと加護呪文をかけてくれた。
「ありがとう、戦いで役立てるよ」
「にゃー! イクトが死んだら嫌なのにゃ!」
オレのペットのミーコも、人間猫耳メイドモードで泣いていた。不安そうにすり寄って来るしぐさは、可愛いうちの黒猫そのものだ。
「ミーコ、いつもみたいにアイラのそばにいてやってくれよ。それが、おれからのお願いだ」
「にゃー……分かったのにゃ……お留守番きちんとするにゃ」
「私も一緒に行くわよ! 私もグランディア姫程ではないけど、同じ魔王一族の血を引いているから、大魔王の魔力に対抗できるかもしれないわ!」
もうひとつの魔王一族の子孫、令嬢カノンだ。他のメンバーが参加不可能となってしまっている今、生身で一緒に移動できる仲間ができるなんて心強い。
「カノン……ありがとな……」
「イクトのこと放っておいたらまた、女アレルギーで気絶しちゃうかもしれないでしょ!」
ぷいっと拗ねたような仕草で頬を赤らめながらツンデレ気味にバトル参加を告げるカノン。なんだか、案外余裕あるな。
「では、勇者イクト一行に神のご加護を……」
オレ達は魔族の神官に移動呪文をかけてもらい、コンテスト会場にワープした。
* * *
大魔王グランディアの怨念が復活しているはずだが何も音がしない、それどころか人の気配すら消されている気がする。
「妙に静かだ……古代龍さん達は? あのあと、何があった?」
「ねえ、イクト! あれは?」
会場の扉を開けると、そこには羽根を焼かれたボロボロの不死鳥と、イケメン魔族に戻っていたハズのオヤジプルプルさんと白キツネさんがいた。全員ボロボロの状態で、倒れている。少し焦げたザコモンスタープルプルと普通の白キツネだ……。
「そんな、また呪われた姿に戻ってしまったのか……」
すると、焼け出された状態の不死鳥が震える声で語り始めた。
「ピィ……ボクには、姫様にそっくりなあの少年を殺すことはできなかったんでピィ。ボクは不死鳥の剣に変身して大魔王を倒すチカラがあるはずだけど、でも、大好きな姫様にそっくりなあの人を殺すのは嫌なんでピィ……」
『不死鳥……ごめんね、ありがとう……』
オレに取り憑いているグランディア姫が、優しく霊体で不死鳥の頭を撫でてやりながらお礼を告げる。
「ピィ、グランディア姫様……! ずっと会いたかった。ご無事で何より……」
姫の霊体が見えたのだろうか? 頭を撫でられて安心したのか不死鳥はゆっくりと瞼を閉じて、眠ってしまった。
ヴォオオオオオン、ヴォオオオオオン!
オレ達の存在に気づいたのか、魔力を高めるためのうめき声をあげてオーラを放つ大魔王。
大魔王の瘴気が凄すぎて、もう真野山君に近づくことすらできない。すると姫とカノンが魔力でオレにバリアを付けてくれるという。
「10分……私達がチカラを合わせても、それくらいしかバリアは持ちません。イクト君の心が葵の心に届けば、大魔王も離れるかも……気をつけて」
「これが最後の決戦よ、イクト……死なないで!」
オレはバリアを身につけ、真野山君の元へと一歩ずつ足を近進めて行く。オレにはモテスキル『モテチート』とかいうイケメンパワーでモテるだけのチートスキルしかないけど、おかげで成仏した姫がバリアで守ってくれる。このチートスキル、多少は役に立ったのかもな。
「こうなったらモテチートを全開に発動してやる!」
オレはスマホのスキルゲージを、めいっぱい指で回して最大値まで引き上げた。
「真野山君の身体から出て行け! 大魔王!!」
大魔王は瘴気を纏い……オレの姿を確認するやいなや、目をかっと見開いた。指を震わせながら、何かを告げようと近づいて来る。
「キサマ……何者……ッてきゃあ! イケメン⁈ やだっ。私ったら、こんなはしたない姿で……ちょっと待ってね! 普段は、こんなドロドロした外見じゃないの! カレシがハーレムを構築してからヤケになって大魔王になっちゃったけど。こんなイケメンがいるなら、もうどうでもいいかなって……。ゴメンね、すぐに可愛い私に戻るから‼』
大魔王の声は何かのエフェクトで加工していただけのようで、案外若い感じのしかも女性の声が響いてきた。
「えっえっ何、この軽い感じのノリの大魔王、まさか中身は若い女の人?」
「そうよ、私の名前は大魔王グランディア! 後継がなかなか決まらないで短期間で大魔王役をバトンタッチしたから、あっという間に17代目とかいう歴代っぽいポジションにいるけど。普段は、その辺にいるごく普通の女子っていうか。まぁ、ハーレム男に何股もかけられてから呪いの勉強ばっかりしていたんだけどね」
「大魔王グランディア17世って女なのかよ⁈ しかも相手の男ハーレム作ったって、まさか伝説のハーレム勇者みたいな男じゃないだろうな……」
すると、ドロドロした瘴気が消え、何故か丑の刻参りルックの和装美女が現れた。大魔王は流し目をしているかのようなセクシーな目元、口元に小さなホクロがある艶っぽい顔立ち。
