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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第一部 異世界は人気スマホRPG編
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第5話 助っ人は金髪美人エルフ剣士

 

 道中いろいろあって、オレの冒険者用スマホが壊れてしまった。正確にはオレの仲間が破壊したのだが……。体力回復のために立ち寄ったベースキャンプを出てしばらく経つ……そろそろ体力的にもきつそうだし、なおかつスマホも壊れているし、いい加減街につきたいものだ。


 スマホRPG『蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-』の勇者になってしまったオレ。俗に言う、異世界転移とか異世界転生とか言う現象らしいが、トラックにぶつかって転生したわけでもなければ何かの理由で天に召された描写もないので、現在の地球でのオレの肉体がどんな感じになっているのかは謎である。


 願わくば、無事に地球へと帰りたいものだ。そのためには、魔王だかなんだかのラスボスを倒していわゆるゲームクリアをしなければならないらしいが。


 このRPGはレベルアップやステータス管理はすべてスマホに依存しているので、スマホが使えないのは冒険続行不可能を示すようなものだった。


「……安心してください。もうすぐアースプラネット西地区最大の都市ネオタチカワシティに到着します。そこのスマホ屋で修理してもらいましょう」


 スマホを破壊した張本人の白魔法使いマリアが、何事もなかったように語り始めた。


 マリアは黒髪ロングヘアの清楚な美人で、絵に描いたようなヒロインタイプの白魔法使いだが、ともに行動をし始めて1週間……打ち解けてきたというのを通り越して、だんだん本当の性格が判明してきている気がする。


 運良く、魔物よけの天使像が設置されている大型公園の敷地に辿り着いたから良かったものの、冒険が続けられなくなったらどうするつもりだったんだろう?


 もしかしたら、オレが警戒しなくてはいけないのは、この危険な仲間なんじゃ……。



 * * *



 大型自然公園の入場料を冒険者用プリペイドカードで支払い、大型都市ネオタチカワシティに向けて歩き始めるものの不安が頭で一杯だ。

 この異世界は地球と通貨も共通の円を採用しており、地球と違うところといえば、現金払いはほとんどなくスマホやプリペイドカードでの支払いがメインというところだ。


 マリア曰く、特に冒険者は金銭管理をスマホやプリペイドカードで行う場合が多く、現金は少額しか持ち歩かないのが安全策だと言う。

 まるで、海外旅行をしているようなノリである。


 地球でも現金を使わない支払い方法はいくつかあるが、ここまでスムーズに完全管理されてはいないので、もしかしたらこの異世界は現代の地球よりも技術が少し進んでいるのかもしれない。 


 冒険者達は、モンスターを討伐すると討伐数に応じた収入を得られるので、戦ってさえいればなんとか食べてはいけるだろう。だが、スマホの修理代を払えるほどの収入はまだ稼いでいない。


「……修理代……いくらするんだろ……?」


 この世界の物価はまだよく分からないが、雑魚モンスターを倒した収入しかないオレ達にとって、スマホの修理代は結構な高額なんじゃ……。


「大丈夫ですよ。冒険者保険で3回までは無料で修理が可能です」


 のんびり語るスマホ破壊の張本人マリア。即座に返事をしたところを見ると、実は確信犯的にスマホを破壊したのか?

 保険がつくからといっても、制限回数があるのに清楚で可愛らしい見かけによらず、大胆な性格だ。


 だが、マリアのひと言で安心したのかアイラとミーコに笑顔が戻った。


「わーい! ネオタチカワだぁ! 美味しいものいっぱい食べようねー!」

「にゃーん! 都会でたくさん遊ぶにゃーん」


 アイラとメイドのミーコが、こうえんないをパタパタと駆け出し楽しそうにはしゃぎだした。おそらく2人は観光気分だ。

 と、言ってもバトルの要となっているのは格闘家のアイラだし、ミーコの補助呪文に助けられているので、この2人のことをいろいろ言えないのだが……。


 ところで、話題のネオタチカワシティ……タチカワという単語にものすごく聞き覚えがあるのだが、どこだっけ……?


