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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第二部 前世の記憶編
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第二部 第19話 魔王イケメンコンテスト


 新しい魔王を決めるための魔王イケメンコンテスト……二次予選はオレを含めて、たったの8人。ほぼ本選と言ってもいいこの戦いで、次の魔王が決まるという。

 控え室のモニターを気にしながら、出番を待つ出場者達。オレも、同じ出場者の真野山君とモニターで会場の様子を見守る。


「結構、お客さんが多いな。まぁ当たり前か、魔族にとって大切な日だもんな」

「うん。でも、なんだかこのコンテスト……イケメンから魔王を選ぶってコンセプトのせいか、男性より女性のお客さんが多くない?」

「確かに……いや、ここからじゃ分からないだけで、男性の剣や魔法の凄腕が多数、見に来ているのかもしれないけど」



 タキシード姿の司会者らしきイケメン魔族タレントが、マイクを握り司会進行を始めた。どうやら、開始のようだ……そろそろ舞台に上がる準備をしよう。



 * * *



『さぁ、皆さまお待たせしました! 伝説のイケメン魔王の後継者は君だっ! 魔王イケメンコンテストォオオ開催ですっ』


 きゃぁああああっ!


 時期魔王を決めるための大切なコンテストのはずだが、真野山君の指摘通りなぜか観覧席は女性の姿が多い。女性が6割男性が4割といったところか。

 普通、次の魔族の支配者を選ぶんだし、強い男性の魔族とかが様子を見に来ていてもいいはずなんだけど。イケメン好きのお客さんやイベント好きのお客さんがメイン層のようで、不思議な気持ちだ。


 本当に、こんなイケメンコンテストで次期魔王を決めていいのか謎だった。だが、今の魔族社会に求められているのはチカラの強い魔王ではなく、民衆に対して語りかけるのが上手かったり、外交を上手くこなしたり、そういう人材が必要なんだそうだ。


 どっちにしろ、もう暴力で人間を襲いに来なければ、それでいいんだけど。


「ふぅ……それにしても、いきなりこんなコンテストに出るなんて……ちょっと準備不足になっちゃったかな? 僕としては、イクト君が優勝で良かったと思うんだけど」

「まぁ、真野山君が出ないと納得しない派閥もいるだろうし……それに、勇者が魔王も兼任するのって結構ハードそうだしな。いいんだよ、これで」


 元魔王の真野山君は、魔王復活枠としてエントリーしていないのに呼ばれてしまったそうだ。でも、どこからどう見ても超美少女で、ほぼ全員が真野山君を女の子だと認識しているのに、よくイケメンコンテストなんかに呼ばれたな……。

 女の子だって、ばれたらどうするんだろう……その辺だけ少し不安である。


『えっアオイさまも出場してるって、本当なの? やっぱり、前の魔王派閥が無理やり……?』

『そうらしいよ。アオイ様は出場にあまり前向きじゃなかったらしいけれど。超美少女に見える男の娘アイドルとして確立しているんだし、無理にアオイ様の性別がバレるような真似をしなくても……』

『だよね、だってアオイ様ってどこからどう見ても女の子……』


 気のせいでなければ、観客席のお姉様方が真野山君性別疑惑について語っている気がする。というか、殆どの民衆が真野山君の事を性別を偽って魔王をやっていた女の子だと思っているようだ。オレの感性は間違っていなかったのか……良かった。


『では、出場者をご紹介します! 勇者イクトー!』


 おおー!

 きゃぁあああっ、イクト君! カッコいーー!


 次々と名前を呼ばれて、コンテスト参加者が舞台の上にズラリと並ぶ。

 エルフや魔族はイケメンがいかにも多そうな種族だが、ドワーフ族がまさかのショタ系イケメンを2人出してくるとは思わなかった。どんな風に展開していくのやら……。


「にゃー! イクト頑張るのにゃん!」

「お兄ちゃん! ファイトー!」

「イクト君頑張ってね!」


 二次予選は妹アイラ(実は養子で血の繋がりがなかったらしい)とペットの黒猫ミーコの異世界猫耳メイドバージョン、そして除霊に付き合ってくれたセクシー美女三蔵法師が応援に来てくれた。


 いつも一緒に旅をしていたマリア達3人の姿が見えない……。オレと誰が結婚するかで、妹アイラと揉めていたからな……あの3人がいるとトラブルに巻き込まれそうだし、今回は姿が見えない方がいいんだろう。


