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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第二部 前世の記憶編
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第二部 第4話 増えるハーレム要員


 このお話は、オレの前世女好き勇者結崎イクトこと、ユッキーの伝説のハーレム冒険ストーリーである。



 * * *



 シスターマリアを仲間に加えたオレは、野を越え山を越えて順調に旅を続けていた。


「私……本当は外の世界へ憧れの気持ちがあったの……修道女としては、それじゃダメなのに……」

「きっと、神様がマリアの心の奥にある願いを見抜いてオレたちを出会わせてくれたんだ。外の世界も悪いものばかりじゃないさ。ほら、街が見えてきた。ここの街の先にはもっと大きな都市があるらしい……マリアはこの先の都市を訪問した経験は?」

「……幼い頃……母に連れられて……ほら、私って貴族の血を引いているものの……メイドとの間に出来た子だから……相続問題に巻き込まれないように修道院に入れられたの。だから、あの向こうの都市には大人になってからは行ったことはないわ」


 生涯を神に捧げ、純潔を守り通して死ぬ予定だった清らかなマリア。美しいマリアが世間に知られることなく、歳を重ねて生涯を終える予定だった僻地の修道院は、どうやら、貴族の隠し子や何かの事情で育てられなくなった有力者の子供達をひっそりと育てるための重要な施設だったらしい。


 例に漏れずマリアもそんな人には言えない事情を持つ権力者の間に産まれた娘だった。


「でも、今の君は自由だよ……なんせ伝説の勇者の仲間……いや、妻なんだから」

「そうね……ふふっ私の回復魔法が役に立つなら嬉しいんだけど」


 おそらく、本来はマリアを連れ出すことなんて不可能だったのだろう。だが、オレには異世界より現れし偉ばれし勇者という肩書きがある。神父様に話を通してもらい、マリアの実の親である貴族の許可を得て彼女と甘いふたりきりの旅の許可を得た。

 さすが、勇者という肩書きはこのような世界ではチカラが強い。


 マリアに一目惚れしていたこともあり、この出会いは生まれる前から定められていた運命のように感じていた。


 訪れた街で一番大きな宿泊施設へ……。まだ冒険者としてのレベルがまだまだのオレには、ちょっと贅沢な選択肢だ。

 けれど、今夜は見栄を張ってでも良い宿に泊まりたかった。だって、マリアと過ごす初めての夜になるのだから……。


 受付で鍵を受け取り、大きな荷物を部屋の中へ……まだ午後14時過ぎだ。


「よし、まずは買い出しだな! マリアは今日からは修道女ではなく白魔法使いとして生きるんだから、そのシスター装備に代わるものを揃えないと……」

「白魔法使い……それが私の新しい職業名なんですね……!」

「ああ、レベルを上げて職業ランクをアップすれば上級職の賢者だって夢じゃない……さっ武器防具屋へ行こう」


 カントリー調の建物が印象的な武器防具屋には、中流冒険者向けの剣や鎧が所狭しと飾られている。この辺りのモンスターレベルに合わせた品揃えといった感じだろう。

 店員さんがオレたちに気づいて早速接客モードに……。


「いらっしゃい! おや、シスターさんとは珍しい……聖職者用の装備を探しているのかな?」

「ああ、彼女は呪文の腕を活かして白魔法使いに転職することになったんだ。修道院にはそのための勉強と、花嫁修行でお世話になっていたんだ」

 オレがマリアの経歴を分かりやすく説明する……結果としてすべて本当の事だし彼女のプロフィールはこれでいいだろう。


「ほう! 白魔法使いか……じゃあこの杖がいいか……いや、ふたり旅なら多少攻撃力のあるこっちかな? ローブは、どんなのが好みなんだい? 修道院にいたんじゃあまり派手な服装は着慣れていないだろう?」

「ええ……流行はよく分からないので……街に馴染むような……冒険者用のローブを……」


 シスター服はシンプルながらもこの辺じゃ見かけないとかで目立つと判断したのか、店員さんオススメの流行のワンピースとローブのセットを勧めてもらう。早速現金で装備一式を購入して、試着室で着替えるマリア……。