 驚いたことに、この時のオレは異世界に飛ばされた影響なのか、記憶の喪失が激しく現実世界の東京に立川(たちかわ)という街が存在し、なおかつ、自分自身が住んでいた街であることをすっかり忘れてしまっていたのである。


「ネオタチカワシティ……ここを越えると23区との距離が近づくせいで、モンスターのレベルが格段に上がります。今までのような、気楽な冒険は続けられません」

 みんなハッとした表情になり足を止めた。 マリアの奴……なんかみんなをおどかして楽しんでないか?


「23区……魔王の拠点冥界へのワープゾーンがある土地ですにゃん! 物価もモンスターのレベルも桁違いですにゃん!」

 ミーコの情報が本当なら、モンスターのレベルと物価の高さが比例しているのか……。先が思いやられるな。


「マリアおねーちゃんそんなこと言って……アイラ騙されないよ! 昔、マリアおねーちゃんとネオシンジュクに遊びに行ったもん! 大丈夫だよ」


 大丈夫なのか……? その割に、みんなの表情が暗く見えた。



 * * *



 やがて大型公園を抜け、天使像の保護のない通常フィールドに踏み込んだ。目の前には、ネオタチカワシティの入り口が見える。良かったもうすぐスマホ修理だ! これで冒険が続けられる……というところで謎のほこらが出現した。強制イベントなのか?


 オレ達はほこらに行く気もないのに足が止まらなくなり、不思議なチカラに呼ばれるかのように、ほこらの奥へと足を踏み入れた。


「えっ何? どうしよう?」

「こんなトラップがあるなんて!」


 さすがにみんな混乱している。やがて、勝手に動いていたみんなの足がようやく止まり、ほこらの奥地についたのだが……。


 ほこらの中は薄暗くジメジメとしていて、古代文明風の彫像が不気味に火を灯し、まだ冒険初心者のオレにも分かるくらい非常に危険なオーラが漂っている。さらに、暗闇の中から、何かのドス黒いオーラが見えた。


「ごごごごごご……誰だ……我を目覚めさせるのは?」


 ……モンスターだ。

 今までの雑魚とは桁違いの超巨大モンスターだ……スマホが壊れていてまともな戦闘もできないのになんてことだ。

 超巨大モンスターはツノを生やし、三つ目の魔人のような容姿でどう見てもボスの風格を漂わせていた。

 とてもじゃないが、レベル5前後のオレ達が敵う相手には見えない。


 ここまでか……殺される……!


 そう思った時に、人の影が現れた。

 金髪をハーフアップにした、露出度の高い美女だ。

 胸元には羽根飾りのついた光る天然石のペンダントを身につけ、片手には剣を持っている。ショートパンツからスラリとした美脚が覗き、ショートブーツがよく似合う。


 よく見ると、耳が長く尖っている。エルフなのだろうか? 意外なことに、エルフはこのボスタイプのモンスターと知り合いなのか、楽しそうに話し始めた。どうやら職業は剣士のようだ。


「ああ、こいつらアタシの知り合いでさ、待ち合わせ中に迷っちゃって。あんたに危害加えないから眠っていていいよ」

 ボスモンスターを『あんた』呼ばわりする、謎のエルフ美女。一体何者?


「……そうなのか、では休むとしよう……ごごごごご……」


 オレ達はエルフ美女に連れられて、無事にほこらを出た。



 * * *



「あのっありがとうございます! 助けていただいて!」


 オレは恐怖で女アレルギーであることすら忘れ、エルフ美女にお礼を言った。


 エルフ美女は大型公園を管理するボランティアでこの辺りの見廻りをしていたらしく、あのほこらのモンスターとも顔見知りだそうだ。


 そしてあのほこらのモンスターは大人しい性格だが、ラスボス一族の末裔でよくレベルアップ目当ての冒険者達に狙われるため、エルフ族と大型公園の運営者が保護しているんだとか……。


 俺たちが自動的にあのラスボスの元に辿り着いてしまったのは、勇者タイプの冒険者をあのラスボスが引き寄せる魔力を持っているからなんだそうだ。


「んーいいよいいよ、知り合いっていうのは本当のことだし! なっマリア!」


 そう呼びかけられたマリアの表情は硬直し、エルフ美女も意味深な表情を浮かべた。この2人の関係は一体どんなものなのだろうか?



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