表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第二部 前世の記憶編
51/355

第二部 第6話 ハーレム予言の歌


 女アレルギー勇者イクトの前世である、超女好きハーレム勇者ユッキー(結崎イクト)に最大のピンチが訪れる。



 * * *



「嬉しい、ユッキー! 私をお嫁さんにするためにお付きの人達を従えて、わざわざここまで旅をして来てくれたのね!」

「えっ? お付きの人って……私達のこと……? そんな、ユッキー……私達を花嫁だのなんだの言っていたのに、実は魔族の姫君と結婚するために利用していたのね?」

「にゃーん! 猫と人間じゃ結婚できないってことですかにゃん? ひどいのにゃ」

「ち、違うんだっ! オレとしては、きちんとみんなを花嫁として迎えていたし、伝説のハーレムを作ろうとして……」

「伝説のハーレム? そこのお姫様と2人で作る気だったんでしょう! 愛していたのに……バカっ」

「ああっ待ってくれっみんなっっ」


 グランディア姫の空気を読まないセリフに、マジギレするハーレム要員たち……怒って離れていくものもいれば、ショックで動物の姿になってしまう獣人族の娘もいた。


 かつて、結婚の約束を交わした幼馴染である魔王の一人娘グランディアと、気まずい再会を果たした女好き勇者ユッキー(結崎イクト)……。しかし、グランディア姫……美しさもさる事ながら、さすがラスボスの娘だ……登場しただけでハーレム要員たちの自信を打ち砕くとは……すでに最大の修羅場と化している。



「まあ、なんというか遂に修羅場を迎えてしまいましたね。今まで勇者様補正でいろんな種族の女性をお嫁さんに迎えていましたが、それも限界なのでしょう」


 古株のハーレム要員である元修道女のマリアが、髪をさらっとかき上げながら状況分析をし始めた。

 Fカップ巨乳のナイスバディでなおかつ黒髪清楚系の美人というユッキー好みのマリアとは、いろんな女性を花嫁に迎えてからも、ふと思い出したように定期的にイチャイチャしている……。だから、マリアにまでは捨てられないような安心感があったのだが……まさか、オレを見限るつもりなのか?


「まっマリア? 何冷静に分析し始めているんだよ! お前は最初の花嫁だし、オレのことを捨てないよな? 花嫁が何人増えてもお前とだけは週に1回はラブな夜を過ごしているだろう? お前だってオレなしじゃ生きていくのは辛いはずだっ」

「ふっ……長い付き合いですからね。いろんな女性とあなたがイチャラブハーレムを構築している間も、ずっとずっと耐えて来ましたし……」

「そんな……耐えてきたって……お前そんな風に感じていたのか……」


 すると、ハーレム要員のなかではマリア同様古株に当たるエルフ族のアズサと神官一族のエリスが、それぞれの想いを語り始めた。


「マリアだけじゃないぜっアタシだって世間知らずなエルフ娘から今じゃ立派なギャンブラーヤンキーだしさ……あのままエルフの里で世間の汚れを知らずに生きていけたら……いや、それじゃあギャンブルの楽しさを享受できないか」

「私も……伝統的な神官の一族に生まれて、突然あなたに嫁ぎましたけど……。まあ、アズサさんと一緒で外の世界の楽しさを知ることができましたし……恨んではいませんわ」


「ちょっ……そんな……」


「おバカさんな人ですね……私達3人ともあなたの事を愛しているって言ってるんです……どんなに女好きでもね……でも、今回は相手が魔王の娘と大物ですし……あなた1人で対処するのが良いでしょう。ラストバトル……頑張ってくださいね。私達はいつものギャンブル場で楽しんで来ますから……拠点はどこがいいかしら?」


 良かった、愛してるって……怒っている雰囲気ではあるものの頬がちょっと赤いし、マリアの奴やっぱり可愛いな。週に一度はイチャイチャしてて良かった……よし、見限られた訳じゃなさそうだ。

 そんな感じで、愛されている事を再確認できてほっとするも、一旦撤退する様子で心細い……っていうか、バトル面でもこの3人が高レベルキャラなわけで……オレ1人で魔王とやりあえるか不安で仕方がないんだが。