「あの……この服……ちょっと胸が、強調されて……」

「? 恥ずかしがらないで、出てきてごらん……」

 シャッと試着室のカーテンが開く……目の前には、かなり豊満なバストが強調されたナイスバディのマリアの姿……これは、想定外の嬉しさだ。


「ほうっ! こんなスタイルの良いお嬢さんは珍しい……いやあ、お客さん……新婚なんだっけ……きれいな奥さんを守ってあげるんだよ!」

「ははは……」

 嬉しいやら恥ずかしいやら……店を移動して他にも保存食や冒険者向けの日用品などをひと通り購入。買い物を終了し、レストランへ……。


 宿の1階部分は、洒落た洋食料理店。異世界の料理店とはどんな食材を使っているのだろうかと不安に思った時期もあったが、ほぼ地球と似た食材のものばかりで今は安心している。

 もっとも、せっかく異世界に来たのだから、ちょっぴり変わった食材のものを食べてもいいのだろうけれど……。

 窓際の席をキープして、夕焼けに照らされたマリアの美しい表情をちらりと見ながら、メニュー表をチェック。


「まあ! 魚のムニエルに赤ワイン……ローストチキンにケーキまで……まるで毎日がクリスマスパーティーみたいだわ」

「ははっ今日はオレたちの祝いの日だから、パーティーみたいなもんさ」


 楽しい買い物、美味しい食事、ひと通り終えて風呂で身を清める。


「私……一生、修道院で過ごして終えるものだと思っていた。決して外の世界へは出られない……そんな風に考えていたの。あなたは、私にとって本物の勇者様です。私、神様ではなく貴方に全てを捧げます……」

「マリア……オレも君に全てを捧げるよ。口付けていいかい?」

 触れるだけの優しいキスを何度も繰り返していく。


 マリアは初夜の晩、ハネムーンも兼ねて泊まった宿屋のベッドの上で、清らかな身体を心をすべてオレに捧げてくれた。


 拠点を次々と移す旅は、長い新婚旅行のようで様々な街の景色は、閉鎖的な環境で育ったマリアの心を明るいものへと変えていく。


 世間知らずのシスターが外の世界を知ったら変わってしまうと危惧する聖職者もいたそうだが、決して彼女の優しい根本的な性格は揺らがないものだった。変わった点といえば笑顔が以前よりずっと増えたことだろうか。つまり、純潔を失っても、なおマリアは純粋な心を失わなかった。


 シスターマリアはこれまで修道院で質素な食事と質素な生活をしていたため、外の世界の美味しいご馳走やキレイな宝石などに驚いた様子を見せていた。


 ローストビーフや特上寿司、マスクメロンや高級ブランドアイスクリームなど……でも、マリアはオレが作る『勇者イクト特製鶏の唐揚げ』が世界で1番美味しい……と。

 ある日、外食代節約と久しぶりに料理をしたくなって、オレは市場で調達した鶏をいわゆる唐揚げにしてマリアに振る舞ったのだ。高級料理店よりも、オレの手作りの料理の方が好きだなんてセリフが聞けるとは思わなくて……あの時の笑顔をずっと覚えている。


「こんな美味しいご馳走を食べれるなんて……神とイクトさんに感謝しなくてはいけないわね。ありがとう! 私を外に連れ出してくれて」

 宿屋の窓辺から射し込む太陽の光を浴びて、ニッコリと微笑むマリア。


 まさか、そんなことで感謝されるとは思わなかった。

 オレは伝説の勇者だけど、女好きで特別善人という訳ではない……悪人ではないが。旅の回復呪文役と目の保養……そしてさびしさをぶつけるような愛し方でマリアと旅をしていたので、ことあるごとにオレに感謝の意を込めて礼を言うマリアに次第に罪悪感が湧くようなったのだ。


 節約して作った金銭でシンプルな誓いの指輪と、少し高級な髪飾りを購入しプレゼント。

「この髪飾りはたとえ死んで生まれ変わっても、ずっと自分の手元に残る魔法がかけられているそうだ。パートナーになった記念にあげるね」


 そう告げて、オレが手渡した髪飾り……マリアは本当に『死ぬまで』この髪飾りを身につけていた。



 * * *



 ある日、オレたちは人間と対立中のエルフの城を訪れた。国王陛下から、エルフとの仲裁役になるよう依頼を受けたからだ。人間たちが、森の木々を必要以上にたくさん切り倒して森を縮小させてしまったため、エルフが人間に対して怒ったからだった。