 司会者から、ゲストの紹介が始まった。

『では魔王イケメンコンテスト二次予選を開始します! ゲスト審査員はこの方達です!』

『あの伝説のイケメンスーパーアイドルユニット、魔族系王子様のお二人!』


 現れたのは、古代龍とその参謀白キツネのイケメン魔族バージョン、伝説のアイドルユニット魔族系王子様の2人……古代龍は肩に不死鳥を乗せている。

 真野山君の話によると不死鳥が復活したので、オヤジプルプルさんと白キツネさんにかかっていた呪いが解けて元のイケメンの姿に戻ったそうだ。不死鳥のヤツただの小鳥じゃなかったんだ……。


『みんなぁっ! 久しぶりだな……魔族系王子様のリュウこと古代竜だっ! 自分自身の目で新たな魔王誕生を拝めるなんて今日はサイコーだぜっ』


 きゃぁああああああっ! リュウさまー!


 観客席から、黄色い悲鳴がこだまする。なんだよ、まだ大人気じゃないか? 若干親父プルプルの時とキャラが違う気がするが、イケメンアイドルモードだと多分このノリをキープし続けているんだろう。

 こんなに人気があるんじゃ、別に古代竜さんが普通に魔王の座に戻ればいいだけなんじゃないのか?


『ふふっ、参謀系王子の白木ツネだよ。久しぶりだね……しばらくアイドルマネージャーとして裏方をやっていたからね。ビシバシ採点するからよろしく!』


 きゃあああああああっ! ツネさまー!


 なぜ裏方のマネージャー業をやっていたのか、謎なくらい現役ぶりを発揮しているイケメンキャラの白キツネさんこと白木ツネ。っていうか、2人ともいつもと雰囲気違うな。これがアイドルの営業モードか……。

 アイラや真野山君が厳しく指導されていたのも分かる。白木ツネさん達のこのカリスマ性……。彼らは、プロフェッショナルなアイドルといっても過言ではないだろう。


 この2人は以前、魔王と参謀を務めていたから審査員を任されるのはまあ分かる。


『ゴスロリドール財閥令嬢! カノンさん!』


 うっぉおおおおおお! カノン姫ぇえええ!


『今日は、新しい魔王を決める審査員として参加します。私は、姫として引退しちゃうけど、みんなのアイドルとしては引退しないから安心してねっ!』


 きゃぁあああっ。カノンちゃん可愛いぃいいっ!


 次に現れたのはオレの幼馴染みで、悪役令嬢のカノン。まだまだ、オタ系の若者やゴスロリ好きの女性から人気のようだが、政権交代ということで一旦現役を退く。カノンも最近まで、魔王の玉座に座っていたから審査員をやるのはまあ分かる。


 問題は、次に現れた人物達だった。


『伝説の勇者ユッキーに愛されていた伝説の側室達3人の生まれ変わり! マリアさん! アズサさん! エリスさんです!』


 なぜか、観客席に向けて勝ち誇ったような笑顔で登場する例の3人組。


『えっ誰? あのマリアさんって人、すっごい清楚で絵に描いたような美人さんじゃん? さすが、勇者様に愛されていた方の生まれ変わりだわ』 

『あのエルフのアズサさん、すっごい肌が綺麗ー。特別な人っているのねっ……あっ人じゃなくてエルフなのかぁ』

『うぉおおおっ。正ヒロインになるべくして生まれたような、超美少女エリス様の可愛らしく美しい姿をこんなところで拝めるなんて』


 知る人ぞ知るって感じの知名度のはずだが、大物感溢れる登場の仕方をしているせいか、即席でファンが出来ている気がする。恐ろしい。


『うふふ、御機嫌よう。みなさん……伝説の勇者に寵愛されていた前世を持つ私達の目に狂いはありません』


 きゃあああっ! マリアさん、素敵ー!


 ビッグネームに混ざり、当然のごとく現れたマリア達。

 ギャンブルで借りた金を使い切ったはずだが……なぜあんなに余裕なのか。まさか、この審査員の仕事で借金の一部を返済するつもりなのか? 