 だが、オレの不安をよそにマリア達3人は、オレが魔王の娘と【男女間の話し合い】という最大のバトルを行なっている間、どこに泊まるか話し合っている。


「拠点かぁ、安い宿じゃないと経済的に大変そうだよな。あーあ大穴でも当たればなぁ」

「そうですわね……。せっかくですし拠点はネオ新宿のハロー神殿が良いのでは?」

「エリスの元職場よね……じゃあそこにしましょう」

「すべて終わったらハロー神殿の宿泊施設に来てくださいな。久しぶりに神官の仕事でお金を稼がないと……」

「そういう訳だから、頑張って魔族のお偉いさんと話し合えよ!」


 修羅場を感じ取り、立ち去るマリアたちハーレム要員。まさかこのまま、勇者ユッキーのハーレム伝説は終わってしまうのか⁈


 ラストバトルだというのに1人になってしまった……。


 まだだ。まだ、オレのハーレム伝説は終わらない……オレが終わらせない! 何かうまいこと言ってこの場を切り抜けてやる……オレは伝説のハーレム勇者なんだ!



 * * *



「話し合いは終わったかね……何やら随分修羅場が展開していたようだが……」

「えっ一体誰? なんか超イケメンなんですけど」


 赤い月と大きな門をバック、にキィキィと鳴くコウモリ達。しばらく古城を背に黙っていたオレと姫だったが、姫と親しげな超イケメンと虹色の羽を持つ小鳥が現れた。小鳥の方は、ゆらゆらと燃える炎が羽から漂っていてオレの目が確かならいわゆる不死鳥という奴だ。


「グランディア……お前は下がっていなさい、ここは男同士で話し合おう」

「お父様⁉ ……分かりました、部屋に戻っています」

「ピィ! 姫様ボクもついていくでピィ!」

 小鳥は、さっきまでお父様と呼ばれたイケメンの肩に乗っていたが、姫の肩に飛び移り、姫とともに部屋に戻って行った。


「こんなところで立ち話もあれだ……君も城に入りなさい。この城門は結界が張ってあるから……気をつけるように……」

「は、はぁすいません……」


 何故かイケメンに連れられて古城に入る勇者ユッキーは少なからず、いやかなり大きくショックを受けていた。お父様と呼ばれたイケメンが、あまりにも若くていい男だったからだ。すでに、このイケメンバトルの行く末は魔王様の勝利で確定しているような気すらした。


 負けた……オレよりイケメンが、このアースプラネットに存在していたなんて……。


 勇者ユッキーは、かなりナルシスト気味の若者で自分の容姿に絶大な自信を持っていた。ほどよく大きな美しい目と整った輪郭……サラサラの銀髪ヘアの自分の容姿は、いろんな女を落としまくりハーレムを構築していたからだ。


 その辺のアイドルなんか目じゃないイケメンのオレを、こんなに絶望の淵に陥らせるとは……この人が神に近しい存在と謳われる古代龍なのか? 身のこなしまでパーフェクトにカッコいいイケメンに精神面で敗北しつつ、ユッキーは魔王城の応接室のソファーに座らされた。


 ちょこんとソファに座るユッキーを冷めた目で見るもう1人のイケメンが、ため息をつきながら魔王様に今後の方針を問う。


「はぁ……なんていうか……いかにもアイドル目指してますっていう感じの、それでいて女好きそうな……軽そうな男だよね……この勇者。しかも、見た目だけじゃなく実際にいろんな女に手を出しまくって遊び呆けていたらしいじゃないか……こんな男にグランディア姫は夢中なのか……情けない、どうするんだい? 君、一応お父様だろう? 悪いけど、この件はボクは協力してあげられないよ」


 なんだか、無茶苦茶な言われようだな……そんなに見た目はチャラくないぞ、女好きだけど……。


 気がつくと、オレのすぐそばにはキツネ顔のイケメン……この男もイケメンだな……世の中には、こんなにイケメンがいたっていうのか……オレは井の中の蛙だ。よく見ると、応接室にはお父様と呼ばれたイケメンとキツネ顔のイケメンのポスターがたくさん貼ってある。