 エルフの女王に、木々をもうこれ以上切らないから許してほしい、との国王陛下からの文書を渡す。だが、エルフの女王はオレたち人間のことが信用できないと言って、オレたちをエルフ城から追い返した。


 エルフ城から追い返されたオレたち……帰り道で、ある金髪の美しいエルフの娘が悪い人間たちに追いかけられているところに遭遇する。


「誰か助けて!」

 かわいそうに、エルフの娘は怯えている。

「その手を放せ! さもなくば伝説の勇者ユッキーが、お前たちを勇者の名にかけて成敗するぞ!」

「覚えてろよ!」と悪党特有の捨ぜりふを残して、悪い人間たちは去って行った。

 エルフの娘はケガをしていたが、シスターマリアが回復呪文で手当てした。

「ありがとうございます! 私の名はアズサ……エルフ女王の娘です! お礼に、私にできることならなんでもいたしましょう!」

 そんなわけで、エルフ女王の娘アズサに仲介してもらい、エルフと人間の対立は一時休戦となった。アズサのおかげで、オレたちは国王陛下の依頼をこなすことができた。


 そして、エルフの娘アズサと親しくしているうちに、オレはアズサに恋心を抱くようになっていた。でもオレにはすでに誓いを交わしたシスターマリアが……。だが、オレはエルフの里で信じられない情報を知る……異世界アースプラネットは『一夫多妻制』で伝説の勇者ともなれば、たくさんの花嫁を娶っていいのだという。


 この世界は一夫多妻制。

 純粋なマリアを傷つけることなく、新たに妻を迎えることができる……。

 もうオレに迷いはなかった……美しく純粋な金髪美人エルフアズサ……君はオレが落とす!


 そうと決まれば攻略開始だ!

 オレはしばらくエルフの里に滞在し、ナチュラルにアズサと接触を図ることにした。森を回復させるボランティアに毎日参加し、清い心をアピール! 森にあるキレイな花を、アズサにプレゼントする。好感度が上がったところで、本格的にアタックを始めた。


「どうして、毎日ボランティアに参加してくれるの?」

「オレなんかが伝説の勇者だということに、自分でも自信が持てなくてね。いつもオレたちを守ってくれる森の精霊に、感謝の気持ちを表しているんだ。それに……ボクは花も蝶も森の動物たちも愛しているからね……けど、1番愛しているのはエルフの姫アズサ……君だ! アズサ愛している! ボクの冒険の旅についてきてほしい! 旅の仲間としてでなく、人生の伴侶として!」


「……まぁ」

 アズサは照れながらも、オレたちの冒険についてきてくれることになった。エルフ女王とコネもでき、オレの人生は順風満帆だ。

「ありがとう勇者ユッキー……私、本当はすごくおてんばで外の世界にずっと出てみたかったの。大好き! ずっとずっと、一緒に冒険しようね」

「伴侶になったアズサにはオレの本名教えてあげるね! 結崎イクトっていうんだ」

「イクト……私達、何があってもずっと一緒だよ! 生まれ変わってもずっと一緒に冒険しようね、愛してる!」


 こうしてオレは、2人目のパートナーエルフのアズサをゲットしたのだった。

 だが、オレのハーレムはまだまだ始まったばかりだ!



 * * *



 まだ続くのかよ……前世のオレのハーレムストーリー……恋人いない歴イコール年齢のオレにとって、前世のオレのサクセスストーリーはものすごく気分の悪いものだった。


 ただ登場する女性陣は、オレの仲間達に顔は似ているものの、性格があまりにもおしとやかでまるで別人のようだ。

 なんだかんだ言って、マリア達はオレの将来の妻になる予定なので、嫉妬で思わず前世のオレをぶん殴りそうになりながらも、今後巡り来るハーレム展開に女の情念が激しくなる予感がしてならない。


 もし、これがオレ達の前世だとしたら、これから清楚で美しいマリア達の身に、何か人格が変わるような出来事が起こるというのか⁈



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