美しい黒い髪をポニーテールに結び、大きく開いた胸元からは胸の谷間がくっきりと覗きなんだか色っぽい。
「これが大魔王の正体か、思いのほかセクシーな美人だな」
そして、お約束なのか手にはワラ人形と木槌、五寸釘を持っている。まるで、グランディア姫のような。
『ご先祖様? まさか丑の刻参りの書物を城に残されたのは、ご先祖様だったのですか?』
オレに取り憑いている姫が、大魔王の和装美女に尋ねると、ああ……そうかも……と答えた。
「人を呪わば穴二つ……私カレシを呪おうとして、自分が呪われて大魔王になっちゃったの。でも、あなたみたいなイケメンに会ったら、カレシのことなんて吹っ切れちゃったわ。こんなイケメンが存在していたなんて、世の中広いのね。ああ、ヤケになってイケメンが集まる集落のイケメン達を現世から消したけど、ちゃんと戻しておくから。じゃあ、またいつか……」
そう告げると、清々しい表情でセクシー大魔王は成仏して行った……。
「まさか、勝ったのか……? イケメンチートパワーで?」
よく分からないがモテチートは、オレを通常時の何倍もイケメンにしてくれるようだ。自分でも把握できる範囲では、しぐさのひとつひとつがイケメンっぽいカンジがする。
「ん……ここは……?」
今度は正真正銘、本物の真野山君の声だ。普段よりわずかに声が高いけれど。良かった、真野山君は無事だったようだ。
「真野山君大丈夫……って。真野山君……その胸が……」
「イクト君! 隠していてごめんね、ボク呪いで男の子の姿にされていたけど……本当は女なんだ。ひと月に数日だけ女の子の体に戻れる体質で……。でも、今日から呪いが解けて普通の女の子だけど」
服が破けてしまった真野山君は、上半身がほとんど肌蹴ている状態で、形の良い大きめの胸が丸見えで。オレは恥ずかしくて思わず目のやり場に困りながら、自分の着ていたシャツを真野山君の身体を隠すように着せてあげた。
『ふにっ!』
「きゃあ!」
服を着せてあげるときに、動揺しているせいか不可抗力で、真野山君の柔らかい胸を揉んでしまった。
真野山君は現在、完全に女の子の身体だ。驚いて上げた声まで可愛らしい……真野山君は本来は女の子として産まれてきたというだけあって、本質は女性らしいのだろう。
「……マズイ! こんなお約束なラッキースケベ現象に見舞われた日には、オレの女アレルギーが発症して……」
『?』
「女アレルギーが発症……しない?」
『!』
「何も起きない……だと?」
「イクト君! 今、女アレルギー起こしていないよ! まるで普通のハーレムゲームの主人公みたい……良かった。イクト君の女アレルギー治ったんだ」
感動して、オレの胸に巨乳を押しつけながら抱きつき涙を流し始める真野山君。こんなに密着状態で何も起こらないという事は、本当に呪いが解けたのだろう。
正真正銘の巨乳超絶美少女に戻った真野山葵君。女の子なので、今後は真野山君ではなく、アオイちゃんと呼ぶべきだろうか?
アオイちゃんは、オレのシャツを羽織り、恥ずかしがりながらも告白を始める。
「イクト君……助けてくれてありがとう。あのね、ボクたちの一族の女性が同い年の男の人に裸を見られたら、その人のお嫁さんにならないといけないんだ。私をイクト君のお嫁さんにしてくれますか?」
頬を赤らめながら潤んだ瞳を上目遣いにして、オレに逆プロポーズするアオイちゃんは最高にオレの好みのタイプの超絶的な可愛らしさで……。オレは感動と興奮で、謎の雄叫びを上げながら『急性逆プロポーズ女アレルギー』を引き起こしその場に気絶した。
「イクト君⁈」
そんなわけで、まだきちんと女アレルギーは戻っていないものの、オレ達はアースプラネットのボスである大魔王を成仏させ、平和をもたらしたのであった。
めでたしめでたし!
* * *
「待って下さい! イクトさん! まだRPGお約束のクリア後の世界が残っています! それにイクトさんはまだ誰を正妻にするか決めていませんよね⁈」
「そーだぞイクト、はっきりしてくれよ!」
「私達3人ともお嫁さんになるために一緒に旅していたんです!」
いつの間にかオレ達を囲むように集まってきた、マリア、アズサ、エリスの3人。
「おにーちゃんのお嫁さんになるのはアタシなんだよ!」
実は、血の繋がりのなかった妹アイラ。
「にゃー、イクトのお嫁さんはアタシなんだにゃー!」
ペットの黒猫ミーコも、人間猫耳メイド姿でお嫁さんアピールだ。
まあいろいろあったけど、オレ達は平和に楽しく暮らしてます!
異世界RPG【蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-】、グランディア姫の呪い編ストーリークリア!
今後は、クリア後の世界を攻略だ!
大魔王を倒してRPGでいうクリア状態になりました。今後はクリア後の世界を少しずつ攻略していきます。まだイクト達の冒険は続きます。ここまで読んで頂きありがとうございました!
これからもよろしくお願いいたします!