『魔族系王子様』というユニット名らしい。

 ドームツアーライブ記念ポスターと書いてあり、かなりこの世界では売れているユニットのようだ。そういえば、旅先でもこのユニットのポスターやらCDやらを見かけたことがあるような気がする。

 人間側にも熱狂的な信者が多数いるようで、信者達が魔族と仲良くするように運動を起こしていたが……そういう理由だったのか。


 まさか、魔族の頂点っぽい魔王様と参謀っぽい男がアイドルとは……しかもトップアイドルだったのか? でも、どんなに人気イケメンユニットでも、現役状態の2人組で片方が子持ちというのは珍しい気がする……1度活動を停止しているとかなら分かるけど……それに信者は彼の事を独身だと語っていたような……。


「あの、一応お父様ってどういう意味なんでしょうか? もしかして養子か何かなんですか?」

「ああ、グランディア姫は私の姉が産んだ子でね、正確には姪っ子なんだ。けれど姉が亡くなってしまい私が育てている」


 オレの素朴な疑問に優しい笑顔で爽やかに答えるイケメン魔王様……すざまじいイケメンオーラだ。そして、ふと思いついたように真剣な表情に変化して、じっとこちらをみつめた。


「一応、私と君は魔王と勇者という立場だが、今回はそれが問題ではない。君はグランディアと婚約しておきながら、先にたくさんの女性とハーレムを作って遊んでいたそうだね。その辺はどう考えているのかな? 返答によっては、法的な手段に出なくてはいけない」

 なんていうか、意地悪な質問だ。もしかして、からかってる? んっ法的ってなに?


「えっ法的な手段⁈ アースプラネットは、一夫多妻制じゃなかったのか? なんだか話が違うんですけど……オレ何人でもお嫁さんをもらっていいって言われたから、たくさんの女性と結婚したわけで……」


「そうか、君は異世界からやってきたからこの世界の常識を知らなかったのか。アースプラネットは、一夫多妻だが結婚に順位があってね、正妻と側室には法的に見て差があるのだよ。そして一番最初にプロポーズした相手が正妻だ……君が一番最初にプロポーズした相手は、誰かな?」


 するとタイミングよくキツネ顔のイケメンが、ホームビデオの動画を無言で流し始めた。グランディア姫と交際していた頃の映像か? 場所は姫の地球での住居のテラス……当時18歳のオレが映っている……16歳のグランディア姫も一緒だ。


【映像】

「オレは月も星も大好きだが、一番好きなのはグランディア……君だ! 愛している! オレと結婚してほしい! 君が異世界アースプラネットに行っても関係ない……必ず異世界に君を迎えに行って君を妻にする! それまで待っていてくれ!」

「イクト、嬉しい……私ずっと待ってる。イクトがお嫁さんにしてくれるその日まで……」



 ヤバイよ……2年前、異世界に引っ越すグランディアにプロポーズした時の映像じゃん? このキツネ顔……協力できないとかいいながらこんなもの用意してたのか……。


 どうする? オレは伝説の勇者だ。それを理由に何か策を考えれば、突破口が見つかるはずだ……。

 オレはこの苦境を乗り越える策を考え始めた。そして、この異世界に伝わるハーレム伝説を思い出した。


「その若者は黒き衣を身に纏っていた。銀色の髪は誰よりも美しく、遥か異世界より召喚されし希望の光。各国の娘達が勇者の妻となった。やがて伝説のハーレムと呼ばれ、勇者は世界を平和に導く……」


「その預言は⁈」


「異世界アースプラネットに伝わる、伝説のハーレム……ボクは世界平和のための伝説のハーレムを作るために、勇者として異世界転生したと考えています。ボクは世界平和のためのハーレムを自分の使命だと考えて、日々精進して参りました。そしてグランディア姫を正妻として迎えることにより、人間界と魔族は1つになり真の世界平和が訪れると信じています‼ お父さん! 娘さんをボクにください‼」


 オレはお父様こと魔王様に土下座しつつも、内心は……『勝った……これで法的に訴えられることはなくなるだろう……』などと考えていた。


 ハーレムを嫌がる、グランディア姫の気持ちなど考えずに。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