 観客も3人が放つ自信に満ちたオーラにやられているのか、謎の美女3人組として注目されているようだ。普段より化粧も濃いし、なんだかすかしている気がする。


 他にも、魔族系ファッションデザイナーなどの著名人が、数人審査員を務めるようだ。



 * * *



 コンテスト内容は歌唱審査、ダンス審査だ。歌唱審査は吟遊詩人や歌い手が混ざっているせいで高レベルな戦いになった。だが参加者の歌唱力がみんな同じくらいで、誰が1番……という決め手に欠けるようだ。意外な展開である。


 次にダンス審査……こちらもそれなりにレベルが高いものの、やはり誰が1番という決め手に欠ける。なんでみんなレベルが同じくらいなんだ⁈


「くっこのままじゃ、コンテストの決め手に欠けるな、埒があかないぜっ」


『おっと、勇者イクト君から、イケメン特有のセリフ【ラチがあかないぜっ】が入りました! これは高ポイントですね』

 なぜか、つぶやき1つ1つが審査対象になっているらしく、迂闊なセリフは喋れない雰囲気だ。気をつけていかないと。


『では次は演技審査です! 演技審査は二次予選の告知にはありませんでしたが、カノン嬢の要望により行うことになりました。男らしく、上半身裸で竹刀で素振りの練習をする剣道部員の若者……という設定で演技してもらいます! 掛け声やしぐさで、カッコよさをアピールしてください!』


「まさか、性別を偽って女性の参加者はいないでしょうし……。上半身裸になるくらい、どうってことないでしょう? ねっ? 真野山さん?」


 カノンがドヤ顔で語る……まさか真野山君のことを疑って……。

 っていうか真野山君って、清楚で可愛らしくて誰がどう見ても女の子なんだけど。会場のお客さんも、いっせいに真野山君に注目し始めた。


「棄権されてもいいんですよ……あなたは、じゅうぶん頑張りました」

 エルフのイケメン吟遊詩人が、真野山君にそっと語りかける。

「きっと何か深い事情があって、真野山さんも男性として魔王を務めていたんだろう……。もういいじゃないか……可哀想だろ?」

 イケメン大学生モデルが、うつむきがちの真野山君を庇う。


「このお姉ちゃん男の人のかっこうを誰かにするように命令されてたって、ネットの書き込みに載ってたよ! お姉ちゃん気にしなくても大丈夫だよ! 誰もお姉ちゃんのことを責めないから!」

 ドワーフ族の美少年が、ネットの書き込み情報を暴露し始めた。すでにドワーフ君の中ではお姉ちゃん扱いなのか。


 なんていうか参加者全員が、真野山君のことを女の子だと思っているようだ。

 まぁ友人であるオレもそう思っているけど。


「おやめください! この方はワケがあって上半身は見せない主義ですが……その今日は、日が悪いというか何というか……」

 すかさず、真野山君をかばうようにイケメン魔族神官が真野山君をガードし始める。この人、もしかして護衛として送り込まれていたのか。


 んっ日が悪い? 真野山君が男性であるという主張と、日が悪い事と何の関係が?

 よけい怪しいと思われたのだろう、会場がさらにざわつき始めた。


『もしかして不正?』

『前の魔王って、やっぱり女の子だったの? 可愛すぎるものね』


「あのちょっと確認していいですか?」

 女性デザイナーの審査員が前に出て、真野山君の服を確認する……。

 黒いシャツのボタンを上の部分だけ開けると……真っ平らの胸元が見えた。


「ああなんだ……疑ってゴメンなさい……本当に男の娘……おや?」

 次の瞬間、真野山君は不思議な青白い光に包まれて心なしか、線がより細く、胸がどんどん膨らんでいき……?


 男の子から、女の子に変身した?


 ザワザワ……突然の変身に動揺する会場。魔族の体質には詳しくないが、もしかしたら性別が変化する特徴があるのなら完全な不正とは言えないのかもしれないし。どういう事なんだろう?


 すると、神官以外の多数の魔族達が真野山君を庇うように前に立ち……。


「違うんです……! 実はアオイ様には幼少の頃から、不思議な呪いが掛けられており……産まれた時は姫君だったのですが、次第にひと月に数日間しか女性に戻らず……。それ以外は男性になってしまうという不思議な呪われた体質なのです……どうかご理解を……!」

「えっ真野山君って、呪いで超美少女に見える男の娘だったの?」


 その時、身体の変化に苦しみ真野山君がもがき始める。


「うう……熱い……いつもと何か違って……きゃあ!」


 真野山君をドス黒いオーラが包み始める……次の瞬間、真野山君の魂は既に何者かに乗っ取られた後だった。


『くくく……ついに我が依り代が魔王の血に目覚めたようだな。我が名は魔王グランディア17世……今ここに魔王として復活を宣言する! 人間どもよ、恐怖を味わうがいい‼』


「えぇぇっ! こんなところで伝説の魔王復活⁉」


 楽しいコンテスト会場が一転、ラスボス特有のオーラに包まれて暗雲が立ち込め始めた。まさかのボスバトルがついに始まるのか?



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